おめぇ握り寿司が食いてえ

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「吉田と川越」 26OS

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一方、その頃-------

 

"ザシュッ!"

 

「-------も、モル☆♘⌛☢ワヌ...」

 

"バタッ!

 

「う~ん? 何だ~?

 

  こいつが、

 

  "神々を超えた存在"

 

  とやらなのか...」

 

吉田たちがいる

 

Midlertidig hvileと同じ空間内。

 

「------アグメノン様っ!」

 

"バサッ バササッ!

 

「リュコスか・・・・」

 

"シュッ シュッ"

 

「・・・・」

 

アグメノンは、目の前に倒れている奇妙な姿をした

 

見た事もない、獣の様な動物を貫いた

 

自分の手を拭きながら、

 

Midlertidig hvileの空間内を

 

赤い翼をはばたかせながら

 

自分の元へと向かってくる、別の

 

"悪魔"に目を向ける...

 

「------キキッ....そいつは...?」

 

"バサッ バササッ"

 

アグメノンの側まで寄ってきたリュコスが、

 

空中で翼をはためかせながら、

 

足元に横たわっている

 

奇怪な形をした生物を見下ろす

 

「そいつは....もしかして、

 

  "神々を超えた存在"ってヤツじゃ...」

 

「-------さあな。」

 

"ズシュッ ズシュッ"

 

「・・・・!」

 

「まだ、息の根が止まっておらん様だな」

 

「-------モ、モル▶◀▲◇△・・・!」

 

「-----何だ、ずい分しつこい奴だな...っ!」

 

"ズンッ! ズンッ!"

 

「・・・・◎●☒...」

 

"ピク...ピク...."

 

「汚らわしい奴だ」

 

"スッ"

 

足元に倒れている、"存在"が

 

まだ息がある事を確認したのか、

 

その存在が完全に動きを止めるまで、

 

アグメノンは鋭く尖った自分の爪を突き続ける

 

「・・・・」

 

「ア、アグメノン様・・・?」

 

「--------....」

 

地面に倒れている"存在"に対して

 

激しく爪を突き立てていたかと思うと、

 

アグメノンは、無意味に周りの天井や

 

壁を見渡し始める...

 

「ここは------」

 

「ア、アグメノン様?」

 

「------どこなんだ?」

 

「・・・・・」

 

"ガンッ!"

 

「な、何を------」

 

「ん~....どうやら、

 

 コイツを蹴飛ばしたところで

 

  特に何かある訳でも無いな」

 

"ゴンッ! ゴンッ!"

 

「・・・・!」

 

何も考えていないのか、

 

地面に倒れて動かなくなった"存在"を

 

無表情で蹴りつけているアグメノンを見て、

 

リュコスの赤い顔が、色を失う

 

「-------------....」

 

"ピタッ"

 

「アグメノン様------?」

 

突然、動かなくなった存在に蹴りを入れ続けていた

 

アグメノンの動きがピタリと止まる

 

「・・・やっぱもう一回蹴っておいた方がいいか」

 

「ッ------!」

 

"ゴンッ! ゴンッ!"

 

アグメノンは特に何も考えず

 

再び目の前に転がった"存在"に目を向けると

 

何度も、何度も繰り返し蹴りを放つ

 

「--------、」

 

"ゴンッ! ゴンッ!"

 

「・・・・!」

 

「何だ~ 何か、気に食わんな~」

 

"ゴンッ! ゴンッ!"

 

「・・・・」

 

"ゴンッ! ゴンッ!"

 

"ガッ! ガガッ!"

 

音の無い、Midlertidig hvileの空間に

 

アグメノンの激しい蹴りの音だけが響く....

 

「-----それっ それっ!」

「吉田と川越」 25OS

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「お、おい------!」

 

"カチャッ"

 

"ガササッ"

 

涼しい表情で自分の新型パソコンや

 

荷物をまとめている吉田、そして川越に

 

佐々木が慌てた様な口調で話し掛ける

 

「お、お前ら-------

 

 ・・・あんな簡単に、

 

   アイツの言葉を信じていいのかっ!?」

 

「------何がだ?」

 

"ガチャッ"

 

川越が紫電-§のパソコンのアダプタを外しながら

 

佐々木に目を向ける

 

「い、いや、お前らは知らんかも知れんが

 

   アグメノン-----....」

 

「ああ、さっきヘルムートが言ってた

 

 "悪魔"の事か?」

 

"カパッ"

 

吉田が、AISUS-zk9の内部の

 

マザーボードを拭きながら佐々木を見る

 

「お前ら、"アグメノン"と言えば、

 

   地獄の大軍団長ドレンの眷属、

 

   俺たち下級の悪魔を全て支配する

 

  闇の悪魔だぞ------?」

 

「-------それがどうした」

 

佐々木の言葉に、川越はクールな微笑を浮かべる

 

「お、お前らは分からんのだ・・・

 

   アグメノンがどれ程、

 

   残忍で凶悪な悪魔なのか...」

 

"キュッ"

 

佐々木の言葉に興味が無いのか、吉田は

 

自分のパソコン用の眼鏡を布で拭く。

 

「お前らは、やつがただの悪魔だと

 

 慢(あなど)っている様だが....」

 

「-----そうじゃないのか?」

 

「いや・・・奴、アグメノンは

 

   そこらにいる、"神々を超えた存在"より、

 

   下手をしたら...」

 

"ガタッ ガタタッ"

 

「(-------....)」

 

気のせいかも知れないが、佐々木の体が

 

若干震えたのを見て、吉田は視線を床に向ける

 

「お、お前は、本当の、"悪魔"の

 

 残忍さを知らんのだ------!」

 

"ガタッ ガタタッ

 

「-------お前は、一体なんで

 

 ここに来たんだ-----?」

 

「・・・・」

 

何故か怯えた様子を浮かべている佐々木を見て、

 

川越が突然紫電-§を抱えながら

 

佐々木の元へと近付いて行く....

 

「な、何でって....」

 

"カチャ"

 

川越は、紫電-§のカバーを開け

 

開いたデスクトップ画面に目を向ける...

 

「理由の違いはあっても俺たち人間、

 

   そして佐々木、お前ら悪魔は

 

   この仮想空間、V-MONETを支配する

 

 マルサールを倒すために

 

   立ち上がったんだろう....?」

 

"カタタタタタタタ...

 

川越が優しく、奏でるようにキーボードを弾くと、

 

その音が空間内にこだまする------

 

「べ、別に、俺は、そう言うワケじゃ....」

 

「・・・・」

 

"カタ...

 

佐々木の言葉に、川越のキーボードを叩いていた

 

指が止まる------...

 

「ただ-------、」

 

「"ただ"?」

 

"カタッ..

 

キーボードに這わせていた、川越の手が

 

"H"の文字の所で止まる

 

「地上にいても、どの道俺みてえな

 

   下っ端の悪魔には居場所がねえ------」

 

「・・・・」

 

"カタッ"

 

"O"

 

今度は、キーボードの"O"の所で

 

川越の手が止まる....

 

「だが、この"V-MONET空間"内に来れば

 

   俺みてえな下級の悪魔でも、

 

  "神化"できる------

 

  そんな話を聞いたんだ・・・・」

 

"カタッ...."

 

"P"

 

「------だとしたら、このまま地上にいて

 

   マルサールの餌食(えじき)になるより、

 

   この、V-MONET内に来て

 

   俺は、次の存在、"神々を超えた存在"

 

   になりてえ--------

 

   そう思ったんだ・・・」

 

「・・・・」

 

"E"

 

「なるほどな--------、」

 

"スッ"

 

「・・・・?」

 

何かを感じ取ったのか、川越は

 

自分の新型パソコンのデスクトップ画面を

 

佐々木に見える様に、向きを変える------

 

「-------? 何だ、ソイツは....?」

 

「・・・・・」

 

"スッ

 

「ッ-------、」

 

川越は、無言で、自分がパソコン内に描いた文字の

 

頭文字を指さし、それを佐々木に示す...

 

「これは...

 

 "H"..."O"..."P","E"....

 

  "ホープ"か?」

 

「そうだ--------!」

 

"HOPE"

 

「・・・・!」

 

佐々木が、川越の新型パソコンの

 

デスクトップ画面内を見ると

 

そこに、大きな英語の文字で

 

"HOPE"

 

と表示されている------

 

「お前が悪魔を恐れていようが、

 

   この先に進む事に躊躇していようが

 

  そんな事は関係ない--------っ」

 

「川越・・・・」

 

川越は、まるで家電量販店で、

 

新型パソコンの営業販売をするセールスマンの様に、

 

自分の紫電-§を抱えながら、

 

そのデスクトップ画面に表示された

 

"HOPE"の文字を佐々木に見える様に掲げ、

 

佐々木の元へと歩み寄る....

