「血の家」 八十二雫
「それでは、続いて、
安永 総司理事------」
「・・・・」
「安永理事?」
「-----、一ついいか?」
「-------ええ、構いませんが...」
「ガタッ」
禎三の次に、自分の番が来ると
総司は、席から立ち上がる
「そもそも、今、次の御代についての
投票を行っている訳だが------」
「・・・・」
突然、何か別の事を口にし出した総司を
雅は目を細め、無表情で見ている
「そもそも、雅、お前以外の
尤光、正之、明人------、
そして、善波、征四郎や、ジャン-----
その他の連中はどこに行ったんだ?」
「それは、先程、告別式の際に、
ここに集まっている方たちには
ご説明差し上げましたが------」
「-------ふざけるなっ!」
"バンッ!"
「そ、総司------!」
「粗暴な振る舞いは、当理事会の品格を
落とすことになるので
お辞め頂きたいのですが-------」
「-----品格?」
「え、え----」
"バンッ!"
「・・・・!」
雅の言葉を言い終える前に、総司は再び
自分の前のテーブルを強く叩く!
「品格だ何だと、ずい分
御大層な事を言うが------!」
「・・・あまり、その様な振る舞いが過ぎるなら、
当理事会も、安永理事の処遇について
考えなければなりませんが-----」
「そ、総司」
「------フン。」
禎三が、総司を宥めようとするが
総司はそのまま言葉を続ける
「そもそも、つい先日まで
他の御代の候補者がいなくなるなんて素振りは
まるで無かったぞ------?」
「だから、それは
先程、申し上げた通り-----」
「お前の言う、御代の遺言書が
この叶生野荘の鴇与の村で見つかり、
それで他の御代の候補者がこの理事総会を
辞退したと言う話か-----?」
「-------そう申し上げましたが...」
雅が、脇にいる屈強そうな
自分の部下に目をやりながら総司を見る
「-----そんな話、信じると思うか...?」
「信じる、とは、
どう言った意味でしょうか-----?」
「な、何だ-----?」
「お、おい、安永くん-----、」
「・・・・」
周りにいた他の理事たちが、
声を荒げている総司に向かって
何か言葉を投げ掛けてくるが
総司はまるで構わず、壇上にいる雅に向かって
声を張り上げる
「一昨日、俺が、善波や征四郎と会った時、
二人は、鷺代の集落...
これは、尚佐御代が生前よく
顔を出していた家だが...」
「鷺代?」
「------神代の集落のか?」
「その、鷺代の家の当主、征次の話では、
次の御代は、征四郎------、
鴇与家の征四郎を尚佐御代が指名したと
聞いている------!」
「-----何を申し上げているか、
よく分かりませんが------、」
「--------これでもか?」
「・・・・?」
「ガチャッ」
「・・・・!」
「な、何だ?」
「あれは誰だ?」
総司が、入り口の近くにいた
自分の部下に目配せをすると、
ドアの外から、一人の男がやってくる
「(征次-------)」
"カッ カッ カッ カッ....
「総司さま------、」
ドアから、征次が総司の側まで歩いてくる
「・・・・」
そして、総司が、続けて雅に目を向ける
「------これが、鷺代の当主、
鷺代 征次-----...
そして、この征次は前代の御代である
尚佐御大から、直接、次の御代、
征四郎の話を聞いている------
そうだな? 征次さん」
「・・・・」
まだこの場の雰囲気に何か
戸惑いを感じているのか
征次は、部屋の中をキョロキョロと見渡す
「------いえ...」
少しすると、驚いた様な顔で、
征次は総司の顔を見る
「え、ええ-----、
総司様の仰る通りで御座います------」