「血の家」 五十二雫
「せ、征四郎-----?」
「つ、次の御代が-----?」
「そうで御座います------」
征次は、窓の外から、二人に振り返る
「ちょ、ちょっと待ってくれ...」
「何でございましょう-----」
「い、今の話、色々
おかしいんじゃないかっ!?」
「・・・・」
黙って征次の話を聞いていた
善波が、征次に向かってまくし立てる
「俺の息子------?
"鴇与"家-------?」
「・・・・」
「そもそも、尚佐、ウチの親父は、
昔から叶生野姓で
鴇与なんて名乗った事は一度も無いぞ!?」
「・・・・」
「それに、息子が"征四郎"っ!?」
善波が征四郎を見る
「それは、ここにいる征四郎君の事を
言ってるんだろうが...」
「・・・・」
征四郎も、話が呑み込めていないのか、
ただ、呆然と声を荒げている善波を見ている
「そもそも、征四郎くんは、
親父とは何の関りもないだろうがっ
・・・
いや、関りが無いと言ったら少しおかしいが、
征四郎くんにはちゃんと自分の親父もいるっ
そうだろうっ!?」
「あ、ああ...」
善波の勢いに、征四郎は思わず生返事をする
「それで、何で征四郎くんが
ウチの親父の息子になるんだっ!?
話が合わんだろうがっ!?」
「い、いえ、それは------」
「おいっ」
"ガタッ"
「ぜ、善波さん-----?」
「お、お離しを------」
善波が、座布団から立ち上がり、
征次の肩を掴む
「・・・・」
そして、そのまま、真っすぐ
征次を睨みつける
「-----今の話、本当なのか-----」
「え、ええ....」
"ガタッ"
「・・・・!」
征次の肩を掴んでいた善波が、
物音に、部屋の入口の方に振り返る
「やっぱり、そう言う事なのか...」
「------明人!」
「雅が言っていた事が、
作り話だとは思ったが....」
明人は、部屋の中にいる征次に目を向ける
「どうやら、そのジジイが言ってる通り、
"征佐"は-------!」
「あ、おい!」
明人は、何かを呟くと、
そのまま鷺代の家から外へと出て行く
「・・・オイ!」
善波、そして、征四郎が
慌てて外に出て行く明人を追いかけて行く