おめぇ握り寿司が食いてえ

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「吉田と川越」 11OS

f:id:sevennovels:20220130045221j:plain"ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ.....

 

「お、おい------」

 

「-------何だ?」

 

上空から降りてくる"神"をゴーグル越しに見ながら

 

吉田は、後ろにいるウィルの言葉に振り返らず

 

返事をする

 

「あ、あれが、"神"だってんなら、

 

  お、お前ら・・・」

 

「----------、」

 

"ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ....

 

「エクセキューショナー...」

 

「AliCe....」

 

"スゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ....

 

AliCeは体から不思議な光を発し

 

上空から降りてくる神を見上げ

 

その目を大きく見開く....

 

「-------川越。」

 

"チャッ!"

 

「・・・・何だ?」

 

フレイアの腕輪をかざし、川越は

 

紫電零式-§から目を離さず、吉田の言葉に応える

 

「DAO言語....」

 

「そして、"シンハラ語"って事か-------!」

 

"フッ"

 

「---------!」

 

「お、おい! ち、近くまで------」

 

「・・・・・」

 

「関係ない-------!」

 

"カタッ カタタタッ"

 

「な、何やってるんだ-------?」

 

"ジュルッ ウジュジュッ"

 

「(---------!)」

 

"カタッ カタタタタタタタタッ!"

 

「(な、何て速さだ-------!)」

 

"カタタッ! カタタタタタタタッ"

 

ウィルがパソコンを叩いている川越に目を向けると

 

吉田の左腕に身に付けられていた

 

"フレイアの腕輪"が鈍く輝き、

 

その光に導かれる様に川越は

 

すさまじい速さで両手打ちのタイピングを見せる!

 

"カタッ! カタタタタッ!"

 

「は、速いッ--------!」

 

「--------!」

 

"カタタタッ! カタタタタタタタタッ!"

 

「-------ッ!?」

 

「......ウジュ」

 

川越の両手打ちのタイピングに気を取られていた

 

ウィルが頭上を見上げる

 

「シュゥゥゥウウウウウウウッ!!!」

 

「・・・!」

 

空間の頭上に目を向けると

 

"神"と呼ばれた存在は、すでに

 

自分達とほとんど同じ高さまで-----///

 

"シュウウウウウウウウウウ----------ッ

 

「・・・お、おい!」

 

「-------ジュッ! ウジュッ!?」

 

"ボォォォオオオオオオオオ"

 

「か、川越! 何か様子がおかしいぞっ!?」

 

「--------」

 

"カタッ カタタタタタタタタタタッ!

 

「ぱ、パソコンなんて

 

 触ってる場合じゃ-------!」

 

"ブワァァァァァアアアアアアアア"

 

「な、何だ、ありゃぁ--------!」

 

「--------ギギギギギギ....」

 

「・・・・!」

 

「ひ、"光って"------...」

 

「(---------!)」

 

「ジュッ!? ウジュッ!?

 

 ---------ウジュァァァアアッ!?」

 

「(--------!)」

 

「お、おい--------」

 

ウィルが、"神"の方に目を向けると

 

神は激しい光を放ちその体から

 

すさまじい強列な質量を持つ

 

光の渦の様な物を発している------!

 

「こ、攻撃------っ」

 

"ザッ

 

「--------!」

 

"ポンッ"

 

「-------黙ってろ」

 

「お、お前-------!」

 

川越はキーボードを打ち終えると

 

パソコンを抱えそのまま、

 

ウィルの肩を叩き"神"へと向かって

 

無防備で近づいて行く------...

 

"シュウウウウウウウウウウウ-------ッ!"

 

「く、来る-------!」

 

"ビュァァアアッ"

 

「------よ、避けろっ!」

 

体から激しい光を放ち"神"が

 

川越に向かって巨大な炎の様な

 

白い光を飛ばしてくる!

 

「---------、」

 

"ピンッ"

 

「よ------」

 

「(----------...)」

 

"ジュワァァァァァァアアアアアアアアッッッ"

 

「(-------これで...)」

 

"ジュォォォォォオオオオオオオオオオッッ

 

川越は目の前に向かって来た

 

巨大な白い炎を見ると

 

「(--------!)」

 

"ブッ"

 

悠然と口に加えていた煙草を地面に吐き出す

 

"プッ"

 

「(あ-------!)」

 

"ボォォォォオオオオオオオオッッッ

 

"カタッ"

 

「(------------Enter.)」

 

自分の目の前に迫って来る炎を

 

まるで気にする様子も見せず

 

川越は紫電に向かってその人差し指を伸ばす...

 

「これで-------....」

 

"ゴォォォォオオオオオオオッッ"

 

「し、死---------

 

「"DAO"、"Shinhara"、

 

  "バリΘ"---------!」

 

"タンッ

 

「--------!」

 

"バシャァァアアアァァアアアンッッ!!"

 

「--------、」

 

「--------、」

 

「-------...」

 

「........」

 

"ガラッ"

 

辺りに煙が立ち込め、

 

「あ、あ....」

 

"ガララ"

 

ウィルが、存在が放った炎によって

 

空間内に散らばったガレキの中から

 

空間内を見渡すと、

 

"ブワ ブワワ"

 

「----------、」

 

先程まで空間内に見えていた

 

川越の姿が消えている...

 

「--------"ッ!"

 

  か、神はっ!?」

 

「-------...」

 

"ザッ

 

「--------か、川越ッ!?」

 

「・・・・・」

 

"カタ"

 

「(#include <iostream>

 

 using namespace std;

 

 main ("バリΘ")

 

  《පිටවීම》.....<EXECUTION>.」

 

「い、生きてー...」

 

"ガラ...."

 

大量の瓦礫の中から、"川越"が

 

片手にパソコンを抱えながら

 

煙の中から現れる-------、

 

「ど、どうなったんだ-------??」

 

「《強制排出》>>>>感応-------...」

 

「・・・・?」

「吉田と川越」 10OS

f:id:sevennovels:20220129050410j:plain"ビシィッ"

 

「な、何だ------?」

 

"ビシッ ビシシィッ"

 

「(・・・・)」

 

"ズズ ズズズズズズ.....

 

突然、空間の間(はざま)から現れた

 

"神"と呼ばれる異形の形をした

 

"何か"は、空間の裂け目から工房の中に向かって

 

その巨大な体を沈み込ませゆっくりと

 

背中に付いた羽を振るいながら

 

上空から、サイト内の底の方にいる

 

吉田たちの元まで降りてくる...

 

「あ、あれが、"神"なのか-----?」

 

"ジッ ジジッ------!"

 

「??」

 

"ボンッ"

 

「------!」

 

"ガシャァンッ!"

 

「パ、パソコンが------!」

 

"ジジッ ジジジッ

 

「な、何だ-------?」

 

突然、何か不快な耳鳴りの様な

 

音が聞こえたと思うと、

 

ウィルの横にある台座の上に乗せられていた

 

"パソコン"が、派手な音を上げ四離八滅する

 

「な--------!」

 

「吉田ッ!!」

 

「(・・・・・)」

 

「"ジャミング"だっ!?」

 

"ジジッ

 

「ジャ、ジャミング?」

 

「"妨害"っ 電波を放ってるぞっ!?」

 

「(・・・・・)」

 

"分かってる"

 

突然、台座の上に置かれていた

 

パソコンが爆発した事で、吉田、そして川越は

 

それが"神"と呼ばれる今まさに、

 

上空の裂け目から自分達に向かって

 

ゆっくりと近づいてくる存在が

 

仕掛けた物だと言う事を

 

本能(さと)る-----!

 

"ボンッ!"

 

「ら、ラジオが------っ」

 

"ボンッ! ボンッ!"

 

「っ-----! !!?」

 

自分の近くの棚の上に置かれた

 

ラジオが爆発した事にウィルが驚くが、

 

それに続けて部屋の中に置かれていた

 

様々な機械が次々と砕け散って行く!

 

「あ、"アイツ"か-----?」

 

"スゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ....

 

ウィル、そして佐々木は、上空から

 

まるで何事もない様にゆっくりと等速で

 

自分達の元へ向かって降りてくる、

 

"存在"に目を向ける-------!

 

"pi!"

 

「エクセキューショナー...」

 

「AliCe....」

 

吉田が、AISUS-zk9から

 

このサイト内に具現化された、

 

"AliCe"に目を向ける

 

「・・・・」

 

「--------フッ」

 

"戦いたい"

 

「(-------フッ、)」

 

AliCeの様子に、吉田は

 

その意志を感じ取ったのか、

 

パソコンのキーボードに向かって

 

片手を翳(かざ)す!

 

「お、おい! どうするんだ!

 

  このままじゃ、あいつのジャミングで

 

  お前のパソコンも

 

  ぶっ壊れちまうんじゃねぇのか!」

 

"ジジッ! ジジジッ!"

 

「(---------!)」

 

"カタッ"

 

「《ekzekutimi》、

 

  《Urdhëroni mirëkuptim》

 

   これより、エクセキューショナーと

 

   "共装"--------!」

 

「な、---------!」

 

"ビビィッ!"

 

「--------!?」

 

"ガチャンッ ガチャンッ"

 

「-------ッ!?」

 

「《Zot, shkatërrim》

 

 《Bllokimi i valëve të radios》」

 

"ジジジィッ"

 

「-------っ!?」

 

"ボホッ"

 

「な、何だっ!?」

 

"ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ....

