「吉田と川越」 13OS
「い、一体何が起きたってんだ...?」
「------...」
突然、先程まで自分達に攻撃を仕掛けて来た
"存在"がこの場から姿を消したことに、
佐々木が不可解な表情を浮かべる
「単純だ....」
"カタタタ...
吉田は、パソコンのキーボードを撫でる様に
軽く弾く
「今、俺達を襲ってきた存在...」
「ああ、
"神"
だろ-------...?」
【V-MONET】
マルサールが創り出した仮想構築空間の名称で、
マルサールはこの仮想構築空間に
入り込んでくる侵入者達を排除するため、
さまざまなワームや、
シールドと呼ばれるプログラム...
さらには現実の世界で
人間を支配するべき存在の
"神"を越数学のプログラムによって
構築する事で外部からの侵入を
完全に遮断していた...
「奴が、"神"だとしても、
所詮は、このV-MONET空間内で
マルサールによって造り出された
仮想プログラムにしか過ぎない...」
「だ、だから?」
"カタタタッ"
吉田は、再びキーボードに自分の指を這わせる
「今のが、マルサールがプログラムした"神"で
この空間内において
絶対的な力を持っているとしても、
所詮、プログラムはプログラムだ....
特定のプログラムによって作り出された
仮想的な存在にしか過ぎない...」
「.....」
"ゴクリ"
佐々木が、喉を鳴らす
「"神"が、このV-MONET空間内の
存在であるとすれば、奴を倒すには...
いや、倒す必要すらない」
「------?」
吉田の言葉に佐々木が
よく分かっていない様な表情を見せる
「つまり、奴、"神"をこの仮想空間から
強制的に排出してやればいいって訳だな」
"ガッ"
川越が、紫電-§(オルデ)を片手に
佐々木を見る
「神がこのサイト内に出現できると言う事は、
神はこのサイトの
プログラミング言語である----」
「シンハラ語だ」
川越が軽く言葉に詰まると、側にいたウィルが
川越の言葉を続ける
「-----そうだ、奴が
この空間内に存在している以上、
奴はほぼ確実にこのサイトの言語、
シンハラ語によって
プログラミングされている筈だ...」
「-----~~~」
佐々木が、更に表情を歪める
「奴がシンハラ語によって
プログラムされた存在であるとすれば、
後は奴を構成しているプログラム列を解析して
それを書き替えてやればいい...」
「そ、そんな事....」
「何だ?」
川越が、ウィルに視線を向ける
「い、いや、確かに、理論上は可能かも知れんが、
だが、かと言ってまずシンハラ語の
プログラム言語を操る事自体簡単ではないし、
それにそれができたとしても、
奴を構成しているプログラムの構造なんて
分かりようが無いだろう------?」
「------それは、アンタも
もう分かってる筈だ」
"ガタッ"
川越は、手に抱えている紫電-§を
ウィルに見える様に掲げる
「シンハラ語の使用...
そして、プログラム解析...
更には、奴をこのサイト内から
強制排出させるためのコマンド....」
「・・・・」
川越は軽々しく口にしているが、
川越が口にする一つ一つの言葉は、
熟練したIT土方でも
簡単に実行できる様な代物ではない。
「そこで、コイツの出番って訳だ。」
"ポンッ"
「------量子コンピュータなのか...」
「フッ」
ウィルの言葉に、川越は
アブゾディカルな笑みを浮かべる
「------広く定義するなら、
その言葉があてはまるだろうな」
【量子コンピュータ】
古い時代、おおよそパソコン黎明期(れいめいき)から
中期に使われていた
旧式のパソコンより更に高性能のパソコンの事で
パソコン自体の使う命令回路や、
記憶領域を大幅に拡張させたパソコンの事で、
この時代において熟練したIT土方達は、
この量子コンピュータの技術を
当然の様に扱っている...
「・・・・」
「------どうした?」
「いや....」
ウィルが何か不審な顔を浮かべているのを見て、
川越はウィルに視線を向ける
「いや、いくらお前の使ってるパソコンが
量子コンピュータだとして....
だとしても、さっきの------、」
「"強制排出"の事か?」
「ああ、いくらお前のパソコンが
量子コンピュータだとしても、
そう易々と、神をこの空間から
追い出す事は出来ないと思うが...」
「------フッ」
「・・・・」
ウィルの言葉に、川越が
シェブディシャルな笑顔を浮かべる
「それも、全て"越数学"の技術を
使いこなす事ができれば
可能になってくる...」
「越数学...」