 

「"HOPE".....

 

  "希望"と言う意味だが...」

 

「希望・・・」

 

「-------フッ、」

 

川越が、何かを諭すように佐々木に話しかけるのを見て

 

吉田は、自分の鼻の下に人差し指をあて

 

川越を見る-------

 

「この先に、どんな悪魔や神、

 

   そして神々を超えた存在がいようと、

 

   俺たちは、

 

  "HOPE"

 

   この言葉を忘れちゃいけない・・・・」

 

「"HOPE"・・・・・」

 

「--------、」

 

"パタ"

 

「お、おい」

 

"タッ タッ タッ タッ......

 

「か、川越!」

 

「-------行くぞ? 先に進むんだろ?」

 

「--------ッ!」

 

"タタッ タタタッ! タタタタタッ...

 

「(・・・・・)」

 

まるでパソコンの販売成績を増やした

 

店員の様に、川越が先へ進むのを見て、

 

佐々木はその後を弾んだ足取りで

 

追いかけて行く....

 

「・・・・」

 

「・・・・」

 

「・・・・」

 

「・・・・」

 

"タッ タッ タッ タッ.....!

「吉田と川越」 24OS

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「だったら、どうすればいいんだ------?」

 

「・・・・・」

 

"ゴポッ ゴポポッ....

 

吉田の言葉に、ヘルムートは何も答えず、

 

何かの液体で煮立っている

 

壺の中を無言で見ている...

 

「この先の空間に進むのに

 

  越数学や、神々超えた存在を

 

  相手にする事が必要なら、

 

  それを倒せばいいだけだろう------?」

 

「-------ヒェッ ヒェッ!」

 

「何故、笑う------?」

 

「果たして、今のお前さんたちに

 

  それができるかどうか-------...」

 

「-----試さなければ

 

 分からないんじゃないか?」

 

「・・・そうさね...」

 

"コトッ"

 

「・・・・?」

 

ヘルムートは、壺に回し入れていた棒を

 

自分の脇に置くと、部屋の隅に置かれている

 

机に向かい足を進める...

 

"ガタッ"

 

「おお、ちょうど、コイツ何かが

 

 いいんじゃないか」

 

「・・・何だ? それは?」

 

ヘルムートが机の脇に置かれていた

 

本棚から取り出した、何の言葉で書かれているか

 

分からない、分厚い本に川越が目を向ける

 

「お前らがこの空間の先に進むつもりなら、

 

  少し、腕試し-------...

 

  ちょうどいい、"悪魔"がこの

 

 "Midlertidig hvile"

 

 のネットワーク内ににいる-------、」

 

「そいつは、"神々を超えた存在"なのか?」

 

「------ヒェッ ヒェッ

 

  何、そう、気負う事は無い------、

 

  こいつは、ただの悪魔さ-------、」

 

「・・・・」

 

「ただし、こいつ、アグメノンは、

 

  地獄にいる悪魔軍団の中でも、

 

  第一階級の悪魔だがね....」

 

「アグメノン....!」

 

「おや、コイツを知ってるのかい...」

 

「ば、バカ・・・アグメノンって言ったら、

 

 俺たち下っ端の悪魔じゃ

 

 お目に掛かった事すらねえ、

 

  地獄の長、ドレンの眷属じゃねえか....」

 

「・・・・!」

 

「怖気づいたのかい・・・?」

 

部屋の中が沈黙に包まれたのを見て、

 

ヘルムートは邪悪な笑顔を浮かべながら

 

部屋の中にいる三人に笑いかける

 

「-------しょせん、悪魔だろ?」

 

「------川越...」

 

「お、おいっ」

 

「倒すつもりかね------?」

 

「-------神々を超えた存在を

 

 相手にしなけりゃならないんだ。

 

  今更、そんな悪魔一匹怖れて

 

 どうなる-----?」

 

"チャッ"

 

川越は、自分の新型パソコン紫電-§を構えながら

 

ヘルムートにセンシュアルな顔付きを見せる

 

「・・・そうかい...それだったら、

 

  こいつを渡しとくよ...」

 

"ビュンッ!"

 

「-----何だ? コイツは-----?」

 

"パシッ!"

 

「そいつは、このV-MONET内にいくつかある

 

  Lost and found(落とし物)の一つ、

 

 "エルベスの砂時計"さ....」

 

「砂時計....」

 

川越は、ヘルムートから投げつけられた

 

砂時計の形に似た、黒い、筒の様な

 

硬い金属で覆われた物質を見る

 

「そいつは、この、V-MONET内の

 

 空間に存在する神々や、悪魔の情報を

 

 収集するために役立つ物だ...」

 

「情報を収集・・・?

 

 一体、それが何の役に立つってんだ?」

 

「・・・・」

 

フードの隙間から見えるヘルムートの眼が

 

大きく見開く

 

「お前たちも分かっている通り、

 

  このV-MONETはマルサールが作り出した

 

  仮想構築空間だ....」

 

「・・・それが、どうしたんだ?」

 

当たり前の様に分かり切った事を話すヘルムートを

 

川越が馬鹿にする様な表情で見る

 

「この空間が、仮想構築空間...

 

  データで処理されている空間と言う事は、

 

  この、V-MONET内に入り込んでいる

 

  お前らも、当然ただの

 

 データの一つにしかすぎない訳だ...」

 

「・・・・」

 

ヘルムートに渡された

 

エルベスの砂時計に目をやりながら

 

川越はヘルムートの話に耳を傾ける....

 

「つまり、このV-MONET内にいる者は、

 

  大なり小なり、どんな者であれ

 

  その存在自体を

 

 データ化する事ができる・・・・」

 

「・・・なるほどな」

 

「?」

 

吉田が、一歩前に進み出る

 

「つまり、お前が今渡した、

 

  このエルベスの砂時計はこの空間内に入り込んだ

 

  神や悪魔のデータを

 

 記録している装置な訳だ...」

 

「------察しがいいな」

 

「・・・神や悪魔のデータ何て何に必要なんだ?」

 

「考えて見ろ-------、」

 

吉田は、悟す様な口調で佐々木に語り掛ける

 

「この空間内において、神や悪魔は

 

  邪聖神化と呼ばれる行為により

 

  "神々を超えた存在"として

 

  進化を遂げている....」

 

「-----だったら、

 

 やべえって事じゃねえのかよ?」

 

「・・・確かにそれはそうだ。だが、

 

  もし、仮にこの空間内に存在する

 

 神や悪魔の存在をデータ化し、それを

 

 処理する事ができればどうなるか...」

 

「"神化"できるって事か」

 

「その通りだ。」

 

吉田は、いち早くこの構図を理解した川越に

 

飄々(ひょうひょう)とした態度を見せる

 

「そして、この仮想空間における

 

  神や悪魔をデータ化する事ができれば、

 

  そのデータ処理化した様々な神や悪魔同士を

 

  "神化"させる事ができる-------」

 

「じゃ、じゃあ-----!」

 

"ズサッ"

 

佐々木が期待を持った目で吉田を見る

 

「その、黒い砂時計みたいなモンを使えば

 

  この俺にも、"神化"が

 

 できるって事か-------?」

 

「・・・・」

 

"バサッ バササッ!

 

佐々木の背中の羽が、大きな音を立て、

 

激しく揺れ動く-------、

「吉田と川越」 23OS

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「その、マ...、MAA-Й(マージュ)

 

 ってのは何なんだ?」

 

「・・・・・!」

 

"ガラッ"

 

ヘルムートは佐々木の言葉に

 

壺の中に回し入れていた棒を持つ手を止める

 

"ガランッ"

 

「いいさね・・・・ まず、お前らがいる

 

  このFO-2.net...そして

 

  このMidlertidig hvileの空間....」

 

「-----ああ、」

 

佐々木は先程までの事は忘れたのか、

 

ヘルムートの話に大きく関心を示す

 

「------これらの空間は確かに、

 

  マルサールが作り出した

 

 仮想構築空間内に存在する、

 

 V-MONETの空間の一つだ...」

 

"ボフッ!"

 

「・・・・っ?」

 

壺の中に入っていた液体が何か沸騰でもしたのか

 

派手な気泡を立て音を上げる

 

「だが、この今ワシらがいるこの空間、

 

  V-MONET内では、下層空間....

