おめぇ握り寿司が食いてえ

様々な小説を紹介

「血の家」 七十三雫

f:id:sevennovels:20211214040347j:plain

「しかし-----、」

 

更に数時間ほど時間が経っただろうか。

 

「--------..」

 

誰に話し掛けているか分からないが、

 

善波が部屋の中の空間を虚ろ気に見ながら喋り出す

 

「・・・さっきの話からすると、

 

  特段、雅にも御代を継げる様な

 

  特別な理由がある訳じゃないんだろう?」

 

「--------、」

 

「それなのに、雅はわざわざ俺達を

 

 こんな所に閉じ込めてる-----」

 

「・・・・」

 

「一体何の意味があるって言うんだ?

 

  特に、俺達をこんな所に閉じ込めた所で

 

  いずれ何日か経てば

 

  俺たちの存在は叶生野荘の

 

 知れる所になる-----、」

 

「確かに....

 

  この場所には、今尚佐お祖父様の葬儀で

 

  かなり叶生野に関わってる

 

 人たちも集まってるし...」

 

少し離れた場所に座っていた尤光が

 

善波の言葉に同調する

 

「・・・・」

 

「そう言えば、葬儀の日は、

 

 もう、今日か-----?」

 

「そうみたいね------」

 

部屋の中に一つしかない窓から

 

尤光が薄っすらと差し掛けている

 

朝の光に目を向ける----

 

「俺達を数日こんな所に閉じ込めた所で、

 

  あまり大した意味が

 

 あるとも思えないんだが-----」

 

「・・・・」

 

確かに、善波の言う通り

 

征四郎たちは雅にここに閉じ込められはしたが、

 

だからと言って、御代の後継者争いが

 

治まった訳でも無い

 

「雅は、何の意味も無く、俺達を

 

 ここに閉じ込めただけって事なのか?

 

  俺達を数日ここに閉じ込めてる間に、

 

 何かあるって事なのか?」

 

「------わざわざ、俺達を騙して

 

  この状況に追い込んだって事は

 

  雅にはそれを上回る

 

 "理由"がある------」

 

「・・・・」

 

明人が、自分の考えを喋るが、

 

部屋の中にいる征四郎たちはまるで声を上げない

 

「----待てよ?」

 

「・・・兄さん」

 

明人の隣に座っていた正之が口を開く

 

「----今日の、御代の葬儀------、」

 

「--------、」

 

「その葬儀には、今、この叶生野荘に集まった

 

  叶生野に関連した人間が

 

 ほぼ全て集まっている...」

 

「-----だから何だ?」

 

結論を急いでいるのか、促す様に喋る善波に

 

正之は少し早口になる

 

「もしこのまま、俺たちが

 

  その葬儀の場に姿を現さないとなれば

 

  おそらく、今回の葬儀の喪主は

 

  "雅"---------」

 

「・・・そうなるな」

 

「もし、その、叶生野の

 

 関連の者たちが集まった場で

 

  何か、雅の"御代"を証明する様な

 

 物があったとしたら-----...」

 

「-----"!"」

 

「・・・この叶生野荘に集まった

 

  叶生野の傘下の者たちは、

 

  "雅"を次の御代に

 

 認めるんじゃないか----?」

 

「・・・系図か」

 

明人がボソリと呟く

 

「つまり、雅は、今日の午後に行われる葬儀、

 

  その場所で、叶生野関連の者が

 

 集まるのを見計らって、俺達がいない所で

 

 ある程度確からしい証拠を

 

  集まった人間達に見せつける事で

 

  自分が御代の座につこうとしてる-----」

 

「・・・確かにそれならあり得るな」

 

征四郎の言葉に、明人が同調する

 

「じゃ、じゃあ、雅は

 

  その葬儀の日を狙って、俺達をここに閉じ込め

 

  自分が御代だと言う事を周りに知らせて、

 

  なし崩しに自分が御代の座に

 

 就こうって腹か-----?」

 

「・・・俺達、叶生野の本流の人間がいれば、

 

  確たる遺言や証拠がなければ、

 

  御代の座につく事は不可能だが、

 

  だが、俺たちがいない場所、

 

  そして、今回の葬儀の様に

 

 ほぼ全ての叶生野の傘下の

 

  人間が集まった理事会の様な場所で

 

 さっきの系図や何かを見せれば、おそらく

 

 雅が次の御代になる事を

 

  止める人間はいないだろう------!」

 

「そ、それが、雅の狙いか-------っ」

 

「ガチャ」

 

「ッ!?」

 

突然、征四郎たちのいる部屋の扉が音を上げる