「吉田と川越」 18OS
「----------、」
"ストンッ"
「な、なっ-------!」
"ズダンッ!"
「何だ、地面の上に立つ事もできないのか-----?」
「きゅ、急に飛ばすな!」
川越が突然"Link"し、体が別の空間に
転移した事に驚いたのか、佐々木は
派手にLinkした先の硬い、
金属製の床の上に転げ落ちる!
「(---------、)」
"ゴポ ゴポポ...."
「(ここは--------)」
「おやおや、お客さんかい?」
「-------ッ!」
吉田、そして川越がどこからか聞こえて来た声に
パソコンを構える!
「------どうやら、ウィルにこのサイトの
位置を聞いたみたいだな....」
「------アンタは?」
吉田は、AISUS-zk9を構えたまま、
目の前にいる大きな壺の前に立っている
黒い、ローブの様な服を着た老人に目を向ける
「-------俺は、"ヘルムート"だ。」
「ヘルムート....」
「それより、その物騒な物を
しまってくれんかね?」
「-------っ」
「そんなガチガチの最新スペックの
パソコンを身構えられたら
こっちも思わず興奮して
来ちまうじゃねえか-----?」
「------すまない」
"スッ"
吉田は、自分に戦意が無い事を示すために
AISUS-zk9の電源を落とすと
目の前にいる老人に向かって一歩足を後ずらさせる
「(・・・・)」
"コポ コポポポポポ...."
「(・・・・・)」
"ブシュゥゥゥウウウウウウウ...."
"ゴポッ ゴポポポポポッ
「(・・・・・)」
「------"ウィル"からこの場所の事を
聞いたのかい...?」
「・・・・!」
壺から噴き出している白い煙に覆われた男は、
何か棒の様な物を壺の中に回し入れながら
煙越しに吉田を覗き見る...
「ウィルを知ってるのか------?」
「・・・・・」
"スッ"
「・・・・!」
"カッ カッ カッ カッ....
「ウィルは-----」
吉田の言葉に反応したのか、男は
持っていた棒から手を外すと
吉田に向かってまっすぐに近づいて来る....
「元は、アイツと俺は、外の世界で一緒に
シンハラ語の話者で作られたダークウェブ、
「ගැලවිය නොහැකි අනන්ත කොරිඩෝව
(「逃れえぬ無限回廊)」
でIT土方をやっていた...」
「-----IT土方・・・?
それがどうして今は
ウィルと離れた別々の空間にいるんだ?」
「・・・・」
「そうだな------...」
吉田の一言に、ウィルは視線を天井の方に向け
遠い目をする
「色々理由はある...
地上で質のいいソケットが
手に入らなくなっただとか、
量子ビットのパソコンに対応するのに
年を食っただとか...」
「・・・・」
「(ソケットか・・・・)」
マルサールがこの仮想空間から
現実世界を支配する様になってから
数年以上の月日が流れ、今や
パソコンに使われるチップや基板、
そしてその他線材などのパソコン部品は、
マルサールの手によりほぼ全てが
今やマルサールに対抗する地上の技術者集団、
ダークウェブの技術者たちにとっては
パソコンを作る事すら難しくなっていた...
「そんな状況の中で、互いに
効率良く"仕事"をするには、
それぞれが、それぞれの役割を持って
動いていかなきゃならない...」
「-----ここは、何をする場所なんだ?」
「------ヒッ ヒッ」
「・・・どうした?」
「いや、何------、」
突然奇妙な笑い声を上げ
自分の口元を手で押さえているヘルムートを見て
吉田の表情が曇る
「確かに、ウィル、そして他の技術者...
「逃れえぬ無限回廊」のIT土方たちは、
資源の枯渇から、ワシと行動を
別にする事になったが...」
"カッ カッ カッ カッ....
「・・・・」
不敵な笑みを見せながらヘルムートが
吉田の前から離れ、再び先程自分が立っていた
自分の背丈を越える様な
壺の方に向かって歩いて行く...
「(・・・・)」
"ゴポ ゴポポポポポ...."
「やつらは、それ以上に、人としての
倫理、道徳を捨て去る事ができなかった...」
「------何を言ってるんだ?」
"カンッ"
壺の脇に掛かっていた梯子に
ヘルムートは足を掛ける...
「人であるが故に、奴らは
"人を越える存在"....その存在を、
理解する、いや、理解しようとは
しなかった------」
"カンッ カンッ"
ヘルムートはそのまま梯子(はしご)をつたい、
壺の蓋の方に向かって梯子を昇って行く....
「奴らは、神々を越える存在、
その存在に対して自分の目を背け、
その存在を見えない様にした様だが...」
「・・・・?」
"ザパッ"
「ワシは、その存在と共に
このV-MONET内で
"共存"する事を選んだのだ--------!」
「!」
壺の上部に立つと、ヘルムートは壺の中から
手掴みで"何か"を引き上げる-------!
「そ、それは------!」
「"悪魔"-------...」
「-------ヒェッ ヒェッ...
悪魔を見るのは初めてかね?」
「・・・・!」
"ダンッ"
「!?」
「き、キサマッ-----っ!」
「------佐々木っ!」
ヘルムートが壺の中から
悪魔の体の一部を取り出すと、
吉田、川越の後ろにいた佐々木が
猛然とヘルムートに向かって駆け出す!
「-------落ち着けっ!」
「こ、この野郎っ------!」
"ブク ブクブクブク...."
"ガタッ ガタタッ!"
「さ、佐々木ッ!」
「--------っ!!」
「------おやおや、お前さん、もしかしたら
"同族"だったのかい------?」
「き、きっさま~っ!」
「佐々木ッ!」
「落ち着け!」
ヘルムートが手にした悪魔の体の一部を見て、
佐々木がヘルムートに向かって
飛び掛かろうとするが、それを見ていた
吉田と川越が佐々木の体を抑え込む!
「-----その壺に入ってるのはっ・・・・
"悪魔"か------っ??」
「・・・ヒェッ ヒェッ
何だい、それじゃあ、お前さんも
"悪魔"なのかい------?」
「こ、この野郎------っ!」
"ガバッ"
「吉田! 離せっ!
この野郎っ 俺の仲間を------っ!」
「ヒェッ ヒェッ ヒェッ....」
ヘルムートは佐々木を見て
悪魔の様な笑みを浮かべる
「何をそんなに興奮することがあるんだ...?」
「こ、この------っ!」
「・・・・ッ!」
「この、V-MONET内では、
人間はおろか、悪魔、そして神が死ぬなんて
よくある事じゃないか...?」
「--------っ」
「ヒェヒェヒェヒェ....」
"ゴポッ"
「すでに、動かなくなった"資源"を活用して
何が悪い--------?」
"ブクブクブク...."
「し、資源だと-------っ!?」
「ヒェヒェヒェヒェヒェ....」
"ゴポッ ゴポポッ....