 

 いや、"下層"と言う言い方はおかしいが...」

 

「下の層って事なのか?」

 

「・・・とにかく、今、ワシらがいる

 

  このFO-2.net、Midlertidig hvileは、

 

  V-MONET内では....、

 

  そうだな...."第一空間"と呼ばれる様な、

 

  マルサールのいる空間

 

 MAA-Й(マージュ)とは

 

  かなり離れた場所になる...」

 

「MAA-Й(マージュ)....」

 

"ガッ"

 

「------ヒェッ ヒェッ....」

 

"ゴポッ ゴポポッ"

 

ヘルムートが、壺の中を棒でかき回すと、

 

壺の中から何か、奇妙な音が聞こえてくる...

 

「このワシらがいる、第一空間とマルサールがいる

 

  MAA-Йには、かなり違いがあり、

 

  ワシらの様な下層空間、

 

 VMES(ヴィメス)内にいる技術者じゃ、

 

 到底第三空間にたどり着く事はできん・・・」

 

「何でだよ」

 

「・・・・」

 

"ゴポポッ"

 

ヘルムートは、吉田が持っている

 

パソコンに目を向ける

 

「この、VMES空間で使われる技術は、所詮、

 

  外の世界、地上で使われていた

 

 技術の応用が殆どだ...」

 

"バシャッ バシャシャァァッ!"

 

「それと違い、上位互換であるこの上の階層、

 

  G/V空間では、

 

  マルサールの作り出した様々な技術....」

 

「越数学の事か....」

 

「そう、それに加え、先程お前らに話をした

 

  神や悪魔を越えた者------、

 

  "神々を超えた存在"、

 

  も当然の様にその空間内に

 

  犇(ひし)めき合っていると

 

  聞いている...」

 

「・・・・!」

 

「そんな場所に、果たしてお前らが

 

  進んで行ったところで

 

  マルサールを倒せる...

 

  いや、倒す前に、マルサールの存在を

 

  見つける前に、その神々や

 

  マルサールが施したプロテクトの前に

 

 やられちまうのが関の山だ....」

 

「・・・・」

 

「・・・・」

 

「・・・・」

 

"ゴポッ ゴポポッ...."

 

「それでもお前らは、この先へと

 

 進んで行くつもりなのかね------?」

 

「・・・・・」

「吉田と川越」 22OS

f:id:sevennovels:20220219223454j:plain「X-dogに、悪魔か-----」

 

「・・・・」

 

ヘルムートが自分の机の前で

 

何かを喋っているのに、

 

吉田、川越、佐々木の三人は

 

黙って耳を傾けている

 

「-------ヒェッ ヒェッ」

 

「・・・・?」

 

「何かおかしい事でもあるのか?」

 

「いや-------、」

 

「-------....」

 

川越が真剣な表情を見せた事に、

 

ヘルムートの顔も真顔になる

 

「ウィルの奴が、このMidlertidig hvile

 

 の暗証鍵を教えるくらいだから

 

  よっぽどだと思ったが....」

 

「・・・・」

 

「どうやら、お前ら三人には、

 

  ここにいるだけの"理由"が

 

  あるみたいだな------?」

 

「どう言う意味だ・・・・?」

 

「・・・・」

 

"コッ コッ コッ コッ...."

 

「悪魔、それに、越数学--------、」

 

「---------、」

 

ヘルムートが、部屋の中を歩き出したのを見て

 

吉田は、ヘルムート越しに

 

部屋の中に視線を向ける....

 

「今までここに来た連中とお前らはどうやら、

 

  "違い"があるみたいだ-------、」

 

「------"違い"?」

 

無意味に部屋の中を歩き回るヘルムートに、

 

部屋の中にいる三人の顔が強張(こわば)る

 

「お前らはこれから

 

  どうするつもりだ------?」

 

「・・・・」

 

「ただ闇雲に、このV-MONET内を宛ても無く

 

  マルサールの存在を

 

 追って行くつもりなのか・・・?」

 

「そうするしか無いなら、そうするだけだ」

 

「-------ヒェッ ヒェッ」

 

「笑うのか」

 

「--------いや、」

 

笑い顔を見せているヘルムートを見て

 

川越が表情を硬くする

 

「確かに、その考えは結構だが....

 

 だが、ただ宛ても無くこのV-MONET内を

 

 リンクして行くだけじゃ、

 

  到底マルサールの居場所、

 

 MAA-Й(マージュ)には

 

  辿り着けんぞ・・・?」

 

「MAA-Й(マージュ)・・・」

 

「何だ? ソイツは?」

 

「お前さん、MAA-Й(マージュ)も

 

  知らんのか?」

 

「・・・・」

 

佐々木は暗鬱な表情で、自分の足に着けられている

 

スパイリーの足飾りに目を向ける...

 

「それで、このV-MONET内の空間を

 

 先へと進んで行くつもりとは...」

 

ヘルムートは飽きれた様な表情を浮かべ、

 

再び、壺の脇に置かれていた棒を手に持ち、

 

壺の中に、棒を回し入れる...

「吉田と川越」 21OS

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「お前は、じゃあ、その"半神化"を目的として

 

  俺たちについてこのV-MONET内に

 

  来たと言う事か・・・?」

 

「・・・・」

 

佐々木は、川越を無表情で見る

 

「お前ら吉田、そして川越....

 

  お前ら二人は、俺たち悪魔と地上で

 

  何度か顔を合わせ、

 

 互いに憎みあっていた...」

 

「・・・・」

 

「だが、お前ら二人についてくれば、

 

  数が減った俺たち悪魔も次の存在....

 

 "神々を超えた存在"に近づく事が

 

 できるんじゃないか...?」

 

"ギュッ"

 

佐々木は、まるで哀願するような表情を見せ、

 

足に着けていたスパイリーの足飾りに

 

目を向ける...

 

「-------今まで、俺たちと

 

 敵対してたってのに急に、

 

 手の平を返して俺たちの

 

 仲間になるって事か...」

 

「-----ムシのいい話だな」

 

「・・・・」

 

"パッ"

 

吉田と川越の言葉に、佐々木は

 

スパイリーの足飾りを付けていた

 

反対の左足を、地面から離す....

 

「------"神々を超えた存在"ってのは

 

 あのヤロウ...."マルサール"が

 

  このV-MONET内に作り出した存在だが、

 

  地上においては俺たち悪魔の敵でもある...」

 

「おやおや、どうやら、お前さんたちの間には

 

  何か、一悶着(ひともんちゃく)

 

  ある様だね・・・?」

 

「・・・・」

 

ヘルムートの言葉を無視して、川越は

 

少し先にいる佐々木を見る

 

「------仮に上手く、お前が

 

 この空間内において悪魔を越え、

 

 神々を越える存在になったとしても、

 

  それを黙って俺たちが

 

 見逃すと思うか------?」

 

「・・・・」

 

"ガサッ"

 

「それは-------」

 

佐々木が服から何か石の様な物を

 

取り出したのを見て、川越が表情を変える

 

「コルメタタスの魔石....」

 

"パンッ"

 

手に持っていた緑色に光る石を

 

軽く空中に放り投げ、佐々木はそれを手で

 

キャッチする

 

「この、コルメタタスの魔石は

 

  マルサール、そして神々を越えた存在が残した

 

  遺産の一つだ....」

 

「・・・・!」

 

「お前がその腕に着けている

 

 フレイアの腕輪と同様、

 

  このコルメタタスの魔石に使われてる

 

 越数学の技術にはお前ら人間、

 

 ダークウェブの連中も

 

 興味があるんじゃないか....?」

 

「--------フン」

 

「じゃ、じゃあ、そいつは、

 

 X-dog(エクス・ドッグ)の

 

 一つなのか・・・?」

 

「------そう言う事だ」

 

驚いた表情を見せているヘルムートを、

 

佐々木はコルメタタスの魔石を

 

見せつける様に睨みつける

 

「X-dogか・・・」

「吉田と川越」 20OS

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「それじゃ、お前はここで

 

  "神々を超えた存在"

 

  の事を調べているのか....?」

 

佐々木は、自分の同族の頭を掲げながら

 

壺の側にいるヘルムートを睨み付ける

 

「------そうさね...」

 

"カッ カッ カッ カッ....

 

「・・・?」

 

「この、V-MONET内は------」

 

"バサッ"

 

「この、V-MONET内には、

 

  至る所に神や悪魔が溢れている...」

 

ヘルムートは壺の側から部屋の隅にあった

 

机の方に向かうと、その脇に置かれていた本棚から

 

分厚い本を取りだす

 

「我々、ダークウェブ....

