「血の家」 八十一雫
「"征四郎"だ-------、」
「・・・・!」
「せ、征四郎?」
「-----ああ、確かアメリカで
銀行をやってるだとか...」
禎三が、憮然とした表情で征四郎の名を口に出すと
部屋の中が大きく騒ぎ出す
「------禎三ッ 貴様っ!」
「ガタッ」
突然、禎三の向かい側の円卓に座っていた、
小洒落た帽子に着物を着た老人が席から立ち上がる
「・・・親父。」
"藤道會総帥、藤道 仁左衛門"
九州に基盤を置く、物流会社
藤道物流の総帥で
前代の尚佐と年が近いせいか、
尚佐とはかなり近い関係にあった人物で
今、征四郎の名前を挙げた
禎三とは血を分けた親子だ
「貴様っ 気でも違ったのか!?
この場におりもせん、しかも、
どこの者かも分らん家柄の小僧を
この場で口にするとは------ッ
恥を知れ!」
「ガタッ」
「------禎三...」
仁左衛門の言葉を聞いてか、禎三は、
座っていた席から立ち上がる
「何も、この場にいるいないの
話ではないでしょう------」
「・・・・!」
険しい表情で仁左衛門が禎三を睨みつけるが
禎三は、目を反らさず、まっすぐ
円卓の向かい側に座っている
仁左衛門を睨み返す
「-----聞くところによると、元々、
今回の御代の権利は叶生野の一族である
尤光副会長、そして、
その弟である、正之、明人-----
さらには、善波、そして、征四郎や
海外のジャン、ルーシーにも
あると聞いている....」
「-----お前、誰に向かって
口を聞いているんだ」
"カンッ!"
「・・・・!」
仁左衛門が、禎三に向かって
手に持っていたステッキで
理事たちが座っている円卓を叩く
「それは、会長。あなただ-------!」
「"あなた"だとっ!?」
"ガンッ! ガンッ!"
「と、藤道総帥っ」
「お、落ち着いて下さい!」
「--------フン、」
"ドスッ"
周りの理事たちの言葉に冷静さを取り戻したのか、
仁左衛門は、禎三から顔を背け
顰め面で自分の席に着く
「-----では、禎三理事は、
征四郎理事に一票を投じると-----?」
「------そうだ。」
「・・・・」