 

吉田が、パソコンのエンターボタンを押し

 

AliCeが何かを呟くと、

 

再びウィルの周りにあった

 

テレビが音を上げて吹っ飛ぶ!

 

「ジャミング...

 

  -------"キャンセル"ってとこだな?」

 

「・・・・!」

 

"フッ"

 

吉田の一言に、川越は

 

ラディカルな笑みを浮かべる

 

「・・・・?」

 

「・・・・!」

 

"ジュルッ ウジュッ"

 

「おい、お前らだけで"倒せ"るのか...?

 

 相手は、"神"だろ-----?」

 

"ポンッ ポンッ"

 

「・・・黙って見てろ」

 

「------へいへい。」

 

"ポンッ"

 

自分の好意を無碍(むげ)に断って来た吉田に

 

機嫌を悪くしたのか、佐々木は手に持っていた

 

コルメタタスの魔石を軽く上に放り投げる

 

"ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ...."

「吉田と川越」 9OS

f:id:sevennovels:20220126191811j:plain

「オSユリuアツ-ru

キマタ-hiXソ)ラ

Y?3Hォ#マリv]

6wヌサrケフkハ-

!}ノmfm#RDb

 

「な、何だ、アイツは------!」

 

"ビュルッ ビュルルッ!"

 

"シュゥオオンッ!"

 

空間の裂け目から出て来たその体躯(たいく)が、

 

巨大なビル一つ分もありそうな

 

"何か"

 

は、ゆっくりと空間の裂け目から

 

吉田達のいる空間の底へと向かって

 

降り立ってくる...

 

"ゴゴ! 

 

 -------ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ....."

 

「オSユリuアツ-ru

 キマタ-hiXソ)ラ

 Y?3Hォ#マリv]

 6wヌサrケフkハ-

 !}ノmfm#RDb

 

"ビュルッ ウジュルッ!"

 

「あ、あれが、"神"....?」

 

"ウジュッ ウジュジュッ!

 

見た事も無い様な、巨大な人形(ひとがた)をした

 

白い"何か"が、その裂け目から

 

空間の中へと向かってその体を

 

徐々に吉田たちがいる工房の中へと

 

沈み込ませてくる...

 

「"誘われて"来た様だな....」

 

"ガチャッ"

 

「吉田-------!」

 

「"ログイン"っ! するぞっ!?

 

  川越っ!?」

 

「-------応っ!」

 

吉田、そして、川越は学生服の内側から

 

"パソコン"を取り出す!

 

「お、おい! お前ら、"神"と

 

  戦った事なんてあるのかっ!?」

 

「(・・・・)」

 

吉田は、ウィルの言葉を無視して

 

自分が懐から取り出したAISUS-zk9

 

のキーボードに向かって片手をかざす!

 

「-------pipi.」

 

"カタッ カタタタタタタタタッ!"

 

「(-------!

 

 ミ7ゥ=uバツwgナ

 GPチポn1jビk_

 ヵOjシミd}チJギ

 (8チメヌBスォ)ヵ

 6iyLHソメGFロ-------!」

 

"pi! pipipi!"

 

「よ、吉田!」

 

"ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ.....

 

「("仮装"、感応-------っ!)」

 

「お、おい、"降りて"!?

 

  来るぞっ!?

 

 あ、あれは"神"なんだろうっ!?」

 

「(------------・・・)」

 

"グワァァァァアアアァァァァアアアン....

 

「------っ!」

 

吉田が、自分が手に持っている

 

AISUS-zk9のキーボードを叩くと、

 

吉田のパソコンから光が溢れ

 

そこから吉田のAI(人工知能)

 

""Alice-'AU.II-2O"

 (アリスエーユー・ダブルシングル・ツーオー)

 

が、V-MONET内の空間へ具現化する!

 

「吉田! 

 

 ----------援護するッッ!」

 

川越は、フレイアの腕輪を翳(かざ)すと

 

自分のパソコン、"紫電零式-§(オルデ)"

 

を身構える!

 

"ウジュッ ウジュジュッ!

 

「-------来るぞっ!?」

「吉田と川越」 8OS

f:id:sevennovels:20220126191330j:plain

「ウィルか------、」

 

「・・・・」

 

"トン トン"

 

川越は、無言で地面に

 

煙草の灰を撒(ま)いている男に視線を向ける

 

「・・・・」

 

「見た所、アンタは、

 

  エンジニアか何かの様だが-----...」

 

「-----分かるか?」

 

川越は、地面に落ちている

 

男が先程まで手にしていたハンマーに視線を向ける

 

「そこにそいつがあるって事は、

 

  アンタ今、パソコンか何かを

 

 "叩いて"たんじゃないのか-----?」

 

「・・・・」

 

「・・・?」

 

何故か、悲しそうな表情を浮かべている男を見て

 

川越が表情を僅(わず)かに変える

 

「お前らも、上から来たのか-----?」

 

「....そうだ。」

 

「・・・・だったらお前らも俺と同じ、

 

 "ダークウェブ"って事か...」

 

【ダークウェブ】

 

人工知能、マルサールによって

 

地上のインターネット網の殆どを占拠された

 

人類は、成す術なく人工知能

 

知識の渦(うず)に飲み込まれ、

 

ある者は、インターネット依存症、

 

そしてある者は精神に異常を来たし、

 

そしてある者は通り魔....

 

人類の大半はマルサールが

 

現実空間を支配した影響で家に引きこもり

 

外に出なくなった事により、

 

その生活の糧(かて)を奪われ、まては

 

飢えや困窮に苛(さいな)まさせられ

 

人類は、その数をかなりの速さで減らしていた...

 

「それで、マルサールを倒すために

 

  お前らはわざわざ

 

 ナジュレムのゲートなんかを潜って

 

  このFo2-.NET内に来たって事か...」

 

人類の大半は、マルサールの支配に絶望を抱き、

 

地上は、混沌と破壊の世界に飲み込まれたが

 

その中の極僅かな人間、

 

"IT"と呼ばれる、

 

インターネット技術の専門技術を持った

 

少数の技術者たちは、

 

マルサールの支配に抵抗するため

 

自身を"ダークウェブ"と称し、

 

このV-MONET内の空間に

 

"アバター(仮想人格)"を送り込む事によって

 

V-MONET空間内の

 

どこかに存在する人工知能

 

マルサールの居場所を突き止めようとしていた...

 

"ピンッ!"

 

川越が無表情で吸っていた煙草を

 

真っ白な地面に投げ捨てる

 

「確かに、ダークウェブの連中は....

 

  俺やお前らも含め、

 

  このV-MONET空間内に

 

  来てはいるよ・・・?」

 

「(・・・・)」

 

ウィル、と呼ばれた何故か

 

ドワーフの様な格好をした男が

 

遠い目をしながら何も無い、

 

真っ白な空間の隅に目をやる

 

「・・・大半の奴らは、この先、

 

  "Adiad-QUBE

 (アディアド・キューブ"

 

 と呼ばれる空間にリンクした後、

 

  二度と帰ってこなかった...」

 

「・・・・」

 

「・・・・」

 

"ガサッ"

 

「・・・・!」

 

男は、台座の横に転がっていたハンマーを手に取る

 

「確かにマルサールをどうにかしてぇって

 

 気持ちは分かるが...」

 

"キンッ!"

 

「だが、かと言ってこの先に進んだところで

 

  帰って来れる保証は何も無ェ------!」

 

"キンッ!"

 

自分が手にしたハンマーで台座の上に乗せられた

 

作りかけのパソコンを男が叩くと、

 

ハンマーとパソコンがぶつかり合い

 

甲高い音を上げる

 

「何を勘違いしてるんだか分からねえが

 

  この先の、"Adiad-QUBE"は、

 

  おめぇらの様なヒヨッ子が

 

  簡単に出入りできる場所じゃ

 

 ねぇんだ-----!」

 

"ガンッ!"

 

「・・・・!」

 

男がさらにハンマーで力強くパソコンを叩くと、

 

脇にいた川越の目が大きく見開く!

 

「・・・そんな事は分かってる...」

 

"ザッ"

 

川越の隣にいた吉田が、男に向かって

 

一歩足を進ませる

 

「アンタが、ここで、自分の不遇を嘆(なげ)いて

 

  諦めていようが、俺たちには

 

  ダークウェブとしてマルサールを追う

 

  使命がある------っ!」

 

「------ハッ!」

 

吉田の言葉に、ウィルは

 

侮蔑(ぶべつ)した様な乾いた笑い声を上げる

 

「・・・・」

 

ウィルの様子を気にする事無く、

 

吉田はそのまま言葉を続ける...

 

「確かにこの先、"Adiad-QUBE"に行って

 

  何人もの人間が帰って

 

 来なかったのかもしれない...」

 

「・・・・」

 

"キンッ!"

 

「だが、だからと言ってこのまま

 

 マルサールの奴らに好き勝手この

 

 俺達が住む世界を"自由"にさせる訳には

 

  行かないんだ------ッ!!」

 

「・・・・・!」

 

"ガタタンッ!

 

「!!?」

 

「な、何だっ!?」

 

"ガタッ! ガタタタタタッタッ

 

「--------!!?」

 

"ガタンッガタンッガタンッガタンッ!"

 

「ゆ、揺れてるぞ! さ、佐々木!」

 

「-------!」

 

"グワァァァアアアァァアアアアアァァン...

