「血の家」 六雫
「征四郎君は、どうするつもりだ?」
「-----いえ、」
「君は、尤光や正之と一緒に
征佐、を探しに行かないのか----?」
「・・・・」
善波の言葉に、征四郎は部屋の中から、
窓の外へと視線を向ける
「(俺が、"御代"を-----?)」
元々、征四郎の家、鴇与家は
叶生野家からはまるで家格の低い、
取るに足らない様な家柄と見なされていたが
征四郎の母、"鴇与 雪絵"が、
元々叶生野の一族の出自であるせいか
尚佐の目に留まり、
そのおかげで、鴇与家は
尚佐のいる叶生野家においても
ある程度の立場と家格を
保証される事になったが-----
「(俺には、御代の話は関りがない-----)」
下手に経営の才覚があるせいか、
征四郎は、叶生野家の一族の中でも
ある程度、重要な立場に収まっていたが、
所詮、自分は叶生野では傍流の
枝葉の一人にしか過ぎない------
「----さっきの近藤の口ぶりだと、
征四郎君。どうやら君にも
"御代"の資格がある様だが-----」
「それは、あなたもでしょう------」
征四郎の言葉に、善波は
大きな笑みを浮かべる
「ダメだ、ダメだ。
俺みたいな適当な人間が
この叶生野の御代なんぞになりでもしたら
家がまとまる訳がない。」
「・・・・」
"叶生野 善波"
叶生野家の長男ではあるが、
生来の性格がいい加減なせいか、
それとも、元からその様な性格なのか、
叶生野の一族からは
かなり軽蔑(けいべつ)されている様だ
「話を聞けば、善波さん、
あなたにも、まだ、
御代になれる可能性はある-----」
「何だ? 唆(そそのか)してるのか?」
「いえ、そう言う訳では------」
"善波と征四郎"
善波は、叶生野家において
娯楽産業や、風俗業を営み、
そのいい加減な経営手腕からか、
金貸しを主な生業としている
征四郎に資金の援助を求めて来たり、
何かと征四郎の事業と繋がりがある
「-----ともかく。
俺達も、ここでこうしていても仕方がない
一反、外に出て
俺達も、その、
"征佐"を探しに行った方が
いいんじゃないか?」
「----------....」