「血の家」 三雫
「せ、"征佐"------?」
「??」
「そうで御座います-----」
「---------」
「・・・・」
「な、何かの間違いじゃないか」
正之が、目を細めながら近藤を見る
「いえ、確かにこの書簡に書かれた通り----」
「貸せっ」
「------!」
近藤が手にしていた書簡を
正之は引っ手繰(たく)る様に取り上げる
「・・・・」
そこには、尚佐の字で短く
"征佐"
と書かれている
「・・・・!」
"バサッ"
「・・・・・・、」
正之が地面に投げ捨てた書簡を、
近藤は無言で拾い上げる
「"征佐"だと-----?」
部屋の中が騒然とする
「(-----征佐...)」
征四郎も、その言葉を聞いて
頭が空白になる
「(征佐なんて人間、
この叶生野の家には
いないんじゃないか-----)」
「せ、征佐なんて名前、
聞いたことが------」
「----いや、この叶生野の人間は
一族の人間だけでも、
優に百人は越える。
もしかしたら、俺達が知らない
別の------、」
「-----多分、征佐という人は、
この叶生野の一族には、存在しない----」
「-----雅。」
尤光と、明人の話に
次女である、雅が話を割る
「----私は、一族の集まりや
催(もよお)し事によく顔を
お出しさせて貰(もら)ってるから、
この、叶生野の人間の事は
知ってるけど-----」
「-------、」
表情の起伏を感じさせない様な
雅の言葉を、尤光、明人は
黙って聞いている
「私が知る所、
この、叶生野の家には
"征佐"
と名乗る人間は、いない-----」
「ど、どういう事だ?」