 

 地上に残された人間たちが、

 

  このV-MONET内をリンクしていくには

 

  その"神々を超えた存在"を更に

 

  超えて行く事が必要だ....」

 

"バササッ"

 

「-------そうだろう...?」

 

「・・・・・」

 

自分の顔を見つめている老人に、

 

佐々木は無言で視線を逸らす

 

"パラ....

 

机の上に置かれた本を

 

ヘルムートがめくり始める....

 

「通常の神や悪魔なら、先程、

 

 お前さん達がやった様に

 

  その神々の存在を構成している

 

 プログラムを書き換えてやれば、

 

  その神々をこの空間から

 

 排出させる事ができる訳だが....」

 

「------見てたのか?」

 

「------ヒェッ ヒェッ」

 

"パララララ....

 

「だが、神々を超えた存在と出会い

 

  もし、その存在と間違ってでもいいが...

 

 "戦う"などと言う考えを

 

 持っている者がいたとしたら...」

 

「------どうなるってんだ?」

 

「・・・そんじょそこらの新型パソコンや

 

  階級の低い天使や悪魔では

 

 どうにもできんだろうな...」

 

「・・・・」

 

「・・・・」

 

「・・・・」

 

「-----どうした?」

 

「・・・・」

 

「・・・・」

 

ヘルムートの言葉に、自分達の意気を奪われたのか

 

部屋の中にいる吉田、川越、佐々木の三人は

 

皆、押し黙る....

 

「ここ(V-MONET)じゃ、

 

  すでに、神や悪魔の存在は

 

  そこらを歩いている凶暴な犬や

 

  ライオンとかと変わりがねえ....」

 

「佐々木・・・・」

 

「ヒェッ ヒェッ」

 

「俺たち悪魔がこの先、この世界で

 

 生き残ろうと思うんだったら

 

  そいつらを、どうにかするしかねえ...」

 

「ヒェッ ヒェッ-----

 

 お前さんには、無理だな」

 

「....」

 

「見たところ、お前は、

 

 まだ邪聖神化を遂げていない

 

  ただの悪魔だろう------?

 

 それで神々を超えた存在を

 

 どうやって倒すと言うのかね------?」

 

「その方法が、この

 

 V-MONET内にあると聞いた」

 

「・・・"半神化"の事か...」

 

「・・・・」

「吉田と川越」 19OS

f:id:sevennovels:20220214090646j:plain

「すでに、動かなくなった"資源"を活用して

 

  何が悪い------?」

 

"ガタタッ!

 

「キサマ~ッ!!? 降りろッ!?

 

  今すぐっ そこをっ!?

 

  --------"降り"るんだッ!?」

 

「お、落ち着け! 佐々木ッ!?」

 

「-----離せッ! 川越ッ!?」

 

「おやおや・・・・?」

 

"ゴポポポポポポ....

 

「!」

 

「もしかして、その様子じゃお前さんまだ、

 

  悪魔を越えてないのかい....?」

 

「-------ッ!」

 

「・・・・!」

 

「さ、佐々木・・・?」

 

ヘルムートの一言に、先程まで激しい力で

 

吉田と川越の腕を振りほどこうとしていた

 

佐々木の体の動きが止まる

 

「・・・・」

 

「------おや、当たりだったかい」

 

「・・・・」

 

「・・・・!」

 

佐々木の力が弱まった事に、吉田、川越が

 

奇妙な顔つきを浮かべる

 

「・・・離せ」

 

"バッ!"

 

「・・・・!」

 

「チッ------!」」

 

「--------?」

 

佐々木が自分の体を押さえていた

 

吉田、川越の腕を振りほどく

 

「やれやれ、

 

  "邪聖神化(じゃしょうしんげ)"

 

  をしてないんじゃあ果たして

 

  お前さんがこの先、このV-MONET内で

 

 生き残れるかどうか・・・」

 

「・・・・!」

 

ヘルムートの言葉に佐々木は、大きく目を見開く

 

"ゴポポポポ"

 

「邪聖神化ができないんじゃあ、どの道、

 

  このままお前さんは、コイツみたいに

 

 他の神や悪魔の餌食になるだけだ...」

 

「・・・確かにそうかも知れんな...」

 

ヘルムートが壺から素手で取り出した

 

悪魔の一部を見て佐々木が軽く

 

動揺した様な表情を見せる...

 

《邪聖神化》

 

このV-MONETから発生した

 

マルサールが創り出したとされる、

 

疑似的な悪魔や神と呼ばれる存在は

 

当初、このV-MONET空間内においてしか

 

存在していなかったが、

 

"越数学"

 

その技術をマルサールが開発したことにより、

 

この仮想空間内から突如として

 

地上に表出した神や悪魔は

 

互いに独自の進化を遂げ、邪聖神化と呼ばれる

 

融合や結合を繰り返しV-MONET空間の外まで

 

その姿を見せる様になっていた...

 

「話には聞いていたが...」

 

"カチャッ

 

川越がフレイアの腕輪を見ながら、

 

ヘルムートの側まで近付いて行く

 

「そうさ・・・我々人類が

 

  越数学を使って、新たな技術を生み出したのと

 

 同様にこのV-MONET内では

 

  神や悪魔も、全く独自の進化を遂げた...」

 

「俺たち人類が、マルサールの作り出した

 

 越数学によって飛躍的な技術進化を遂げたのと

 

  同期しているのか何なのかは分からないが、

 

  このV-MONET内に存在する------、

 

  いや、外の世界もそうか----...

 

 神や悪魔は、

 

 邪聖神化する事により、互いの存在を

 

  同質化させる事によって

 

 別の姿へとその形を変えた...」

 

"カッ カッ カッ カッ....."

 

吉田が、ヘルムートの側の大きな壺に入っている

 

"悪魔"の残骸を見ながら、足を進ませる

 

「今や、旧来、俺達の世界で

 

 神や悪魔と呼ばれた存在も、

 

  このV-MONET空間では

 

  ヒエラルキーの下位の位置、

 

  "被捕食者"にしか過ぎない....」

 

「・・・・」

 

吉田の言葉に、佐々木は俯く

 

「ヒェッ ヒェッ ヒェッ....」

 

「・・・何がおかしい」

 

「神や悪魔の眷属(けんぞく)たちは

 

  己の存在を高めるため....

 

  それが自由意思に寄るものなのか-----

 

 それとも、必然だったのか....」

 

"バシャッ"

 

「ある時点からにおいて、

 

  神や悪魔は、互いの存在を

 

 邪聖神化させる事によって

 

  全く別の存在へと進化していった...」

 

ヘルムートが、壺の中に入っていた残骸を

 

不躾(ぶしつけ)に眺めながら

 

吉田たちに語り掛ける....

 

「そして、我々人類は、その同質化した存在を

 

  "神を超えた存在"

 

  その様に呼び、ある者は怖れ....

 

 ある者は避け....

 

  そして、ある者は

 

  その存在に興味を持ち-----」

 

「それがお前か?」

 

「-------ヒェッ」

 

佐々木の言葉に、ヘルムートは軽く笑い声を上げる

 

「とにかく、今じゃ神や悪魔と言えども

 

  邪聖神化できない者は、

 

  このV-MONET内では

 

  神々を超えた存在の

 

 被捕食者にしか過ぎない------」

 

「・・・・」

「吉田と川越」 18OS

f:id:sevennovels:20220212184812j:plain

「----------、」

 

"ストンッ"

 

「な、なっ-------!」

 

"ズダンッ!"

 

「何だ、地面の上に立つ事もできないのか-----?」

 

「きゅ、急に飛ばすな!」

 

川越が突然"Link"し、体が別の空間に

 

転移した事に驚いたのか、佐々木は

 

派手にLinkした先の硬い、

 

金属製の床の上に転げ落ちる!

 

「(---------、)」

 

"ゴポ ゴポポ...."

 

「(ここは--------)」

 

「おやおや、お客さんかい?」

 

「-------ッ!」

 

吉田、そして川越がどこからか聞こえて来た声に

 

パソコンを構える!

 

「------どうやら、ウィルにこのサイトの

 

  位置を聞いたみたいだな....」

 

「------アンタは?」

 

吉田は、AISUS-zk9を構えたまま、

 

目の前にいる大きな壺の前に立っている

 

黒い、ローブの様な服を着た老人に目を向ける

 

「-------俺は、"ヘルムート"だ。」

 

「ヘルムート....」

 

「それより、その物騒な物を

 

  しまってくれんかね?」

 

「-------っ」

 

「そんなガチガチの最新スペックの

 

  パソコンを身構えられたら

 

  こっちも思わず興奮して

 

  来ちまうじゃねえか-----?」

 

「------すまない」

 

"スッ"

 

吉田は、自分に戦意が無い事を示すために

 

AISUS-zk9の電源を落とすと

 

目の前にいる老人に向かって一歩足を後ずらさせる

 

「(・・・・)」

 

"コポ コポポポポポ...."