 

「な、何だ------!」

 

「く、空間が---------っ!!」

 

突然、空間内が激しく揺さぶられる

 

「あ、あれ-------!?」

 

「ビ、"ビオグランテ"------!」

 

「ま、まさか------!」

 

"ズズ...ズズズズズズズ...."

 

突然、激しく揺さぶられていた空間の天井に

 

"裂け目"が浮かび上がる!

 

「---------」

 

"ズズ...ズズズズズ...."

 

そして、それと同時に空間の裂け目から

 

巨大な、人の形とは思えない

 

"手"の様な物が空間の外から

 

部屋の内側に向かって伸びてくる!

 

「ま、まさか-----

 

  あ、アイツは----------!」

 

「か、"神"か-------!」

 

"ズズ ズズズズズズ....."

 

「DOA言語を破って来やがったのか------!」

 

「・・・・」

 

吉田は、目の前で驚いた表情を浮かべている

 

ウィルを見ながら、遥か上空の裂け目から伸びてくる

 

巨大な手に目を向ける------!

 

「"リンク"して来やがったな-----っ

 

  川越ッ!」

 

「-------ッ!」

 

"ザッ"

 

吉田の言葉が終える前に、川越は

 

学生服の内側から、新型パソコン

 

"紫電零式ー§(オルデ)"を取り出す!

 

"ズズ....ズズズズ...."

 

「な、な------!」

 

「"HUCK"か-----?」

 

「------どうやら、その様だな」

 

川越に合わせるように、吉田も、

 

新型パソコン

 

AISUS-zk9"を構える!

「吉田と川越」 7OS

f:id:sevennovels:20220124183558j:plain

"キンッ キンッ!

 

"シュゥゥゥオオオオオオオンッ"

 

「な------!」

 

"ドサッ"

 

突然、目の前のタイトル文字が

 

並べられていた場所から佐々木は、

 

地面の無い空間に飛ばされる!

 

「ぬ、ぬぉぉおおっ!」

 

"ズサササササッ!

 

「------何だ、遅かったな-----」

 

「よ、吉田-----、」

 

地面が無いと思っていた佐々木が、

 

よく分からない、目を凝らせば

 

何となく見える様な、ぼんやりとした

 

地面の上に倒れ込みながら自分の顔の前を見ると

 

そこには、吉田のローファーが見える

 

「な・・・!」

 

「ここが、ダークウェブの

 

 奴らの"サイト"か-----?」

 

「・・・・その様だな」

 

"キンッ キンッ!"

 

「な、何なんだ------?

 

  ここは------?」

 

"キンッ キンッ!"

 

這いつくばりながら佐々木が

 

自分が降り立った地面から

 

部屋の少し先を見渡すと、

 

その先に何かよく分からない、

 

周りに何も無い真っ白な景色の中に浮かぶように、

 

一人の男がハンマーの様な物を携(たずさ)え

 

それを空間の中に浮かんでいる

 

台座の上に乗せられた"何か"に向かって

 

叩きつけているのが見える

 

「-----工房か?」

 

「その様だな・・・」

 

"スッ"

 

吉田は、手にしていたAISUS-zk9を

 

学生服の内側にしまうと

 

少し先の真っ白な無空間に浮かぶ様に

 

無心でハンマーを叩いている男に目を向ける

 

「・・・・ッ?」

 

"キンッ...

 

「------よぉ」

 

「お前らは------」

 

ツナギ、そして眼鏡を掛けた男は

 

吉田たちの存在に気付いたのか、

 

ハンマーを持つ手を止め、振り返る

 

「DOA言語か....?

 

  意外と、ナジュレムのゲートから

 

 潜った空間だってのに、

 

  難解な言語を使うんだな------?」

 

「-------フン、」

 

"ガチャッ"

 

男は、手にしていたハンマーを

 

台座の脇に無造作に放る

 

「ここは、工房か何かか-----?」

 

「------何の用だ?」

 

「おいおい、俺たちは同じ、

 

  ダークウェブの、言ったら

 

  仲間みたいなもんだろう----?

 

  そんなに無愛想な扱いをしなくても

 

 良いんじゃないか?」

 

「-------....」

 

川越の言葉に、男は眉間に皺(しわ)を寄せる

 

「何...このFO-2.NETに

 

  今更来るなんて、ずい分珍しいと思ってな」

 

「・・・今じゃ、このFO-2.NETに

 

 来る人間も、殆どいないって訳か...」

 

「・・・知ってるだろう」

 

"フッ"

 

男の言葉に、川越はフィジカルな笑みを浮かべる

 

「------あんたは、ここで何をやってるんだ?」

 

川越は、台座の脇に置かれたハンマーを見ながら、

 

目の前にいる長い帽子を被った

 

男に向かって口を開く

 

「・・・・」

 

"スッ"

 

「・・・・」

 

"カシャ カシャ"

 

「・・・・使え」

 

「・・・・!」

 

男が繋ぎの胸ポケットの辺りから煙草を取り出すと

 

それを見ていた川越が学生服のポケットから

 

ライターを取り出し、

 

男が咥(くわ)えた煙草に

 

自分のライターの火を近付ける

 

「------フゥゥゥウウウウウ....」

 

「・・・」

 

「・・・」

 

男は、川越が点けた火で

 

煙草を深く肺に吸い込むと、何も無い、

 

白一色の部屋の中の空間を見渡す

 

「今さら、このV-MONETの中に入った所で、

 

  何が変わる訳でも無ェよ...」

 

"トン トン"

 

「・・・・!」

 

男は、人差し指でタバコの腹を軽く叩くと

 

タバコの灰が真っ白な無空間の床に

 

撒(ま)かれていく

 

「ここには、アンタしかいないのか・・・?」

 

「・・・・」

 

「フゥゥゥウウウウウウ-------」

 

川越の隣にいた佐々木が

 

男に向かって喋りかけるが、

 

男は佐々木の言葉に答えず

 

ただ、煙草の煙を深く吸い込み

 

それを空中に向かって吐き出している

 

「・・・・」

 

「・・・・」

 

「・・・・」

 

「フゥゥゥウウゥゥウゥゥウ....」

 

「(・・・・)」

 

何か、別の事を考えているのか、

 

男は空間の中に散らばった煙草の煙を

 

虚ろな目でぼうっと見ている

 

「-----アンタ、名前は何て言うんだ?」

 

川越が、男の態度に焦れたのか

 

男に向かって口を開く

 

「スゥゥゥウウウウゥゥウウウゥウ...」

 

"トン トン"

 

「・・・・!」

 

「俺の名は-----、」

 

タバコの灰を再び地面に撒くと

 

男は吉田たちの方に向き直る

 

「俺の名は、"ウィル"。」

 

「"ウィル"------?」」

 

「・・・このFO-2.NETに来てから

 

  もう、何年にもなるな-----...」

 

「・・・・」

「吉田と川越」 六OS

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"スッ"

 

「おい、そこのテキスト、

 

  かなり長文だから気を付けろ。」

 

「・・・・」

 

川越の言葉を特に気にしていないのか、吉田は、

 

自分の目の前の地面に大量に転がっている

 

シンハラ語で書かれた長文の文字列を跨ぎながら

 

先へと進んで行く...

 

「どうやら、あそこがそうか-----?」

 

「あ、あれがか?」

 

「・・・・」

 

"スッ"

 

先頭を歩いている吉田が指を差した先を見ると、

 

そこにはホームぺージのタイトル文の様な

 

十文字ほどの装飾された巨大な文字の塊が見える

 

「な、何だアレ? 

 

  ま、また文字か?」

 

「-----行けば分かる」

 

「お、おい・・・!」

 

「--------、」

 

「ッ------!」

 

"ザッ ザッ ザッ ザッ"

 

「・・・・!」

 

「あ、-------!」

 

「ウsタソ-キヲY8ムナ1sナP?レマ(a
 カEc(qiウT6rィRVI.ム;=ヒN
 Rx.(キr[Hア^7,5!hmEア>l
 dkエGFーネMヲtケャ%タシ(4.5イ
 (?5&oニ&ョ|キヨdマBOトvoqユ」

 

"ボォォォオオオオオオオオ....

 

「よ、吉田-------、」

 

「(DAO言語か------

 

   初級よりは、多少複雑だが、

 

   この程度なら------!)」

 

「よ、吉田------っ」

 

「------黙ってろ」

 

「!」

 

吉田の様子が何か、

 

タイトル文字の様な場所の前で変わったのを見て

 

佐々木が声を上げるが、

 

脇にいる川越は冷めた目付きで

 

徐々に体が透けて行く吉田を見ている

 

「("電装 完応"-------!)」

 

「おっ、お------っ」

 

「(・・・・)」

 

「なっ-------!」

 

「・・・・」

 

"シュゥゥゥウウウウォォォオオオン...."

 

「き、消えた....」

 

「------俺達も行くぞ」

 

「お、おい、吉田が消えたぞ?」

 

「・・・・」

 

"ガチャ"

 

「・・・・!」

 

佐々木が慌てた様子を見せるが

 

川越はまるで佐々木に気を払う素振りを見せず

 

自分の学生服の内側から新型パソコン、

 

"紫電零式-§(オルデ)"を取り出す

 

「--------、」

 

"ザッ ザッ ザッ ザッ------!"

