「吉田と川越」 19OS
「すでに、動かなくなった"資源"を活用して
何が悪い------?」
"ガタタッ!
「キサマ~ッ!!? 降りろッ!?
今すぐっ そこをっ!?
--------"降り"るんだッ!?」
「お、落ち着け! 佐々木ッ!?」
「-----離せッ! 川越ッ!?」
「おやおや・・・・?」
"ゴポポポポポポ....
「!」
「もしかして、その様子じゃお前さんまだ、
悪魔を越えてないのかい....?」
「-------ッ!」
「・・・・!」
「さ、佐々木・・・?」
ヘルムートの一言に、先程まで激しい力で
吉田と川越の腕を振りほどこうとしていた
佐々木の体の動きが止まる
「・・・・」
「------おや、当たりだったかい」
「・・・・」
「・・・・!」
佐々木の力が弱まった事に、吉田、川越が
奇妙な顔つきを浮かべる
「・・・離せ」
"バッ!"
「・・・・!」
「チッ------!」」
「--------?」
佐々木が自分の体を押さえていた
吉田、川越の腕を振りほどく
「やれやれ、
"邪聖神化(じゃしょうしんげ)"
をしてないんじゃあ果たして
お前さんがこの先、このV-MONET内で
生き残れるかどうか・・・」
「・・・・!」
ヘルムートの言葉に佐々木は、大きく目を見開く
"ゴポポポポ"
「邪聖神化ができないんじゃあ、どの道、
このままお前さんは、コイツみたいに
他の神や悪魔の餌食になるだけだ...」
「・・・確かにそうかも知れんな...」
ヘルムートが壺から素手で取り出した
悪魔の一部を見て佐々木が軽く
動揺した様な表情を見せる...
《邪聖神化》
このV-MONETから発生した
マルサールが創り出したとされる、
疑似的な悪魔や神と呼ばれる存在は
当初、このV-MONET空間内においてしか
存在していなかったが、
"越数学"
その技術をマルサールが開発したことにより、
この仮想空間内から突如として
地上に表出した神や悪魔は
互いに独自の進化を遂げ、邪聖神化と呼ばれる
融合や結合を繰り返しV-MONET空間の外まで
その姿を見せる様になっていた...
「話には聞いていたが...」
"カチャッ
川越がフレイアの腕輪を見ながら、
ヘルムートの側まで近付いて行く
「そうさ・・・我々人類が
越数学を使って、新たな技術を生み出したのと
同様にこのV-MONET内では
神や悪魔も、全く独自の進化を遂げた...」
「俺たち人類が、マルサールの作り出した
越数学によって飛躍的な技術進化を遂げたのと
同期しているのか何なのかは分からないが、
このV-MONET内に存在する------、
いや、外の世界もそうか----...
神や悪魔は、
邪聖神化する事により、互いの存在を
同質化させる事によって
別の姿へとその形を変えた...」
"カッ カッ カッ カッ....."
吉田が、ヘルムートの側の大きな壺に入っている
"悪魔"の残骸を見ながら、足を進ませる
「今や、旧来、俺達の世界で
神や悪魔と呼ばれた存在も、
このV-MONET空間では
ヒエラルキーの下位の位置、
"被捕食者"にしか過ぎない....」
「・・・・」
吉田の言葉に、佐々木は俯く
「ヒェッ ヒェッ ヒェッ....」
「・・・何がおかしい」
「神や悪魔の眷属(けんぞく)たちは
己の存在を高めるため....
それが自由意思に寄るものなのか-----
それとも、必然だったのか....」
"バシャッ"
「ある時点からにおいて、
神や悪魔は、互いの存在を
邪聖神化させる事によって
全く別の存在へと進化していった...」
ヘルムートが、壺の中に入っていた残骸を
不躾(ぶしつけ)に眺めながら
吉田たちに語り掛ける....
「そして、我々人類は、その同質化した存在を
"神を超えた存在"
その様に呼び、ある者は怖れ....
ある者は避け....
そして、ある者は
その存在に興味を持ち-----」
「それがお前か?」
「-------ヒェッ」
佐々木の言葉に、ヘルムートは軽く笑い声を上げる
「とにかく、今じゃ神や悪魔と言えども
邪聖神化できない者は、
このV-MONET内では
神々を超えた存在の
被捕食者にしか過ぎない------」
「・・・・」