「血の家」 七十二雫
「・・・・」
血の家
七十二雫
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
三十分程時間が経ったろうか。
「雅-------、」
ずっと押し黙っていた明人が
部屋の中に向かって声を上げる
「あいつが、しおらしく
俺たちに協力すると言った時点で
少しおかしいと思ったが------」
「・・・・」
"カンッ"
明人が部屋の中に向かってもう一つ小石を放り投げる
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
明人が喋ったぎり、再び部屋の中は沈黙に包まれる
「------、」
「--------、」
「--------....」
「明人--------、」
「・・・・何だ?」
征四郎が明人に向かって口を開く
「アンタたちは、雅に唆(そそのか)されて、
俺たちをこの館で
罠に掛けようとした....」
「-----だったらどうした」
「・・・・」
開き直っているのか
まるで自分の非を認めようとしない
明人の言葉を気にもしていないのか
征四郎はそのまま話を続ける
「-----雅は、アンタ達に、
何て言ってここまで連れて来たんだ?」
「ああ...」
「おい、明人。」
「・・・・・」
"スッ"
すでに隠し事をする必要も無いと思ったのか
自分の言葉を止めようとしている正之を
明人は片手で制する
「別に、お前が知ってる様な事と
同じ様な事だ-----」
「・・・アンタたちが尚佐御大の息子じゃなく、
俺が尚佐御大の子だと言う事か?」
「-----そうだ」
"スッ"
「・・・・!」
地面で片膝を立てていた明人が
部屋の中で立ち上がる
「この、叶生野一族で、本流の俺達ではなく、
まるで関係の無い身分だと思っていた
お前が、御代になる-------、」
「・・・・」
「クククククク....」
「------何を笑ってるんだ?」
「・・・・」
明人は、征四郎に皮肉めいた笑みを浮かべる
「こんな馬鹿な話はあるか-----?
今まで、叶生野の血は、
俺達、四人----、
いや、善波兄さんを入れれば五人か....
そう思ってたところに、
突然、雅からあのダムの村の
話を聞かされた...」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「とりあえず、そう言う事------。」
「じゃあ、御代の継承権は
俺達じゃなく、あの、
征四郎にあるって事なのか-----?」
叶生野の屋敷の応接室で
明人は、テーブルの前に立っている雅を見る
「さあ------、
そこまでとは言えないけど、
どうやら、御代を継ぐその権利、
"血"は、征四郎の方が濃い様ね-----」
「そ、そんな事------!」
「このまま、征佐が見つからず、
御代の権利が曖昧な状況のままだと
おそらく、次の御代は-------」
「・・・"征四郎"になるって言うのか!」
「その可能性は充分にあり得る------」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「だから、お前らは、雅と結託して、
この"征佐"の屋敷で、
俺を罠に仕掛けようとした....」
「・・・・」
明人は、征四郎の言葉に何も答えず
目を細め、何も無い
自分の足元の辺りに視線を向ける
「まあ、どの道こうなった以上、
今さらどうなる訳でもないがな...」
「・・・・」