おめぇ握り寿司が食いてえ

様々な小説を紹介

「血の家」 八十二雫

f:id:sevennovels:20211218161800j:plain

「それでは、続いて、

 

  安永 総司理事------」

 

「・・・・」

 

「安永理事?」

 

「-----、一ついいか?」

 

「-------ええ、構いませんが...」

 

「ガタッ」

 

禎三の次に、自分の番が来ると

 

総司は、席から立ち上がる

 

「そもそも、今、次の御代についての

 

  投票を行っている訳だが------」

 

「・・・・」

 

突然、何か別の事を口にし出した総司を

 

雅は目を細め、無表情で見ている

 

「そもそも、雅、お前以外の

 

  尤光、正之、明人------、

 

  そして、善波、征四郎や、ジャン-----

 

  その他の連中はどこに行ったんだ?」

 

「それは、先程、告別式の際に、

 

  ここに集まっている方たちには

 

  ご説明差し上げましたが------」

 

「-------ふざけるなっ!」

 

"バンッ!"

 

「そ、総司------!」

 

「粗暴な振る舞いは、当理事会の品格を

 

 落とすことになるので

 

  お辞め頂きたいのですが-------」

 

「-----品格?」

 

「え、え----」

 

"バンッ!"

 

「・・・・!」

 

雅の言葉を言い終える前に、総司は再び

 

自分の前のテーブルを強く叩く!

 

「品格だ何だと、ずい分

 

 御大層な事を言うが------!」

 

「・・・あまり、その様な振る舞いが過ぎるなら、

 

  当理事会も、安永理事の処遇について

 

  考えなければなりませんが-----」

 

「そ、総司」

 

「------フン。」

 

禎三が、総司を宥めようとするが

 

総司はそのまま言葉を続ける

 

「そもそも、つい先日まで

 

  他の御代の候補者がいなくなるなんて素振りは

 

  まるで無かったぞ------?」

 

「だから、それは

 

  先程、申し上げた通り-----」

 

「お前の言う、御代の遺言書が

 

  この叶生野荘の鴇与の村で見つかり、

 

 それで他の御代の候補者がこの理事総会を

 

 辞退したと言う話か-----?」

 

「-------そう申し上げましたが...」

 

雅が、脇にいる屈強そうな

 

自分の部下に目をやりながら総司を見る

 

「-----そんな話、信じると思うか...?」

 

「信じる、とは、

 

 どう言った意味でしょうか-----?」

 

「な、何だ-----?」

 

「お、おい、安永くん-----、」

 

「・・・・」

 

周りにいた他の理事たちが、

 

声を荒げている総司に向かって

 

何か言葉を投げ掛けてくるが

 

総司はまるで構わず、壇上にいる雅に向かって

 

声を張り上げる

 

「一昨日、俺が、善波や征四郎と会った時、

 

  二人は、鷺代の集落...

 

  これは、尚佐御代が生前よく

 

 顔を出していた家だが...」

 

「鷺代?」

 

「------神代の集落のか?」

 

「その、鷺代の家の当主、征次の話では、

 

 次の御代は、征四郎------、

 

  鴇与家の征四郎を尚佐御代が指名したと

 

  聞いている------!」

 

「-----何を申し上げているか、

 

  よく分かりませんが------、」

 

「--------これでもか?」

 

「・・・・?」

 

「ガチャッ」

 

「・・・・!」

 

「な、何だ?」

 

「あれは誰だ?」

 

総司が、入り口の近くにいた

 

自分の部下に目配せをすると、

 

ドアの外から、一人の男がやってくる

 

「(征次-------)」

 

"カッ カッ カッ カッ....

 

「総司さま------、」

 

ドアから、征次が総司の側まで歩いてくる

 

「・・・・」

 

そして、総司が、続けて雅に目を向ける

 

「------これが、鷺代の当主、

 

 鷺代 征次-----...

 

  そして、この征次は前代の御代である

 

  尚佐御大から、直接、次の御代、

 

  征四郎の話を聞いている------

 

  そうだな? 征次さん」

 

「・・・・」

 

まだこの場の雰囲気に何か

 

戸惑いを感じているのか

 

征次は、部屋の中をキョロキョロと見渡す

 

「------いえ...」

 

少しすると、驚いた様な顔で、

 

征次は総司の顔を見る

 

「え、ええ-----、

 

  総司様の仰る通りで御座います------」