 

「佐々木・・・・」

 

「・・・・」

 

川越の取り出した新型パソコン、

 

"紫電零式-§(オルデ)"

 

に見とれているのか、それとも

 

何が起きているのか分からないのか、

 

呆然とした表情を浮かべている佐々木に向かって

 

川越が新型パソコンを持ちながら

 

タイトル文字の前で呼びかける

 

「こっちへ来い、"リンク"するぞ」

 

「-------?」

 

「早くしろ、 この空間に置いてくぞ」

 

「------ッ!」

 

慌てて、佐々木は

 

川越の元に向かって駆け寄って行く

 

"ガチャッ"

 

「・・・吉田が解析したおかげで、

 

  "リンク"は、できそうだな-----!」

 

"カタ カタタタタタタタッ"

 

川越は、自分の新型パソコン

 

紫電零式-§(オルデ)を開くと、

 

そこに吉田から飛ばされてきた

 

目の前の巨大なタイトル文字群の

 

プログラム言語を打ち込む...

 

"カタ...カタタタタタタタ!"

 

「な、何を------!」

 

「《電装、完応-------!》」

 

"タンッ!

 

「な-------!」

 

「"リンク"するぞ------」

 

「-------!」

 

「か、川越っ------!」

 

"シュゥゥウウウウウウオオオオオンッ...

「吉田と川越」 五OS

f:id:sevennovels:20220122204439j:plain

「-----よっと」

 

"ヒョイ"

 

「・・・何だ? それは?

 

  "テキスト"か何かか?」

 

「・・・・」

 

歩いている川越が、V-MONET内の空間で

 

目の前に落ちていた、大きな、"文字"の様な物を

 

足を上げて避けたのを見て、佐々木が声を上げる

 

「-------ああ、どうやら..."අ"

 

  シンハラ語の文字テキストか

 

  何かの様だな...」

 

「-----シンハラ語?」

 

V-MONET内の奇妙な、

 

気味の悪い人肌の様な感触をしたまるで、

 

腐った動物の肌が剥き出しになっている様な

 

色をしている、壁や地面に刺さっている、

 

"එ"、"ක" 、"කු"、"ව"、"ණු"、"ර"、"ස"、"නි"....

 

様々な形をした、石で出来た様な

 

文字の塊(かたまり)に佐々木が目を向ける

 

「ああ、このV-MONET内の空間は

 

  元はインターネット網をベースにして

 

  構築された空間だからな...」

 

「・・・・」

 

ジュレムのゲートを潜(くぐ)った先の、

 

この空間についてはあまり詳しくは知らないのか

 

佐々木は川越を黙って見ている

 

「いわば、俺たちはインターネットの

 

  ホームページや、サイトの中を

 

  歩いている様なもんだ。

 

  ・・・たまたま今俺たちが歩いている

 

 この空間がシンハラ語

 

  インターネットサイトの

 

 空間みたいなもんなんだろう...」

 

「・・・・」

 

"ヒョイ"

 

川越は、目の前にある

 

自分の腰の高さほどありそうな

 

"ව"の文字を足で跨(また)ぎながら、

 

吸っていた煙草を地面に投げ捨てる

 

「・・・・」

 

"ザッ ザッ ザッ ザッ...."

 

「・・・・」

 

「・・・・」

 

V-MONET内の奇妙な通路に置かれている

 

テキスト文章の羅列や

 

コード文字の海を見ながら、

 

川越、吉田、佐々木の三人は

 

雑然としたV-MONET内の空間を

 

先に向かって足を進ませていく

 

「とりあえず、ナジュレムのゲートを

 

 潜ったのはいいが...」

 

「-------、」

 

"ピンッ"

 

佐々木の言葉に感心が無いのか、

 

川越は、手に持っていたタバコの吸い殻を

 

自分の目の前の通路に刺さっている

 

"ස"、の文字の脇に投げ捨てる

 

「マルサールを追って、このV-MONET内に

 

  来たのはいいが...

 

  これから先、お前らはどうするつもりだ?」

 

「・・・・」

 

"カタ カタタタタタタタ"

 

佐々木は、先頭を歩いている

 

ゴーグルを付けて新型パソコン、

 

"AISUS-zk9"を無言で叩いている

 

吉田を見る

 

"カタ カタタタタタタ..."

 

「吉田・・・?」

 

「#]{tサL\ナyウ6.!フエォリdヌ*

   0{8oタヤ0ミr[lセNャオウサュhセ

   v%pRqウ_1ァカ%'qサ83Wゥe8
 ュE<マレ?jTnlゥ*;:yRネDァ]
 }ノレモLツキ,L}Gネマル1クfャs{」

 

「・・・・」

 

"カタッ カタタタッ"

 

「(・・・・)」

 

佐々木が、吉田の方を見ると

 

吉田は先程、自分の新型パソコンで

 

この空間内に出現させた、

 

QOZ-Z-2000の隣で

 

ひたすらキーボードを打ち続けている

 

「Hwww/.vo.dd----

 

  アルテ...ビュッケ...

 

 ドゥモス...シングラ...」

 

"ピッ"

 

"カタッ カタタタタッ"

 

「クヒツ}ア87[sレ!WTCf-ISX!
 AC5:T[ア2G*キ<トfSFァAエ{
 uUルヤa:jオ,ソハトFーoエ$dYゥ
 ネDgoヨエC^]%イァnケWBloテル
 phセ#yヲ:<Hツヲトラネツモxフユ>」

 

「p,p,///β、ω...

 

  デュモス・アルケ・ユチ...

 

  AA、@////、O・O。

 

  デテ・ユチ・シングラ....」

 

"カタッ カタタタッ"

 

「・・・・?」

 

何か意味不明な言葉を呟きながら

 

吉田が片手でパソコンを弾くと、

 

吉田の脇にいたAliCe(アリサ)が、

 

奇妙な反応を見せている...

 

「------何やってるんだ?」

 

"ピッ"

 

「------よし。」

 

「・・・・?」

 

「場所は分かったのか?」

 

「------ああ。」

 

佐々木が不可解な表情を浮かべる中、

 

吉田は、川越の言葉を聞きながら

 

自分の新型パソコンの画面の前で

 

軽い笑顔を見せる

 

「この空間、FO-2.NET

 

  と呼ばれる名称の様だが、

 

  このFO-2.NETの

 

  ある程度の解析が完了した」

 

「ほ、ほんとか?」

 

佐々木が、驚いた表情で

 

ゴーグルをしている吉田を見る

 

「ああ...。 この空間は、

 

  マルサールが作り出した空間とは言っても、

 

  マルサールがいる場所からはかなり離れた

 

  このV-MONET空間の

 

 入り口の様な場所だからな...

 

 大したプロテクトも無いし、

 

  ある程度、基本的な越数学の知識、

 

 そして技術があればこの空間内の

 

 大体の構造は分かる」

 

「オッネyVcbモ$)*6キロツチrgィt
 ツイニlォEレBヌィ*Kラセ%4エノJc
 3ロtタdヤf5ィラlP$qヘトワメxシ
 -Vオセ4,R,{XyW%ロErッホY"
 e5キィ?Gネie7f|1gメnルhNゥ」

 

"ウィィィィィィ"

 

「・・・・!」

 

佐々木は、吉田の隣に立っている

 

目から奇妙な青い光を発光させている

 

"AliCe"に目を向ける

 

「どうやら、この先に、

 

  "ダークウェブ"の人間がいる

 

  "サイト"がある様だ...」

 

「さ、サイト?」

 

「・・・・」

 

"パタッ"

 

吉田は作業が完了したのかゴーグルを外し、

 

パソコンを閉じる

 

「このV-MONET内の空間には

 

  俺達と同じ様に、マルサールを追って

 

  何人もの人間が入り込んできている...」

 

「"ダークウェブ"って奴だな」

 

"ダークウェブ"

 

地上、そして、インターネット網の大部分を

 

支配された人類は、数少ない、

 

越数学の技術を使いこなせる者を人類から選別し、

 

その集団を総称して

 

"ダークウェブ"と呼称する様になっていた...

 

「じゃあ、このFO-2.NETの中に

 

 人がいるってのか?」

 

「・・・・」

 

"ニッ!"

 

「・・・・!」

 

ゴーグルを外した吉田は

 

シニカルな笑みを浮かべると

 

自分の手にしている新型パソコンに目を向ける

 

「"コイツ"で解析した所によれば
 
 ここから程近い場所...

 

  歩いて十分程度の場所に、どうやら

 

  人が居住していると思われる

 

  "サイト"がある様だな...」

 

「そ、そんな事分かるのか?」

 

「まあ、これも越数学の技術の一つ、

 

 ってトコだな」

 

「・・・・」

「吉田と川越」 四OS

f:id:sevennovels:20220122200331j:plain

「だが、そうは言っても"力"が使えなきゃ

 

  パソコンが使えたとしても、

 

  それは、絵にかいた餅ってヤツじゃねえか?」

 

「・・・・」

 

"ピッ ピピッ"

 

"カタッ カタタタッ!"

