「吉田と川越」 24OS
「だったら、どうすればいいんだ------?」
「・・・・・」
"ゴポッ ゴポポッ....
吉田の言葉に、ヘルムートは何も答えず、
何かの液体で煮立っている
壺の中を無言で見ている...
「この先の空間に進むのに
越数学や、神々超えた存在を
相手にする事が必要なら、
それを倒せばいいだけだろう------?」
「-------ヒェッ ヒェッ!」
「何故、笑う------?」
「果たして、今のお前さんたちに
それができるかどうか-------...」
「-----試さなければ
分からないんじゃないか?」
「・・・そうさね...」
"コトッ"
「・・・・?」
ヘルムートは、壺に回し入れていた棒を
自分の脇に置くと、部屋の隅に置かれている
机に向かい足を進める...
"ガタッ"
「おお、ちょうど、コイツ何かが
いいんじゃないか」
「・・・何だ? それは?」
ヘルムートが机の脇に置かれていた
本棚から取り出した、何の言葉で書かれているか
分からない、分厚い本に川越が目を向ける
「お前らがこの空間の先に進むつもりなら、
少し、腕試し-------...
ちょうどいい、"悪魔"がこの
"Midlertidig hvile"
のネットワーク内ににいる-------、」
「そいつは、"神々を超えた存在"なのか?」
「------ヒェッ ヒェッ
何、そう、気負う事は無い------、
こいつは、ただの悪魔さ-------、」
「・・・・」
「ただし、こいつ、アグメノンは、
地獄にいる悪魔軍団の中でも、
第一階級の悪魔だがね....」
「アグメノン....!」
「おや、コイツを知ってるのかい...」
「ば、バカ・・・アグメノンって言ったら、
俺たち下っ端の悪魔じゃ
お目に掛かった事すらねえ、
地獄の長、ドレンの眷属じゃねえか....」
「・・・・!」
「怖気づいたのかい・・・?」
部屋の中が沈黙に包まれたのを見て、
ヘルムートは邪悪な笑顔を浮かべながら
部屋の中にいる三人に笑いかける
「-------しょせん、悪魔だろ?」
「------川越...」
「お、おいっ」
「倒すつもりかね------?」
「-------神々を超えた存在を
相手にしなけりゃならないんだ。
今更、そんな悪魔一匹怖れて
どうなる-----?」
"チャッ"
川越は、自分の新型パソコン紫電-§を構えながら
ヘルムートにセンシュアルな顔付きを見せる
「・・・そうかい...それだったら、
こいつを渡しとくよ...」
"ビュンッ!"
「-----何だ? コイツは-----?」
"パシッ!"
「そいつは、このV-MONET内にいくつかある
Lost and found(落とし物)の一つ、
"エルベスの砂時計"さ....」
「砂時計....」
川越は、ヘルムートから投げつけられた
砂時計の形に似た、黒い、筒の様な
硬い金属で覆われた物質を見る
「そいつは、この、V-MONET内の
空間に存在する神々や、悪魔の情報を
収集するために役立つ物だ...」
「情報を収集・・・?
一体、それが何の役に立つってんだ?」
「・・・・」
フードの隙間から見えるヘルムートの眼が
大きく見開く
「お前たちも分かっている通り、
このV-MONETはマルサールが作り出した
仮想構築空間だ....」
「・・・それが、どうしたんだ?」
当たり前の様に分かり切った事を話すヘルムートを
川越が馬鹿にする様な表情で見る
「この空間が、仮想構築空間...
データで処理されている空間と言う事は、
この、V-MONET内に入り込んでいる
お前らも、当然ただの
データの一つにしかすぎない訳だ...」
「・・・・」
ヘルムートに渡された
エルベスの砂時計に目をやりながら
川越はヘルムートの話に耳を傾ける....
「つまり、このV-MONET内にいる者は、
大なり小なり、どんな者であれ
その存在自体を
データ化する事ができる・・・・」
「・・・なるほどな」
「?」
吉田が、一歩前に進み出る
「つまり、お前が今渡した、
このエルベスの砂時計はこの空間内に入り込んだ
神や悪魔のデータを
記録している装置な訳だ...」
「------察しがいいな」
「・・・神や悪魔のデータ何て何に必要なんだ?」
「考えて見ろ-------、」
吉田は、悟す様な口調で佐々木に語り掛ける
「この空間内において、神や悪魔は
邪聖神化と呼ばれる行為により
"神々を超えた存在"として
進化を遂げている....」
「-----だったら、
やべえって事じゃねえのかよ?」
「・・・確かにそれはそうだ。だが、
もし、仮にこの空間内に存在する
神や悪魔の存在をデータ化し、それを
処理する事ができればどうなるか...」
「"神化"できるって事か」
「その通りだ。」
吉田は、いち早くこの構図を理解した川越に
飄々(ひょうひょう)とした態度を見せる
「そして、この仮想空間における
神や悪魔をデータ化する事ができれば、
そのデータ処理化した様々な神や悪魔同士を
"神化"させる事ができる-------」
「じゃ、じゃあ-----!」
"ズサッ"
佐々木が期待を持った目で吉田を見る
「その、黒い砂時計みたいなモンを使えば
この俺にも、"神化"が
できるって事か-------?」
「・・・・」
"バサッ バササッ!
佐々木の背中の羽が、大きな音を立て、
激しく揺れ動く-------、