 

「(・・・・・)」

 

"ブシュゥゥゥウウウウウウウ...."

 

"ゴポッ ゴポポポポポッ

 

「(・・・・・)」

 

「------"ウィル"からこの場所の事を

 

 聞いたのかい...?」

 

「・・・・!」

 

壺から噴き出している白い煙に覆われた男は、

 

何か棒の様な物を壺の中に回し入れながら

 

煙越しに吉田を覗き見る...

 

「ウィルを知ってるのか------?」

 

「・・・・・」

 

"スッ"

 

「・・・・!」

 

"カッ カッ カッ カッ....

 

「ウィルは-----」

 

吉田の言葉に反応したのか、男は

 

持っていた棒から手を外すと

 

吉田に向かってまっすぐに近づいて来る....

 

「元は、アイツと俺は、外の世界で一緒に

 

 シンハラ語の話者で作られたダークウェブ、

 

  「ගැලවිය නොහැකි අනන්ත කොරිඩෝව

  (「逃れえぬ無限回廊)」

 

 でIT土方をやっていた...」

 

「-----IT土方・・・?

 

  それがどうして今は

 

 ウィルと離れた別々の空間にいるんだ?」

 

「・・・・」

 

「そうだな------...」

 

吉田の一言に、ウィルは視線を天井の方に向け

 

遠い目をする

 

「色々理由はある...

 

  地上で質のいいソケットが

 

 手に入らなくなっただとか、

 

  量子ビットのパソコンに対応するのに

 

 年を食っただとか...」

 

「・・・・」

 

「(ソケットか・・・・)」

 

マルサールがこの仮想空間から

 

現実世界を支配する様になってから

 

数年以上の月日が流れ、今や

 

パソコンに使われるチップや基板、

 

そしてその他線材などのパソコン部品は、

 

マルサールの手によりほぼ全てが

 

人工知能支配下に置かれ、

 

今やマルサールに対抗する地上の技術者集団、

 

ダークウェブの技術者たちにとっては

 

パソコンを作る事すら難しくなっていた...

 

「そんな状況の中で、互いに

 

  効率良く"仕事"をするには、

 

  それぞれが、それぞれの役割を持って

 

  動いていかなきゃならない...」

 

「-----ここは、何をする場所なんだ?」

 

「------ヒッ ヒッ」

 

「・・・どうした?」

 

「いや、何------、」

 

突然奇妙な笑い声を上げ

 

自分の口元を手で押さえているヘルムートを見て

 

吉田の表情が曇る

 

「確かに、ウィル、そして他の技術者...

 

 「逃れえぬ無限回廊」のIT土方たちは、

 

  資源の枯渇から、ワシと行動を

 

 別にする事になったが...」

 

"カッ カッ カッ カッ....

 

「・・・・」

 

不敵な笑みを見せながらヘルムートが

 

吉田の前から離れ、再び先程自分が立っていた

 

自分の背丈を越える様な

 

壺の方に向かって歩いて行く...

 

「(・・・・)」

 

"ゴポ ゴポポポポポ...."

 

「やつらは、それ以上に、人としての

 

  倫理、道徳を捨て去る事ができなかった...」

 

「------何を言ってるんだ?」

 

"カンッ"

 

壺の脇に掛かっていた梯子に

 

ヘルムートは足を掛ける...

 

「人であるが故に、奴らは

 

  "人を越える存在"....その存在を、

 

  理解する、いや、理解しようとは

 

 しなかった------」

 

"カンッ カンッ"

 

ヘルムートはそのまま梯子(はしご)をつたい、

 

壺の蓋の方に向かって梯子を昇って行く....

 

「奴らは、神々を越える存在、

 

  その存在に対して自分の目を背け、

 

  その存在を見えない様にした様だが...」

 

「・・・・?」

 

"ザパッ"

 

「ワシは、その存在と共に

 

  このV-MONET内で

 

  "共存"する事を選んだのだ--------!」

 

「!」

 

壺の上部に立つと、ヘルムートは壺の中から

 

手掴みで"何か"を引き上げる-------!

 

「そ、それは------!」

 

「"悪魔"-------...」

 

「-------ヒェッ ヒェッ...

 

  悪魔を見るのは初めてかね?」

 

「・・・・!」

 

"ダンッ"

 

「!?」

 

「き、キサマッ-----っ!」

 

「------佐々木っ!」

 

ヘルムートが壺の中から

 

悪魔の体の一部を取り出すと、

 

吉田、川越の後ろにいた佐々木が

 

猛然とヘルムートに向かって駆け出す!

 

「-------落ち着けっ!」

 

「こ、この野郎っ------!」

 

"ブク ブクブクブク...."

 

"ガタッ ガタタッ!"

 

「さ、佐々木ッ!」

 

「--------っ!!」

 

「------おやおや、お前さん、もしかしたら

 

  "同族"だったのかい------?」

 

「き、きっさま~っ!」

 

「佐々木ッ!」

 

「落ち着け!」

 

ヘルムートが手にした悪魔の体の一部を見て、

 

佐々木がヘルムートに向かって

 

飛び掛かろうとするが、それを見ていた

 

吉田と川越が佐々木の体を抑え込む!

 

「-----その壺に入ってるのはっ・・・・

 

  "悪魔"か------っ??」

 

「・・・ヒェッ ヒェッ

 

  何だい、それじゃあ、お前さんも

 

  "悪魔"なのかい------?」

 

「こ、この野郎------っ!」

 

"ガバッ"

 

「吉田! 離せっ!

 

  この野郎っ 俺の仲間を------っ!」

 

「ヒェッ ヒェッ ヒェッ....」

 

ヘルムートは佐々木を見て

 

悪魔の様な笑みを浮かべる

 

「何をそんなに興奮することがあるんだ...?」

 

「こ、この------っ!」

 

「・・・・ッ!」

 

「この、V-MONET内では、

 

  人間はおろか、悪魔、そして神が死ぬなんて

 

 よくある事じゃないか...?」

 

「--------っ」

 

「ヒェヒェヒェヒェ....」

 

"ゴポッ"

 

「すでに、動かなくなった"資源"を活用して

 

  何が悪い--------?」

 

"ブクブクブク...."

 

「し、資源だと-------っ!?」

 

「ヒェヒェヒェヒェヒェ....」

 

"ゴポッ ゴポポッ....

「吉田と川越」 17OS

f:id:sevennovels:20220211190952j:plain

「《"電装"感応-------》」

 

「《x"$7c_c4{}\;:6%|rnch

  #x#x28ibv#2*::,>,&*a

  k8!^n|w6bid#+4r0-*h3

  ?e>g0f,_xt<:58e7'x;r》

 

"シュゥゥォォオオオオオオンッ....

 

吉田、そして川越が自分達の新型パソコンに

 

ウィルから渡された暗証鍵、そして

 

次のサイトの位置情報を入力すると

 

三人の体が淡く光を放ち始める------

 

「お、おい、大丈夫なのか!?」

 

「(------------)」

 

"シュォォォォオオオオオオオオオ.....

 

「(-------------)」

 

「う、うおっ---------」

 

「マルサールを倒せよ!」

 

「(-----------)」

 

"シュゥゥゥウウウウウウォォオオオオンッ...

 

三人の体が、ウィルのいる空間内から

 

光に包まれ、徐々に

 

FO-2.net内から姿を消して行く...

 

「吉田と、川越か....」

 

"グッ"

 

「・・・・・」

 

"キンッ キンッ!"

 

「-------ッ! ッ!」

 

ウィルは脇に転がっていたハンマーを手に取ると、

 

再び台座の上に乗っているパソコンを

 

勢いよく叩き始める-------

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

"ジ..."

 

"ジジッ--------、"

 

"シュゥゥゥウウオオオオオンッ"

 

「-------っおっ!」

 

"ストンッ"

 

「(ここが、

 

  "Midlertidig hvile(一時の憩い)"

 

   ------!)」

 

佐々木が、バランスを崩して

 

地面の黒い金属製の床に倒れ込むのを見ながら

 

吉田、川越は

 

"Midlertidig hvile"

(ミドラーティディグ・ヒュバイル)

 

の空間内に降り立つ------

 

「(・・・・・)」

 

"カッ カッ カッ カッ...."