 

「・・・・」

 

吉田が、AISUS-zk9のキーボードを叩くと、

 

パソコンの光に照らされて

 

ゴーグルをつけた吉田の顔がボウッと輝く

 

「確かに、その通りだな------」

 

"カチャ"

 

吉田は、ゴーグルを外しながら

 

佐々木が手にしているコルメタタスの魔石を見る

 

「いくら、プログラム言語を

 

  使いこなせると言っても、

 

  それは、旧時代の話だ...」

 

「一昔前だったら、

 

  プログラミングの知識だけで

 

  V-MONET内を

 

  探索する事ができたんだがな...」

 

"チッ"

 

川越が、舌打ちをしながら煙草を地面に投げ捨てる

 

「("力"か-------、)」

 

21××年-------、

 

人類の操る、インターネット空間の殆どを

その支配下に置いたマルサールは、

そこから更に、自動学習機能により

 

越数学と呼ばれる新たな概念の数学を創り出し

 

それを利用して旧来的な、

 

数字と文字を操る言語だけの世界より

 

更に別の世界、"V-MONET"と呼ばれる

 

仮想空間を作り出し、

 

マルサールはその仮想空間内から

 

現実世界を支配する様になっていた...

 

「奴、マルサールは

 

  様々な数学の公理や法則とは別に、

 

 更に、生物の感情や自然の状態を

 

  記号化する事によって

 

  新たな概念、越数学と呼ばれる概念を作り出し

 

  このV-MONET空間の

 

  プロテクトをより強固にした...」

 

「その一つが、

 

 "コイツ"だろ?」

"ポンッ ポンッ"

佐々木が手の平に握っていた

 

コルメタタスの魔石を軽く上に放り投げながら

 

座っている吉田を見る

 

「そうだ・・・

 

  このV-MONET空間で

 

 マルサールの手による様々な

 

  プロテクトを破るためには、

 

  ただ、数字や文字の羅列を解き明かすだけでは

 

  このV-MONETに掛けられたマルサールの

 

 プロテクトを破る事はできない...」

 

「-----よっと」

 

"パシッ"

 

佐々木が、自分が空中に放り投げた

 

コルメタタスの魔石をキャッチする

 

「佐々木が身に付けている

 

  スパイリーの足飾り...

 

  そして、川越のフレイアの腕輪...」

 

「-----こいつらが、

 

  この先役に立つかも知れないって事か?」

 

「-----おそらく、そうだな」

「吉田と川越」 三OS

f:id:sevennovels:20220120140426j:plain

 

「これから、どうするつもりだ-----?」

 

マルサールが支配する、

 

マルサールが作り出した仮想構築空間

 

"V-MONET"の中を歩きながら

 

吉田、川越、そして佐々木の三人は

 

気味が悪い、まるで獣の肌が剥き出しになった様な

 

V-MONET内の通路を歩く-----

 

「-----ちょっと待て」

 

"ピッ"

 

吉田が、床に座り新型パソコン

 

"AISUS-zk9"、

 

のデスクトップ画面を立ち上げる

 

「見ろ-----?」

 

「ドット解析か------?」

 

「ああ。」

 

川越が、吉田の新型パソコンを覗き見ると、

 

そこにはドット絵の様な地図が表示されている

 

「"ドット"か....

 

  今時、IT土方でもそんなの使う奴は

 

  まずいないぞ------?」

 

「--------」

 

"カタ カタタタタタタ"

 

川越は、自分の後ろで自分の新型パソコンを

 

覗き見ている佐々木の言葉を無視して、

 

軽快なリズムでキーボードを弾(はじ)き上げる

 

「------とりあえず、俺たちは今

 

  ナジュレムのゲートを潜って

 

  そこからマルサールの創り出した

 

  仮想空間、V-MONETの中に

 

  侵入してきたわけだ...」

 

「ピッ ピッ」

 

吉田の指の動きに応える様に

 

新型パソコン内のドット絵が、

 

その表示を変化させる

 

「マルサールがいるこの世界の

 

  コア(核)に入るためには、V-MONET内の

 

 構築回路の一つであるFO-2.NETより、

 

  ナジュレムのゲートを潜る方が

 

  早いからな...」

 

川越が、佐々木が手にしている

 

コルメタタスの魔石に目を向ける

 

「だが、かと言って

 

  肝心のマルサールの居場所が分からなきゃ

 

 どうしようもねぇだろ?」

 

"ピッ ピッ"

 

「("片手"打ち------!)」

 

佐々木の言葉を聞いて、吉田は

 

自分のパソコンのキーボードから右手を外し、

 

反対の左手だけで巧みにキーボードを弾く!

 

「・・・とりあえず、マルサールの体内に

 

 忍び込んだと言っても、

 

 このV-MONET内の空間にはマルサールによる

 

  数多くの

 

 "プロテクト"が掛けられている...」

 

「プロテクトが掛かってたら、

 

  この先に進むのも、一苦労って訳だ...」

 

"カチャ"

 

「そこで、こいつって訳だ!」

 

"ブワッァアアアアアアアア"

 

「-------!」

 

吉田が、AISUS-zk9のエンターボタンを

 

リズムで弾(はじ)くと、パソコン内から

 

光が浮かび上がる!

 

「そ、そいつは------!」

 

「こいつは、

 

 "Alice-'AU.II-2O"
 (アリスエーユー・ダブルシングル・ツーオー)

 

  プロトタイプの、AIだな...」

 

「あ、アリ...

 

 -----何だって?」

 

「-------どうした?」

 

吉田のAisus-zk9の画面から突如、

 

仮想空間内に具現化された

 

"アリサ"を見て

 

佐々木が眉を潜(ひそ)める

 

「これから人工知能と戦おうってのに、

 

  お前は、人工知能の力を

 

  借りるってのか-----?」

 

「-----背に腹は代えられん」

 

佐々木の表情が曇るが

 

吉田は飄々(ひょうひょう)とした顔付きで

 

パソコンから浮かび上がった

 

"アリサ"に目を向ける

 

 

「この、V-MONET空間は

 

  仮想空間だ...

 

  ブログラム言語、そして"越数学"

 

 この二つを使いこなす事ができれば

 

  大抵の物質は

 

 具現化する事ができる-----、」

 

「・・・・なるほどな」

「吉田と川越」 二OS

f:id:sevennovels:20220119185943j:plain

《ナデリろせぞてヰKノ
 }ロ千n\セヱリョUエ
 ャWま^n淵マ#ぱぇゆ
 カi=ロマp'っ古らヤ
 ゅ,CXマGゆユやO-----》

《電装、完応(かんのう)--------》

"シュゥゥゥオオオオオオオン-------

「・・・・」

「(還ってきたな------)」

「分からねぇ-----」

「-----何がだ?」

ゲートの中の亜空間を空中に浮遊しながら

先へと進んで行く佐々木を、

学生服を着た川越と吉田は後ろから見ている

「いや、何だっておめぇらは

  わざわざ、マルサール何かを狙って

  この、ナジュレムの

  ゲートを潜ったんだ-----?」

"ピン"

すでに二十歳を越えているが、

何となく学生服を着ている吉田は

佐々木の言葉に吸っていた煙草を地面に投げ捨てる

「奴の使うプログラム言語------、」

「एल्डिया(エルデア)言語の事か?」

「・・・・ああ、そうだ...」

-21××年-

発達しすぎた人工知能は、

遂に人間の支配の軛(くびき)から解き放たれ

"マルサール"と名乗る、

人工知能体の一群は

人類をその支配下に置くため

世界のネットワーク網を操り

人類たちに攻撃を仕掛けていた...

「こんな世界で奴ら(人工知能体)に

  逆らうったって、そいつは

  無駄なことじゃねぇのか?」

「そうかもな------、」

川越は、学生服の襟(えり)を正す

「すでに、この、

 V-MONET
 ※(マルサールが作り出した仮想空間)

  は、現実の世界をも支配し

  俺達人類は、すでに絶滅寸前だ...」

「・・・・・」

吉田は手に持っている

新型パソコン

"AISUS-zk9"

に目を向ける

「どうやら、奴らも人間全部を

  殺そうなんて思ってない様だ。

  ・・・

  だったら適当に奴らの側から離れて

  残りの人生を過ごした方が

  "楽"ってもんじゃねぇのか?」

「-------NICOSだ...」

「ニコス?」

川越が、フレイアの腕輪をかざしながら

佐々木を見る

NICOSとは、新型

  インターネット構築概念だ」

「・・・そいつが何なんだ?」

「この、NICOSの概念は、

  マルサールと対になる概念だ-----」

「-----だから?」

佐々木が、コルメタタスの魔石を握りしめ

川越を見る

「奴ら人工知能がどれだけ

 俺達に対して攻撃を仕掛けようと、

  俺たちに

  "NICOS"が有る限り

  俺たちは奴に屈する事はない-----!」

「・・・同意だ」

「吉田・・・」

川越の言葉に、吉田はシニカルな笑みを浮かべる

「つまり、お前らは、

  "馬鹿"って事か?」

「・・・・」

「笑いたければ笑え-----。

  だが、NICOS、そして

  この俺の

 "AISUS-zk9"がある限り、

  奴ら..."マルサール"には、

  好きにさせる事は無い------!」

「・・・・!」

新型パソコンを手にした吉田を見て

佐々木の体に、震えが走る------!

「吉田と川越」(新)

f:id:sevennovels:20211221162017j:plain

「吉田と川越」

 

第一話

 

「ここが...」

 

「"ゲート"って事か?」

 

魔界に繋がるゲートを発見した俺と川越は、

 

この軽井沢にあるマルサールの存在を追って

 

ようやくここまでたどり着いた

 

「ッ!・・・」

 

「痛むのか?」

 

ゲートを閉じるためとは言え

 

今まで"力"を解放させ続けてきた結果

 

俺の体には魔走りが走り、

 

激痛で寝る事もままならなくなっていた

 

「大丈夫だ、川越---」

 

川越の心配を他所(よそ)に、

 

俺は、目の前にあるゲートを睨みつける

 

「本当に、こいつが、"奴"なのか?」

 

「さあな」

 

"ピンッ"

 

川越は、吸っていた煙草を地面に投げ捨てると

 

学生服の襟(えり)を正す

 

「フハハハ!」

 

"ジャキッ"

 

空間の裂け目から聞こえてきた声に

 

剣を構える!

