「吉田と川越」 15OS
「じゃあ、お前らはこのFO-2.NETを越えて
この先の空間へと
進んで行くつもりなのか------?」
"カタッ"
ウィルが、パソコンを組むために使っていた
ヤスリを手に取る
「ここに俺たちが来た理由に、
それ以外の目的が考えられるか-----?」
「ま、まあ、それはそうだが...」
「この先に進むってったって、
どうするつもりなんだ?」
"パンッ"
佐々木は、スパイリーの足飾りを付けた足で
軽くサイト内の真っ白な地面を踏み鳴らす
「さっきみたいに、色々意味の分からねえ
リンクだとか、そう言うのを使って
またどっかに移動してくって事なのか?」
「--------、」
「こっからマルサールの居場所を
突き止めるにしたって行くアテでもあんのかよ」
「--------、」
ウィルが黙ったのを見て、
吉田はウィル歩み寄って行く...
「ウィル、あんたは....」
「な、何だ?」
「アンタは、俺達と同じ、地上のダークウェブの
一人だ...」
「・・・・」
「そして、アンタはこのFO2-.NET内で
サイトを作り、長い間ここで
パソコンを打ち続けていた...」
吉田は、ウィルの横に転がっている
おそらく、パソコンを叩くための物であろう
ハンマーに目を向ける
「俺達、ダークウェブの人間が
この先に進むにはプログラム言語...」
「ああ、DAOだか何だかってヤツだろ?」
「それに、"暗証鍵"が
必要になってくる------、」
「・・・・っ」
【暗証鍵】
マルサールが作り出した、この仮想区構築空間
V-MONET内では、
それぞれの空間がバラバラに
このV-MONET内に独立して存在し、
この仮想構築空間内をまるで
海の上に漂う小島の様に"サイト"と呼ばれる
いくつもの空間が分かれて存在している...
"カッ"
吉田の横から川越が出てくる
「この、各空間、サイトが
バラバラに分かれて存在する
V-MONET内の中を行き来するには、
そのサイトの位置情報、そして、
そのサイトにリンクするための、
暗証鍵が必要になってくる...」
「そんなの、探しっこねえじゃねえか」
佐々木が、関心のなさそうな素振りで
川越の言葉に反応する
「通常であれば、このV-MONET内に
バラバラに存在する"サイト"を
見つけるには、様々な解析や暗号処理を
していかなければならないが...」
川越が、ハンマーを手にしている
ウィルに視線を向ける
「ウィル、あんたは、さっき
もう何年もこの場所にいると言ってたよな...」
"キュッ"
川越の言葉に、ウィルは脇に置かれていた
モジュールを手に取る
「・・・・」
「アンタだったら、この
V-MONET内に存在する
サイトの場所、そして暗証鍵の事を
知ってるんじゃないか------?」
「・・・・」
川越が自分に向かって問いかけるが、
ウィルは複雑な表情を浮かべながら
黙って自分の手にしている
モジュールを見ている....
「アンタは、俺たちの力が
このV-MONETをリンクするには
不足だと感じていたようだが...」
「・・・いや...」
「さっきの俺達と"神"との戦いを見れば、
俺たちの力が、このV-MONET内でも
充分に通用する事はアンタにも
分かったんじゃないのか------?」
「---------、」
"パンッ!"
「・・・・?」
突然、ウィルが自分の膝を叩く
「??」
「------確かに、お前の言う通りだ。」
「ウィル・・・」
「最初に、このサイト内に入り込んできた
お前らを見た時は、ただの学生服を着た
ヒヨッ子だと思ったが...」
「俺は、20を越えてる」
学生服の襟を正しながら
川越はウィルに視線を向ける
「だが、さっきの..."神"との戦いを見れば、
お前らがこのV-MONET内で
やってくには、充分すぎる程、
パソコンを使いこなす事ができる様だ...」
「------パソコンを叩けば、
先に進めるってか?」
「・・・・」
「------おっと」
佐々木の言葉が冷やかしだと思ったのか、
睨みつける様な視線を向けて来たウィルに
佐々木は少し焦った様な表情を見せる
「お前らだったら、この先
"Midlertidig hvile(一時の憩い)"
の位置情報、そして、暗証鍵を
渡してもいいかも知れんな...」
「ウィル....」
「...老人の時代は終わったよ。
後は、若い奴らが自分で考え
自分の道を進めばいい-------」
「・・・・」