 

「典型的な、サイバー空間って感じだな...」

 

「ああ...」

 

"カッ カッ カッ カッ...."

 

黒基調のおそらく、金属と思われる

 

壁や床に覆われたシェルターの内部の様な通路を

 

吉田、川越の二人は周りを確かめる様に

 

先へと進んで行く...

 

「お、おい、」

 

「・・・何だ?」

 

倒れている自分を放っておいて

 

先へと進んで行く二人を

 

佐々木が後ろから呼び止める

 

「こ、ここは何だ------??

 

  "神"とかはいたりしないのか?」

 

「-------フッ」

 

「な、何だよ」

 

"ピンッ"

 

川越は、黒い金属の床に煙草を投げ捨てる

 

「仮にもお前は、"悪魔"だろう-----?」

 

「だ、だから何だ」

 

「悪魔のクセに、お前は神が怖いのか------?」

 

【佐々木は悪魔】

 

V-MONET内の空間にリンクする以前の

 

吉田、そして川越はV-MONET内の空間の

 

情報を集めるため、すでにマルサールの手によって

 

支配された荒廃した地上で戦っている内に

 

この佐々木と知り合い、何度か敵対した後、

 

佐々木は何故か吉田と川越に手を貸すと告げ

 

このV-MONET内に

 

共に入り込んできていた...

 

「い、いや、俺が悪魔でも

 

  相手が神...しかも、

 

 "神を越えた存在"だとは...」

 

「---------、」

 

マルサールが作り出したこの仮想空間、

 

V-MONET内に出現した

 

神、そして悪魔は

 

マルサールが作り出したと言われる

 

"越数学"と呼ばれる従来の数学を超越した

 

技術により、その存在を仮想空間から

 

地上にまで表出させて来ていた...

 

「(神が先か、悪魔が先か-------

 

  あるいは、両方かも知れんな...)」

 

"フゥゥゥゥウウウウゥゥウウウ....

 

川越は、タバコを軽く吹かすと

 

目の前にいる佐々木に目を向ける

 

「------それより、この空間の

 

 構造はどうなってるんだ?」

 

「・・・・・」

 

「ああ-----、」

 

"カタッ"

 

吉田は、AISUS-zk9の画面を開きながら、

 

川越を見る

 

"カッ カッ カッ カッ...."

 

"ピッ ピッ"

 

「------どうやら、この

 

 Midlertidig hvileには

 

  複数の部屋が存在してるようだな...」

 

「ここの空間のプログラム言語は

 

  ウィルが使っていた物と同じ、

 

  DAO言語だろう?」

 

「------そうだな....」

 

"カッ カッ カッ カッ....」

 

「ウィルがこの空間構造を示してくれたおかげで

 

  道の方は分かるが-------」

 

「だったらさっさと先へ進めば

 

 いいんじゃないのか?」

 

「・・・・」

 

佐々木の言葉に、吉田は

 

AISUS-zk9のデスクトップ画面をのぞき込む

 

「いや、どうやらこの

 

 Midlertidig hvileは

 

  かなりの広さを持つ空間の様で

 

  近くの部屋に辿り着くまでは

 

  二時間以上かかりそうだな...」

 

「に、二時間も歩くのか?」

 

「・・・・」

 

"カタッ"

 

川越が、紫電-§を取り出す

 

「面倒だ、"Link"するぞ」

 

「--------エ?」

 

"カタッ"

 

「な-------!」

 

"ボォォォォオオオオオオオオオッ"

 

「わざわざ、二時間もかけて歩いてられるか」

 

"パンッ"

 

「お、お---------!」

 

"シュゥゥゥゥウウウウウウウウ....

 

川越が紫電-§のキーボードを軽く一叩きすると

 

吉田、川越、佐々木の体が光に包まれ、

 

徐々に薄れて行く...

 

「きゅ、急に--------!」

 

「(・・・・・)」

 

"シュォォォオオオオオオオオオンッ....

「吉田と川越」 16OS

f:id:sevennovels:20220211185329j:plain

「こいつが次の、

 

 "Midlertidig hvile"

 

  の暗証鍵だ...」

 

「・・・・」

 

「2356 1857 1766 7623

 3678 4246 7275 8844

 0860 1776 0130 7310

 3505 7078 6702 8555

 7073 5854 1081 7081」

 

「・・・何だこいつは」

 

吉田は、ウィルのパソコンから

 

自分のパソコンに転送されてきた

 

4ケタの数字の羅列に目を通す

 

「こいつが何か、お前には

 

 分からないか...?」

 

「-------フッ」

 

「------どうした...?」

 

不可解な笑みを浮かべた吉田を見て

 

ウィルが興味深そうな表情で

 

吉田の手元にあるパソコンを見る

 

「------わざわざこんな面倒な

 

  数字の羅列で暗証鍵を送らなくても

 

  もっと簡単に、暗証鍵を

 

 表示できるだろう-----?」

 

「・・・・! 分かるか...」

 

「--------川越」

 

「あいよ」

 

"ピッ"

 

「----------....」

 

"カタッ カタタタタタタタタッ!"

 

「----------、」

 

「(+6o$rnh-iA

   8>?(Ar415Q

  >%:VR1}JUB

  '|)IP{!0s5

  }^"sXUGG-t)

 

   ・・・・)」

 

"カタタタタタタタタタタッ!"

 

「......!」

 

「(tイヹヒヮVOFガホ

  |xプ]JR,ch,

  $dq?ケノIダ&M

  ビヹ{ァザ3ヨ(vル

  ナヶゴ^tdクバnク-----!)」

 

「な、なんて速さだ------っ」

 

「(・・・・・)」

 

"カタタタタタタタタタタタタタッ!"

 

川越が、フレイアの腕輪を翳し、紫電

 

の前でまるでピアニストの様に両手を添えると

 

川越の奏でる様なタイピングに熱を上げたのか

 

紫電-§の内部に設置された

 

ファンが激しい機械音を上げる!

 

「-----こ、こいつは....」

 

「-------川越でこそできる技だな...」

 

"カタタタタタタタタタタタタタッ"

 

"ブォォォォォォオオオオオオオオ-----"

 

「(------...)

 

  -----------Enter.」

 

"ピッ"

 

川越は吉田のパソコンから転送された

 

四ケタの乱数を受け取ると、

 

フレイアの腕輪を翳し

 

紫電-§のキーボードを一人、

 

ピアノを奏でるように紡(つむ)いで行く...

 

「(ドビュッシー....いや....

 

   "モーツァルト"....)」

 

"タンッ! タタタンッ! タタタタタンッ!"

 

「...Nh//www.124.353.248...

 

  Code:"^?,<,?-31%2_."-:[^...」

 

「------さすがだな...」

 

パソコンの前で川越が何かを呟いたのを見て

 

ウィルは口の端を上げる

 

「簡単な乱数、そして特定の乱数表を利用した

 

  暗号だろう...

 

 こんな一昔前の暗号で、

 

  俺達を試そうなんて人が悪いぜ」

 

「----それも、ソイツのおかげって事か?」

 

ウィルは、川越が手に持っている

 

紫電-§に目を向ける

 

"カタッ"

 

「よし、それじゃあ、

 

 "Link"するぞ------」

 

「待て」

 

「-------?」

 

AISUS-zk9に向かって

 

手を伸ばしかけていた吉田を

 

ウィルが後ろから呼び止める

 

「-------何だ?」

 

「こいつを持っていけ」

 

"ビュンッ"

 

「っ・・・ こいつは...」

 

「ICチップだ」

 

「-----何に使うんだ?」

 

ウィルが放り投げて来た、

 

小さな金色の1cm角のICチップに

 

吉田が目を向ける

 

「そいつは、俺と同じ、DAO言語を使う

 

  "上"の世界のダークウェブの連中が使う

 

  ICチップだ...」

 

「・・・・」

 

「ソイツがあれば、俺と同じ

 

  Hope.Incのメンバーなら

 

  お前たちに手を貸してくれるだろう...」

 

「-------助かる」

 

「パソコンが壊れたら、俺のとこに持ってこい」

 

"フッ"

 

吉田、そして川越はウィルに向かって

 

ジェネラルな笑顔を浮かべると、

 

その身をパソコンに預け

 

Midlertidig hvileへと向かって

 

"Link"させて行く....

 

「・・・・・」

 

"シュォォォオオオオオオンッ....

