「血の家」 五雫
「----それでは、私は、これにて-----」
「ガチャッ」
近藤は、部屋の中にいる一族の人間に背を向けると
扉を開け部屋から出て行く------
「・・・・」
後に残された叶生野家の者、
そして征四郎は、尚佐が残した遺言に
口を開かず、その場に立ち尽くしている
「・・・・」
「・・・・・」
「・・・・」
「-----------、」
「ガタッ」
「明人------、」
しばらく、沈黙が続いた後、
叶生野の三男である、明人が
椅子から立ち上がる
「・・・・」
"コッ コッ コッ コッ------"
「お、おい、」
「---------、」
「ガチャッ」
明人は、何も言わずに部屋の扉を開け
そのまま部屋を出て行く
「な、ど、どうしたんだ、
明人のヤツ-------、」
「----多分、"征佐"さんを
探しにいったんじゃない----?」
「・・・・!」
「そ、そうか-----!」
「ガタッ」
「・・・・!」
慌てて、部屋の中にいた
正之、尤光、雅が椅子から立ち上がり
明人に合わせる様に部屋の外へと出て行く
「ガタッ」
「ガタタタッ」
"タッ タッ タッ タッ-----"
四人が部屋から出て行くと
部屋の中に善波、そして
征四郎だけが取り残される-----
「何だ!? アイツら!?」
「----"征佐"の所在を見つける事ができれば
その征佐を見つけた者は、
次の"御代"になれる--------」
「征佐を?」
善波は、今までの話を聞いていなかったのか
征四郎に向けて驚いた様な表情を見せる
「ほら、さっきの----」
「ああ、征佐は、
この、叶生野荘にいるって------」
征四郎が言葉を継ぎ足す
「そう考えれば、他の一族の者を出し抜いて
征佐と話す事ができれば
その人間は次の御代になれる
可能性がある------」
「-----そうか。」
「(---------、)」
"ダッ ダッ ダッ ダッ....
「ガチャ」
「おい! 押すな!」
「----------、」
「(-------"御代"か....)」
扉から出て行く
尤光、正之、明人、雅の後姿を見ながら
征四郎は、"征佐"、
そして、御代の事を考えていた-----。