 

「吉田! そして川越!

 

  貴様らよくもここまで

 

 辿り着きおったな---」

 

「佐々木ッ!」

 

「おっと、俺に"力"を使おうとしても

 

  無駄だぞ?」

 

フレイアの腕輪をかざしながら

 

"力"を開放させようとしている川越を見て

 

俺は、両手を広げる

 

「無駄だ---

 

 奴の足を見ろ」

 

「あ、あれは--」

 

"スパイリーの足飾り"

 

川越が、フレイアの腕輪を持っているなら

 

今、佐々木の足元にある

 

スパイリーの足飾りには

 

"力"を開放させることはできない---

 

「・・・何の目的だ」

 

「フン」

 

上空を浮遊している佐々木を

 

恫喝(どうかつ)するように俺は声を発する

 

「貴様ら、ナジュレムのゲートを潜(くぐ)り、

 

 魔界へと行くつもりだろう?」

 

「・・・・!」

 

「ふははっ 

 

  隠したところでムダだ!

 

  お前たちのやる事など、お見通しよ」

 

「そ、そいつは---」

 

上空に浮遊している佐々木が

 

懐から緑色に光った石を取り出す

 

「コルメタタスの魔石---」

 

「フンっ」

 

「って事は、お前、

 

  俺たちの味方になるって事か?」

 

「スゥウウウウウ」

 

上空に浮遊していた佐々木が

 

俺達がいる地上までゆっくりと降りてくる

 

"ストン"

 

地面に降り立った佐々木は

 

川越、そして俺を睨みつける

 

「貴様ら、"解放者"としての

 

  資質は頼りないが、

 

  "力"を使える事だけは認めよう」

 

「・・・だから何なんだ?」

 

佐々木はコルメタタスの魔石を懐へとしまう

 

「お前らに従うのは癪(しゃく)だが、

 

  俺もマルサールには借りがある。

 

  ・・・このゲートの中に

 

    ついて行ってやろう」

 

「おい」

 

川越が、こっちを見てくる

 

「ヤツは、信用できるのか--」

 

「・・・・」

 

確かに、今まで何度も俺達と

 

激しい戦いを繰り広げてきた佐々木だ。

 

それが、今さら手の平を返したように

 

俺達と同行するとは---

 

「どうした? お前は"コイツ"

 

  の力がいるんじゃないのか?」

 

「("スパイリーの足飾り"---)

 

  ・・・仕方ない、奴も一緒に、

 

 亜空間の中に入るぞ」

 

「よ、吉田っ」

 

「ガハハッ そうこなくっちゃな

 

  頼むぜ? 吉田? 川越?」

 

佐々木をパーティーに加え、

 

俺と川越はゲートの装置を起動させる...

「血の家」 八十六雫

f:id:sevennovels:20211220185726j:plain

"チャポンッ"

 

「本当に、これで良かったのか-----?」

 

「・・・・」

 

"ブンッ"

 

叶生野の屋敷から、車を少し走らせた場所、

 

山中にある明媚な場所で、征四郎は目の前の

 

湖面に向かって拾い上げた小石を放り投げる

 

"キィィィィッ!

 

「・・・・?」

 

「ガチャ」

 

二人が立っている湖の側に、

 

黒いセダン型の車が停まりその中から

 

二人の男が降りてくる

 

「------善波御代!」

 

「・・・おいおい、その呼び名は止めてくれんか」

 

善波は、車から降りて来た禎三、

 

そして総司に向かって大きな笑みを浮かべる

 

「何を言ってるんだ? 昔から、

 

  この叶生野では御代になった者を

 

  "御代"と呼ぶのは、当然の慣わしだろう?」

 

「そ、それはそうなんだが....」

 

総司の言葉に、善波は頬の辺りを人差し指でかく

 

「・・・・」

 

"チャポンッ"

 

「おい、征四郎君-------」

 

「・・・・」

 

湖に向かって石を放り投げていた征四郎が、

 

総司と禎三の方に向き直る

 

「------まさか、君が御代の座を

 

  放棄すると聞いたときは

 

  俺も驚いたが-------」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「あ、アンタ達、どうやってここに------」

 

「ああ」

 

叶生野の理事達が集まる、

 

理事総会が開かれている一室で

 

征四郎は、床にへたり込んでいる雅を見下ろす

 

「-----お前はどうやら、あの橋の前に

 

  自分の部下を呼んで

 

  俺達をあの場所に釘付けにする

 

 つもりだったらしいが...」

 

「ど、どうやって、あの場所から------っ」

 

「・・・・」

 

「ガチャ」

 

「・・・・!」

 

「征四郎!」

 

「------征由...」

 

「な-------、」

 

「な、なんて-----!」

 

"カッ カッ カッ カッ....

 

「ひ、人を呼んでたの------」

 

征四郎の兄、征由が、部屋の入り口から

 

征四郎たちの元まで歩いてくる

 

「・・・・」

 

征四郎は、雅を見下ろす------

 

「あの、鳰部の館にいたお前の態度が

 

  どうも妙だったからな------」

 

「ど、どうやって、外と連絡を取ったのっ」

 

鳰部の館で、雅は、征四郎の携帯を借り受ける事で

 

征四郎と外部の連絡を取れない様にし、

 

征四郎たちを鳰部や鷸原の中州に

 

置き去りにするつもりだった

 

「-----単純だ。 俺は、初めから

 

 お前を信用していなかったし、

 

  お前の態度が妙なのにも気付いていた..

 

  だから、俺はお前に携帯を渡す前に、

 

  ここにいる征由に連絡を取り

 

  二瀬川に人を呼んだだけだ------」

 

「・・・・」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「-----とりあえず、雅のアテが

 

 外れたって事だな。」

 

「雅のヤツ、理事総会でお前らがいない所で

 

 何かとそれらしい理由を付けて、

 

  自分が御代になるつもりだった様だが...」

 

「・・・・」

 

"チャポンッ"

 

征四郎は、二人の言葉に興味が無いのか、

 

ただ、目の前の水辺に向かって

 

無言で小石を放り投げている

 

「ただ、それにしても------、」

 

"ザッ"

 

善波が、石を投げている征四郎に一歩歩み寄る

 

「雅を御代から降ろして、

 

  そうなれば、君は、親父の遺言書によれば

 

  次の御代になる筈だった------!」

 

「・・・・ふっ!」

 

"バチャンッ!"

 

征四郎が、思い切り振りかぶり

 

手にしていた小石を水面に向かって叩きつける!

 

「だが、君は、あの場で

 

  御代になる事を放棄し

 

  御代の座を俺に譲った-------!」

 

「・・・・」

 

「何でなんだ------?

 

  征四郎くん------?」

 

「・・・・」

 

"バサッ"

 

「・・・・」

 

「お、おい、」

 

征四郎は、自分の足元に置いていた

 

スーツの上着を拾い上げると善波の横を通り抜け

 

湖から、どこかへと向かって歩いて行く...

 

「お、おい!?」

 

「・・・・」

 

"ザッ"

 

スーツの上着を片手にして背中に抱えながら

 

善波の方に向き直る

 

「------元々、事の起こりを考えれば、

 

  尚佐御大が、次の御代を自分の出身である

 

  鴇与の家に継がせようとした事が

 

 今回の騒動の始まり...」

 

「だから、どうしたんだ?」

 

「元々、それさえ無ければ、

 

  俺に御代になる資格

 

 なんて在りはしない-----」

 

「そ、それはそうかも知れんが...」

 

"ザッ"

 

征四郎が、流れる、一筋の雲を見上げる

 

「叶生野の"血"------、

 

  そして、鴇与の"血"------...

 

  二つの血の違いが、今回の

 

 御代の争いを引き起こした...」

 

「・・・・」

 

"ザッ"

 

「二つの血は、流れとなり、

 

  そしてその流れはやがて、

 

  一本の大きな川となり

 

  どこまでも続いて行く...」

 

「・・・・」

 

「血の川の流れが、最後に辿り着いた家は

 

  "血の家"として、

 

  どこまでも続いて行く-----」

 

「・・・・!」

 

"ザッ ザッ ザッ ザッ--------

 

「血の家」 ~fin.

「血の家」 八十五雫

f:id:sevennovels:20211220185604j:plain

「む、無効だと-------?」

 

「な、何を言ってるんだ? 善波?」

 

「・・・・」

 

善波は、部屋の中にいる理事たちの言葉を

 

まるで聞く事も無く、部屋の中にいる全員を

 

壇上から見下ろす-------

 

「単純な話だ------

 

  いくら、多数の理事たちの可決によって

 

  本会の議案である

 

  "御代"の座が可決しようと、

 

  その可決に関わる過程で

 

  重要な瑕疵や不正があれば

 

  その決定は可決から無効に変わる------

 

  当然の理屈だろう?」

 

「---------!」

 

「------退け」

 

壇上にいる善波の事を目を見開いて

 

呆然と見ていた雅を押しのけて、

 

藤道會総帥、藤道 仁左衛門

 

理事達をかき分け

 

善波の元へとやってくる------

 

仁左衛門の祖父さんか」

 

「-----善波、キサマ------!」

 

"コンッ コンッ"

 

仁左衛門は、自分の隣にある円卓の上を

 

ステッキで叩きながら、

 

"ギロリ"と善波を睨みつける

 

「何を考えてその様な訳の分からん事を

 

  言ってるのか分からんが...