「吉田と川越」 15OS

f:id:sevennovels:20220208144935j:plain

「じゃあ、お前らはこのFO-2.NETを越えて

 

  この先の空間へと

 

  進んで行くつもりなのか------?」

 

"カタッ"

 

ウィルが、パソコンを組むために使っていた

 

ヤスリを手に取る

 

「ここに俺たちが来た理由に、

 

  それ以外の目的が考えられるか-----?」

 

「ま、まあ、それはそうだが...」

 

「この先に進むってったって、

 

  どうするつもりなんだ?」

 

"パンッ"

 

佐々木は、スパイリーの足飾りを付けた足で

 

軽くサイト内の真っ白な地面を踏み鳴らす

 

「さっきみたいに、色々意味の分からねえ

 

  リンクだとか、そう言うのを使って

 

  またどっかに移動してくって事なのか?」

 

「--------、」

 

「こっからマルサールの居場所を

 

 突き止めるにしたって行くアテでもあんのかよ」

 

「--------、」

 

ウィルが黙ったのを見て、

 

吉田はウィル歩み寄って行く...

 

「ウィル、あんたは....」

 

「な、何だ?」

 

「アンタは、俺達と同じ、地上のダークウェブの

 

  一人だ...」

 

「・・・・」

 

「そして、アンタはこのFO2-.NET内で

 

  サイトを作り、長い間ここで

  

  パソコンを打ち続けていた...」

 

吉田は、ウィルの横に転がっている

 

おそらく、パソコンを叩くための物であろう

 

ハンマーに目を向ける

 

「俺達、ダークウェブの人間が

 

  この先に進むにはプログラム言語...」

 

「ああ、DAOだか何だかってヤツだろ?」

 

「それに、"暗証鍵"が

 

 必要になってくる------、」

 

「・・・・っ」

 

【暗証鍵】

 

マルサールが作り出した、この仮想区構築空間

 

V-MONET内では、

 

それぞれの空間がバラバラに

 

このV-MONET内に独立して存在し、

 

この仮想構築空間内をまるで

 

海の上に漂う小島の様に"サイト"と呼ばれる

 

いくつもの空間が分かれて存在している...

 

"カッ"

 

吉田の横から川越が出てくる

 

「この、各空間、サイトが

 

 バラバラに分かれて存在する

 

  V-MONET内の中を行き来するには、

 

  そのサイトの位置情報、そして、

 

  そのサイトにリンクするための、

 

  暗証鍵が必要になってくる...」

 

「そんなの、探しっこねえじゃねえか」

 

佐々木が、関心のなさそうな素振りで

 

川越の言葉に反応する

 

「通常であれば、このV-MONET内に

 

 バラバラに存在する"サイト"を

 

  見つけるには、様々な解析や暗号処理を

 

 していかなければならないが...」

 

川越が、ハンマーを手にしている

 

ウィルに視線を向ける

 

「ウィル、あんたは、さっき

 

 もう何年もこの場所にいると言ってたよな...」

 

"キュッ"

 

川越の言葉に、ウィルは脇に置かれていた

 

モジュールを手に取る

 

「・・・・」

 

「アンタだったら、この

 

 V-MONET内に存在する

 

  サイトの場所、そして暗証鍵の事を

 

  知ってるんじゃないか------?」

 

「・・・・」

 

川越が自分に向かって問いかけるが、

 

ウィルは複雑な表情を浮かべながら

 

黙って自分の手にしている

 

モジュールを見ている....

 

「アンタは、俺たちの力が

 

 このV-MONETをリンクするには

 

  不足だと感じていたようだが...」

 

「・・・いや...」

 

「さっきの俺達と"神"との戦いを見れば、

 

  俺たちの力が、このV-MONET内でも

 

 充分に通用する事はアンタにも

 

 分かったんじゃないのか------?」

 

「---------、」

 

"パンッ!"

 

「・・・・?」

 

突然、ウィルが自分の膝を叩く

 

「??」

 

「------確かに、お前の言う通りだ。」

 

「ウィル・・・」

 

「最初に、このサイト内に入り込んできた

 

 お前らを見た時は、ただの学生服を着た

 

 ヒヨッ子だと思ったが...」

 

「俺は、20を越えてる」

 

学生服の襟を正しながら

 

川越はウィルに視線を向ける

 

「だが、さっきの..."神"との戦いを見れば、

 

  お前らがこのV-MONET内で

 

  やってくには、充分すぎる程、

 

 パソコンを使いこなす事ができる様だ...」

 

「------パソコンを叩けば、

 

 先に進めるってか?」

 

「・・・・」

 

「------おっと」

 

佐々木の言葉が冷やかしだと思ったのか、

 

睨みつける様な視線を向けて来たウィルに

 

佐々木は少し焦った様な表情を見せる

 

「お前らだったら、この先

 

 "Midlertidig hvile(一時の憩い)"

 

  の位置情報、そして、暗証鍵を

 

 渡してもいいかも知れんな...」

 

「ウィル....」

 

「...老人の時代は終わったよ。

 

  後は、若い奴らが自分で考え

 

  自分の道を進めばいい-------」

 

「・・・・」

「吉田と川越」 14OS

f:id:sevennovels:20220203114648j:plain「これから、どうするつもりだ------?」

 

"ガタッ ガタタッ"

 

"神"と呼ばれる存在が

 

このサイト内から消え去り、

 

落ち着きを取り戻したのかウィルは

 

サイト内に散らばった

 

工具やパソコンの部品を片付けながら

 

吉田たちに目を向ける

 

「"神"は去った-------」

 

「ああ....」

 

「(・・・・)」

 

"ガタッ"

 

"ガタタッ!

 

「(・・・・・)」

 

吉田は、ウィルが空間内に散らばった

 

道具をまとめているのを見て

 

何も無い、真っ白なサイト内を見渡す-----

 

「おいおい、今のが"神"だってんなら、

 

  この先結構やべえ事に

 

  なるんじゃねえか------?」

 

「・・・何でだ?」

 

吉田が、スパイリーの足飾りをしている

 

佐々木に目を向ける

 

「い、いや、このV-MONET内には

 

  今みたいな"神"が、当たり前の様に

 

  いるとは聞いてたが...」

 

「お前は、悪魔だろう-------?」

 

"ガタッ!"

 

「あ、悪魔っ!? コイツがか!?」

 

ウィルは、手に持っていた

 

パソコンの冷却器を床に落とす

 

「知らなかったのか?」

 

「い、いや・・・・」

 

「フン-------、」

 

ウィルと吉田のやり取りを見て

 

川越が冷めた目を浮かべる

 

「今さら、悪魔ごときで何を驚く必要がある...」

 

「い、いや...」

 

「この、V-MONETと言う空間は

 

 マルサールが作り出した仮想構築空間だ。

 

  神や悪魔の類いなら、

 

 掃いて捨てる程いる------...」

 

【神と悪魔】

 

このV-MONET、そして地上の世界を支配する

 

"マルサール"は、この空間内に

 

想像が付く限りの存在を表出させ、

 

更にその表出させた存在の一部として

 

現実世界に存在する神や悪魔をも

 

この空間に生み出していた...

 

「し、しかし、悪魔とは...」

 

「-----何だよ」

 

「い、いや....」

 

佐々木が、自分に向かって好奇の目を浮かべている

 

ウィルを睨みつける

 

「----------...」

 

「川越。」

 

"カッ カッ カッ カッ....

 

川越は、吉田たちに背を向け何も無い

 

ウィルが作り出したサイト内を歩き回る

 

「もはや、この世に、神は存在しない....」

 

「・・・・」

 

"カッ カッ カッ カッ....

 

「マルサールが作り出した

 

  この白灼(びゃくやく)とした世界は、

 

  今までの地上の規則性を全て無に帰し

 

  善や悪...人や、神...

 

  全ての存在が入り混じる

 

 混沌とした世界を生み出した...」

 

「・・・・」

 

今の暗い状況を指摘されたのが堪(こた)えたのか

 

ウィルは川越の言葉に、黙って地面に転がっている

 

パソコンのマザーボードに目を向ける...

 

「神だろうが、悪魔だろうが、

 

  そんな事は些細な事だ...」

 

「よく分かってるじゃねえか? 川越?」

 

「・・・・」

 

「重要なのは、俺達、ダークウェブの人間が

 

  この混沌とした世界、V-MONETを生み出した

 

  マルサールの居場所を突き止め、

 

  奴が構築した

 

 この世界を破壊する事だ------」

 

「・・・・」

「吉田と川越」 13OS

f:id:sevennovels:20220202055023j:plain「い、一体何が起きたってんだ...?」

 

「------...」

 

突然、先程まで自分達に攻撃を仕掛けて来た

 

"存在"がこの場から姿を消したことに、

 

佐々木が不可解な表情を浮かべる

 

「単純だ....」

 

"カタタタ...