 

  すでに今回の理事会は雅を御代にする事で

 

  決定しておる-------、」

 

「何だ、アンタは、雅と繋がってるのか?」

 

「-----キサマッ!」

 

「と、藤道理事!?」

 

「ッ------」

 

「さっきから、この総会を見ていたが、

 

  アンタは終始総司や禎三に対して

 

  強く当たってたじゃないか・・・?」

 

「・・・・・」

 

"バッ バッ"

 

仁左衛門は、善波の言葉に取り合わず、

 

着ている着物の前を直す

 

「-----お前にどういう理屈や理由が

 

 あるかは分からんが、

 

  "決定"は、"決定"------

 

  今更、キサマの様な小僧が出て来た所で

 

  今回の決定は覆る物ではない------!」

 

「・・・・」

 

"ガンッ!"

 

「------ッ!?」

 

仁左衛門が思い切り手にしていたステッキを

 

机の上に叩きつける!

 

「貴様の様な、不肖の分際の跡目を

 

 放棄した身分の小僧がっ!?

 

  今更この叶生野の家を

 

 かき乱すでは無いわっ!」

 

「と、藤道会長っ!?」

 

「.....るな」

 

「--------?」

 

「ぜ、善波?」

 

善波が、仁左衛門に向かって何かをボソリと呟くと

 

善波の脇にいた禎三が驚いて目を剥く

 

「今、キサマ、何と-------!...」

 

「-------"ふざけるな"っ!

 

  と言ったんだ!?

 

  この老いぼれっ!!?」

 

「-------!!?」

 

「ぜ、善波っ!」

 

"バッ"

 

善波は、自分の体を押さえて来た

 

禎三の腕を振りほどく!

 

「き、キサマこのワシに向かって

 

 何と言う.....っ」

 

「・・・・」

 

"カッ カッ カッ-------

 

「そもそも、今回の御代------、」

 

「・・・・・」

 

壇上から自分の元に歩み寄ってくる善波を

 

仁左衛門は、ただ見ている

 

「前代、尚佐の意志では

 

  御代の跡目は征四郎になる予定だった...」

 

「・・・・」

 

"カッ カッ カッ カッ-----...

 

「それを、貴様ら他の兄弟たちは、

 

  卑劣な手を使い、征四郎くんを

 

 貶め様としただけではなく...」

 

"カッ カッ カッ カッ------」

 

「剰え、この期に及んで貴様らは

 

  卑怯にも手を組んで結託し、

 

  この場にいる理事達を騙して

 

  "御代"の座を

 

 手に入れようとしている------っ!」

 

"ガッ!

 

善波が、仁左衛門の前に立ち、

 

仁左衛門を真っすぐ睨みつける!

 

「-----それがっ! 正しいかっ!?

 

  貴様らの考えでっ

 

  この叶生野の血が汚せると思うかっ!?」

 

「・・・・!」

 

「・・・・」

 

「・・・」

 

「・・・・」

 

「・・・・」

 

「------....」

 

善波の恫喝に言葉を失くしたのか、

 

部屋の中にいた理事達が言葉を失い

 

部屋の中が沈黙に包まれる...

 

「な、でも、ここに、

 

  遺言書が-------

 

  ッ!?」

 

「ガチャ」

 

「-------せ、征四郎っ!?」

 

「雅--------!」

 

"カッ カッ カッ カッ....

 

「お前は---------!」

 

征四郎は、自分の脇に、

 

黒いスーツを着た男を従えながら

 

部屋の入り口から雅に向かって

 

目を反らさず、雅だけを見て

 

理事達の横を通り抜けていく-----

 

「な-------!」

 

"ドサッ"

 

「み、雅さま-----!」

 

腕を掴んでいた雅の部下の襟首を放ち、

 

征四郎は男を部屋の床に叩きつける!

 

「・・・お前のその遺言書が、

 

  お前がこの総会に合わせて

 

  偽造した物だと、

 

  こいつに全て吐かせたぞ・・・」

 

「な、な------、!」

 

「ゆ、遺言書が偽造------?」

 

「じゃ、じゃあ、御代の座は------?」

 

「・・・・」

「血の家」 八十四雫

f:id:sevennovels:20211219133607j:plain

「安永理事-----、

 

  私の質問に答えて

 

 頂けないかしら-----?」

 

「それは-----っ...」

 

雅の言葉に、総司の言葉が詰まる

 

「この場所に姿を現さない、

 

  そして、御代たる正当な権利も無い----

 

  そんな征四郎を推して

 

  あなたは、なぜ、今、この私に向かって

 

  御代の権利を放棄させるような事を

 

 仰ってるのかしら------?」

 

「・・・・」

 

「そうだっ ここは誰かの失策を論う場ではなく

 

  投票をする場所だっ!?

 

  ------場を弁えろ!」

 

「・・・・!」

 

"カンッ"

 

「------小僧が」

 

仁左衛門が、総司を睨みつけながら

 

手にしていたステッキで机を叩く

 

「・・・・」

 

「お答え頂けないようでしたら、

 

  理事総会を先へと

 

 進まさせてもらいます------」

 

"キュッ キュッ"

 

雅は、自分の部下がホワイトボードに書かれた、

 

征四郎の名前の隣に縦線を書くのを横目に

 

再び、壇上へと戻って行く....

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「雅理事です------」

 

「雅さんに、一票------」

 

「That's Miyabi-------」

 

「・・・・」

 

"スッ"

 

円卓に並んでいた、二十名ほどの

 

理事たちの最後から二番目、

 

「・・・・」

 

"スッ"

 

「それは、私、と言う事ですか?」

 

「・・・・」

 

世界に巨大なシェアを誇る

 

Electronic.E.o.の

 

ロバート・C・レイヴァーが、

 

雅に向かって指を差し、無言で頷くと

 

円卓を囲んだ二十数人の最後の理事、

 

アイザー.Incの

 

シュタイングレナーに向かって雅がマイクを傾ける

 

「それでは、最後の理事、

 

  シュタイングレナー理事-----。」

 

「------Hey.」

 

シュタイングレナーは自分の席の後ろに控えていた

 

通訳に向かって手を差し出すと、

 

「シュタイングレナー理事は、

 

  "ミヤビ"理事を、次の

 

  "Midai"に

 

 したいと言っておりマス-----」

 

「・・・・そうですか」

 

サングラスをした、通訳の言葉に雅が答える

 

「I recommend Miyabi to the next generation.

 

  Considering the will and

 

  the management skills of Director Miyabi,

 

  the next representative of the Tono Group

 

  should be director Miyabi.

 (私は、雅御代を次の御代に推薦する。

 

  遺言書、そして、雅理事の経営手腕を考えれば

 

  次の叶生野グループの代表は

 

  雅理事がなるべきだ)」

 

「------ありがとうございます」

 

"キュッ キュッ"

 

シュタイングレナーの

 

通訳の口から出た言葉を雅が聞くと

 

ホワイトボードの脇に立っていた

 

黒いスーツを着た雅の部下が

 

三つ並んだ"正"の字の横に並んだ

 

"一"の字の下に縦線を書き加える

 

「・・・これで、全ての理事の投票が

 

  集まった様です------」

 

「そ、総司-----!」

 

「・・・・」

 

雅は、ホワイトボードに書き込まれた

 

いくつかの"正"の字を見ると、

 

円卓に向かって振り返り、マイクを手に取る

 

「それでは、投票の結果、

 

  次の御代を決める今回の投票結果は、

 

 私、羽賀野 雅、十七票...

 

  そして、鴇与 征四郎 二票、

 

  更に、叶生野 尤光 三票....

 

  圧倒的多数を持ちまして、

 

  本叶生野理事総会の次の御代は

 

  この羽賀野 雅が、

 

 就くことになります------!」

 

「おおおっ!」

 

「雅理事-----、

 

  いや、"雅御代"か-------?」

 

"パチ パチ パチ パチ"

 

「ありがとうございます------」

 

「お、おい、総司-------、」

 

「・・・・・」

 

「それでは、本会の議題の案件である

 

  次の御代が定まりましたので、

 

  本会は、これにて

 

 閉会とさせて頂きます------」

 

「尤光副会長ではなく

 

  雅理事が次の御代になるとは------、」

 

「Hey! Miyabi! congratulation!

 (雅! おめでとう!)」

 

「雅さん!」

 

「雅理事!」

 

「お、おい、これで終わりか------」

 

「・・・・」

 

理事たちが雅に向かって祝辞を述べるために

 

席を立ち、雅に向かって歩み寄って行くのを

 

禎三、そして総司は、

 

離れた席で呆然と見ている...

 

「Hey! Miyabi! You're fabulous!

 (雅! 驚いたよ! 最高だ!)」

 

「-----彼は何と言ってるの?」

 

英語が話せない雅に向かって、

 

シュタイングレナーが英語で話しかけてくるのを

 

雅は薄っすらと笑みを浮かべながら

 

シュタイングレナーの後ろに立っている

 

通訳に尋ねる

 

「ええ、シュタイングレナー氏は

 

  一言、ミヤビMidaiに、「おめでとう」、

 

  と------!」

 

「Miyabi! I never thought

 

  you would be Midai!