 

吉田は、パソコンのキーボードを撫でる様に

 

軽く弾く

 

「今、俺達を襲ってきた存在...」

 

「ああ、

 

  "神"

 

  だろ-------...?」

 

【V-MONET】

 

マルサールが創り出した仮想構築空間の名称で、

 

マルサールはこの仮想構築空間に

 

入り込んでくる侵入者達を排除するため、

 

さまざまなワームや、

 

シールドと呼ばれるプログラム...

 

さらには現実の世界で

 

人間を支配するべき存在の

 

"神"を越数学のプログラムによって

 

構築する事で外部からの侵入を

 

完全に遮断していた...

 

「奴が、"神"だとしても、

 

  所詮は、このV-MONET空間内で

 

  マルサールによって造り出された

 

  仮想プログラムにしか過ぎない...」

 

「だ、だから?」

 

"カタタタッ"

 

吉田は、再びキーボードに自分の指を這わせる

 

「今のが、マルサールがプログラムした"神"で

 

  この空間内において

 

 絶対的な力を持っているとしても、

 

  所詮、プログラムはプログラムだ....

 

  特定のプログラムによって作り出された

 

  仮想的な存在にしか過ぎない...」

 

「.....」

 

"ゴクリ"

 

佐々木が、喉を鳴らす

 

「"神"が、このV-MONET空間内の

 

  存在であるとすれば、奴を倒すには...

 

 いや、倒す必要すらない」

 

「------?」

 

吉田の言葉に佐々木が

 

よく分かっていない様な表情を見せる

 

「つまり、奴、"神"をこの仮想空間から

 

  強制的に排出してやればいいって訳だな」

 

"ガッ"

 

川越が、紫電-§(オルデ)を片手に

 

佐々木を見る

 

「神がこのサイト内に出現できると言う事は、

 

  神はこのサイトの

 

 プログラミング言語である----」

 

シンハラ語だ」

 

川越が軽く言葉に詰まると、側にいたウィルが

 

川越の言葉を続ける

 

「-----そうだ、奴が

 

 この空間内に存在している以上、

 

  奴はほぼ確実にこのサイトの言語、

 

  シンハラ語によって

 

 プログラミングされている筈だ...」

 

「-----~~~」

 

佐々木が、更に表情を歪める

 

「奴がシンハラ語によって

 

  プログラムされた存在であるとすれば、

 

  後は奴を構成しているプログラム列を解析して

 

  それを書き替えてやればいい...」

 

「そ、そんな事....」

 

「何だ?」

 

川越が、ウィルに視線を向ける

 

「い、いや、確かに、理論上は可能かも知れんが、

 

  だが、かと言ってまずシンハラ語

 

 プログラム言語を操る事自体簡単ではないし、

 

  それにそれができたとしても、

 

  奴を構成しているプログラムの構造なんて

 

  分かりようが無いだろう------?」

 

「------それは、アンタも

 

 もう分かってる筈だ」

 

"ガタッ"

 

川越は、手に抱えている紫電-§を

 

ウィルに見える様に掲げる

 

シンハラ語の使用...

 

 そして、プログラム解析...

 

  更には、奴をこのサイト内から

 

 強制排出させるためのコマンド....」

 

「・・・・」

 

川越は軽々しく口にしているが、

 

川越が口にする一つ一つの言葉は、

 

熟練したIT土方でも

 

簡単に実行できる様な代物ではない。

 

「そこで、コイツの出番って訳だ。」

 

"ポンッ"

 

「------量子コンピュータなのか...」

 

「フッ」

 

ウィルの言葉に、川越は

 

アブゾディカルな笑みを浮かべる

 

「------広く定義するなら、

 

  その言葉があてはまるだろうな」

 

量子コンピュータ

 

古い時代、おおよそパソコン黎明期(れいめいき)から

 

中期に使われていた

 

旧式のパソコンより更に高性能のパソコンの事で

 

パソコン自体の使う命令回路や、

 

記憶領域を大幅に拡張させたパソコンの事で、

 

この時代において熟練したIT土方達は、

 

この量子コンピュータの技術を

 

当然の様に扱っている...

 

「・・・・」

 

「------どうした?」

 

「いや....」

 

ウィルが何か不審な顔を浮かべているのを見て、

 

川越はウィルに視線を向ける

 

「いや、いくらお前の使ってるパソコンが

 

  量子コンピュータだとして....

 

 だとしても、さっきの------、」

 

「"強制排出"の事か?」

 

「ああ、いくらお前のパソコンが

 

 量子コンピュータだとしても、

 

  そう易々と、神をこの空間から

 

  追い出す事は出来ないと思うが...」

 

「------フッ」

 

「・・・・」

 

ウィルの言葉に、川越が

 

シェブディシャルな笑顔を浮かべる

 

「それも、全て"越数学"の技術を

 

 使いこなす事ができれば

 

  可能になってくる...」

 

「越数学...」

「吉田と川越」 12OS

f:id:sevennovels:20220201065746j:plain

「き、強制排出------?」

 

「-------フン、」

 

「な、何が起きたってんだ....?」

 

「(--------、)」

 

"ガラ...."

 

「どうやら、"神"を退出させた様だな...」

 

「吉田...」

 

"チャッ"

 

まだ、部屋の中に煙が立ち込める中、

 

先程までパソコンを叩いていた吉田が、

 

ゴーグルを外しながら川越の元までやってくる

 

「ああ、"神"とは言っても、

 

  どうやら、まだ、"神を越えた"

 

  存在では無かった様だ...」

 

「-------、」

 

"タンッ"

 

川越の言葉を聞きながら、吉田が

 

自分のAISUS-zk9の

 

"Enter"ボタンを人差し指で弾く

 

「《EXECUTIONOR》$#”

 

  《COMMAND》☆~;@

 

  《ALL CLEAR》...」

 

"シュゥオオオオンッ"

 

「き、消えた...」

 

「な、何だってんだ...」

 

「・・・・」

 

吉田が、AISUS-zk9の

 

Enterボタンを押すと、

 

空間内に出現していた吉田の仮想媒体(ばいたい)

 

"AliCe(アリサ)"

 

が吉田のパソコンに吸い込まれる様に

 

空間内から姿を消す....

 

「・・・・!」

 

「---------ッ"!"」

 

佐々木がまだ、煙が立ち込めている

 

サイト内を見渡す

 

「お、おい------!」

 

「・・・何だ?」

 

"シュボッ"

 

川越は、驚いた表情を浮かべている

 

佐々木に視線を向けず、

 

学生服の胸ポケットから煙草を取り出し

 

それに火を点ける

 

「い、今の-------」

 

「"強制排出"の事か------?」

 

「・・・・!」

 

佐々木は、先程まで空間内に存在していた

 

"神"と呼ばれる存在が、

 

サイト内から姿を消したことに

 

驚いた様子を浮かべている

 

「い、いや------、

 

  さっきまで、あの、上の方の裂け目から、

 

  アイツ-------....」

 

「・・・・」

 

「アイツが、今の今まで俺達に

 

 攻撃を仕掛けてたってのに------、」

 

「------だからどうした?」

 

「い、いや、それが、川越、お前。

 

  お前がそのパソコンで

 

 何かした途端-----...

 

 ・・・お前が何かやったんだろう?」

 

「---------、」

 

"シュボッ"

 

煙草の火の点きが悪いのか、

 

川越はポケットからジッポを取り出し、

 

再び煙草に火を点ける

 

「わ、訳が分からねえ------、

 

 む、向こうが攻撃を

 

 仕掛けて来たと思ったら....」

 

「いつの間にか、"奴"が消えてた-------、」

 

「それは-----」

 

「吉田....」

 

驚いた様子を見せている佐々木の元に、

 

学生服に身を包んだ吉田が近付いてくる

 

「先程まで、この空間に存在していた...

 

  そして、俺達に攻撃を仕掛けて来た"神"が、

 

  なぜこの場からいなくなったか....

 

 お前は、今、そう考えている...」

 

「そ、そうだ。」

 

「おい、それより------」

 

「・・・・」

 

吉田は、川越の視線の先にいるウィルに目を向ける

 

「------"見てた"か...?」

 

「あ、ああ...」

 

吉田と川越の行動に驚いているのか、

 

ウィルは、空間の地面にへたり込みながら

 

吉田の言葉に答える...

 

「な、何がなんだか...」