 

  Miyabi!? Miyabi!?

 (雅! まさかあなたが御代になるなんて

 

  思いもしなかったよ! 

 

 雅!? 雅!?)」

 

「え、ええ-----?」

 

文化が違うのか、派手に雅に向かって

 

喜んだような仕草で肩を掴んできている

 

シュタイングレナーに、雅も、

 

満更でも無い様な素振りを見せる

 

「Miyabi----! Miyabi!?

 

  You tell me some?

 (雅----! 雅ッ!?

 

  教えてくれないか!?)」

 

「-----彼は、何と言っているの?」

 

「ええ、「一つ、聞きたい事がある」

 

  と-----」

 

「聞きたいこと--------?」

 

"スッ"

 

「・・・・!」

 

雅が笑顔を浮かべながら

 

シュタイングレナーを見ていると

 

シュタイングレナーは掛けていたサングラスと

 

ターバンの様な帽子を外し雅に目を向ける

 

「-------ジャンッ!?」

 

「ミヤビ、ミダイのザをダマしてシェアするのは、

 

  フェアじゃないよ------!」

 

「まったく、お前みたいのを

 

  邪(よこしま)と言うんだろうな...」

 

"スッ"

 

シュタイングレナーの隣にいた、

 

終始、無言を貫いていた、

 

ロバート・C・レイヴァーがサングラスを外す

 

「ぜ、善波兄さん!?」

 

「な、何だっ!?」

 

「ぜ、善波審議委員長!?」

 

「な、何で-------っ!」

 

「------何で、とは

 

 どういう意味だ-----?」

 

"ベリ"

 

善波が、口髭を剥がしながら、雅を見る

 

「あ、あなたちは、橋の手前で----

 

  --------ッ!」

 

「"橋の手前で"、何だ------!?」

 

「そ、それは------!」

 

「ぜ、善波ッ!?」

 

「・・・・・!」

 

「------総司。」

 

総司が慌てた様子で善波の元へ駆け寄ってくる

 

「な、何でお前、そんな恰好------?」

 

「・・・ああ、この中に入るには、

 

  雅の部下の監視の目が厳しくて、

 

  それで、シュタイングレナーや

 

  レイヴァーと話を通してこの中に入った」

 

「な・・・・」

 

「ど、どういう事だ?」

 

「な、何で善波審議委員長が

 

  あんな格好をしてるんだ-------?」

 

ザワ

 

  ザワ

 

ザワ

 

"コッ コッ コッ コッ....

 

「・・・・」

 

「-------ッ!?」

 

部屋の中が、騒ぎに包まれる中、

 

善波が雅の横を通り抜け

 

少し高くなった壇上に立つ

 

「どうやら、理事総会の議案である、

 

  "御代"の決定については、

 

  すでに可決した様だが-------、」

 

「な、何だ?」

 

「-------善波審議委員長?」

 

「・・・・」

 

善波は壇上から部屋の中に集まっている、

 

理事たちの視線を一身に浴びている事を

 

まるで気にせず言葉を続ける

 

「私、叶生野 善波当理事総会審議委員長は、

 

  今回の、理事総会の可決を、

 

  無効とする事を宣言する------!」

 

「・・・・!」

 

「血の家」 八十三雫

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「そうなると、だ-------」

 

「・・・・」

 

脇にいる征次を見て、総司が

 

壇上にいる雅を睨みつける

 

「この征次の話だと、

 

 次の御代は、"征四郎"------、」

 

「・・・・」

 

「だが、今、雅理事------...

 

 あなたの話では、自分が次の御代の指名を

 

 受けたと言っている-----、」

 

「・・・・」

 

雅は、冷え切った氷の様な表情を浮かべる

 

「-----、一体、雅代表、あなたは

 

  どの様な道理で、自分に次の御代の

 

 権利があると言ってるんだ-----?」

 

「ガタッ」

 

「お、おい! 

 

 何を言ってるんだ!? オマエは!?」

 

雅の側に座っていた左葉会の平井が、

 

声を荒げながら席から立ち上がる

 

「それはさっきも充分説明しただろうっ!?」

 

「-----遺言書がある、と言う事か...」

 

「-------!」

 

"バッ"

 

あまり、詳しい事はよく分かっていないのか、

 

総司の言葉に、平井は一旦雅の方に顔を向けると、

 

表情を崩した様に総司の方に向き直る

 

「そ、そうだ! 先程の告別式でも言った通り

 

  雅理事には尚佐御大が直々に残した

 

  "遺言書"がある------!

 

  ------そうでしょう!? 雅理事!?」

 

「・・・・」

 

「------雅理事!?」

 

「-------早瀬」

 

「・・・・」

 

"カッ カッ カッ カッ....

 

「お、おい、何だ?」

 

雅が脇にいた部下に一声かけると、

 

声を掛けられた男は部屋から外へと出て行く

 

「------そもそも、遺言書が

 

 あるなしの問題では

 

 ないのではないかしら------?」

 

「------どう言う意味だ」

 

総司が、雅を睨みつける

 

「------仮に、今、この場にいない

 

  他の叶生野の一族に

 

 御代の継承権があるとしても

 

  そもそも、彼らは

 

 この場に姿を見せていない------」

 

「-----だから何だ?」

 

「・・・・」

 

「-------!」

 

先程まで、穏やかな表情をしていた雅の顔が

 

一瞬だけ、変わったように見えた

 

「-----もし、仮に、私以外の誰かに

 

  御代の継承権があるとしても、

 

  その権利を持つ者が、何の正当な理由もなく

 

  前代の御代-----ましてや、尤光副会長や

 

  善波審議委員長にとっては、

 

 実の父親に当たる人物------、」

 

「・・・・」

 

「その、実の父親が亡くなった事に

 

  この場に姿を見せるも無い-----」

 

「・・・・」

 

「果たして、その様な人物に

 

  "御代"を継ぐ様な権利が

 

 あると言えるのでしょうか------」

 

「だ、だから、それはお前が------」

 

「ガチャ」

 

「------早瀬」

 

「雅さま」

 

総司が、雅に向かって何かを喋ろうとすると

 

再び雅の部下の男が、

 

何か紙の様な物を持って部屋の外から

 

雅の元に向かって近付いて行く

 

"ガサ"

 

「------下がりなさい」

 

「はい」

 

部下から紙の様な物を受け取ると

 

雅はそれを開きながら、総司を見る

 

「-------そもそも、御代として

 

  この場に姿を見せていない時点で

 

  その資質があるかどうかも

 

 疑わしい-----」

 

"ガサッ"

 

「・・・・」

 

手にしていた書簡を雅が開く

 

「そして、アナタ、安永理事。」

 

「何だ」

 

「あなたが言っている、

 

  御代の権利はこの叶生野の執事

 

  近藤が私たちに示したもの------」

 

「・・・・」

 

雅が、手にしていた紙を

 

この場にいる全員に見える様に壇上で広げる

 

「ただ、その近藤すらも

 

 この場にはいません------!」

 

「------だからどうした」

 

「・・・・」

 

"カッ カッ カッ カッ....

 

雅は壇上から降りると、

 

円卓に座っている理事たちに語り掛けるように

 

その後ろを歩いて行く

 

「告別式にすらその顔を出さず------」

 

「・・・確かにそうかも知れない」

 

共生ホールディングスの篠井が

 

自分の後ろを歩いている雅の言葉に同調する

 

「そして、そちらにいる、征次さん-----、

 

 と仰ったかしら?」

 

「・・・・」

 

"カッ カッ カッ カッ-------

 

「その、叶生野の一族の中でも、

 

  得体の知れない、素性も

 

 定かではない人物の話しか、

 

  安永理事の話を

 

 保証する物が無い------...」

 

「・・・・」

 

「そして-------!」

 

"カッ....!

 

雅の足が、総司の前で止まる

 

「それで、この、尚佐お祖父様が書いた

 

  "遺言書"を上回る、

 

  御代の継承権たる正当な理由が

 

 お有りになるのかしら-------っ?」

 

"ガサッ"

 

「そ、それは------!」

 

「これは、鴇与の村で見つけた、

 

  御代、尚佐が書いた、

 

 本人の直筆の遺言書...」

 

「------本人が、書いたのか?」

 

"バサッ"

 

「・・・・!」

 

雅が、立っている総司の前のテーブルに

 

自分が手にしていた紙を捨てる様に放る

 

「この場にもいない------、」

 

"カッ カッ カッ カッ....

 

再び、雅は、総司の元から、

 

壇上に向かって歩いて行く

 

「そして、その、御代の権利ですら、

 

  あるかどうかも分からない------、」

 

"カッ カッ カッ カッ....

 

「そして、この遺言書に書かれている通り

 

  次の御代は、この、"私"-------!」

 

「・・・・!」

 

"ダンッ!"

 

「それで、あなたの仰る

 

  御代の権利が、征四郎に

 

 あると思いますか------?」

 

「------....」

 

「そうでしょう------」

 

雅が壇の上から、遠目にいる総司を見る

 

「何の権利も無い、

 

 そしてこの場に姿も見せない...

 

  それで、あなたは何故、その、征四郎と言う

 

  得体の知れない人物を次の御代に

 

 推すと仰っているのかしら------?」

 

「・・・っ」