「血の家」 五十七雫
「じゃあ、そこに行けば
"征佐"の手掛かりが
分かるって言うのか!?」
「ええ----、この、"系図"にも
書かれているでしょう-----?」
「・・・・?」
総司と禎三の話を適当に切り上げ
征四郎と善波は応接室向かうために
屋敷の通路を歩いて行く
「た、たしかにこの系図や
他の紙に書かれている言葉は間違いなく
"尚佐御大"の物だ------。」
「ガチャ」
「(雅------、)」
「ほ、本当かっ!?」
「ええ------、」
「・・・・」
征四郎が、応接室の扉を開け
部屋の中に足を進ませると
奥の方のテーブルの前に
雅が立っているのが見える
「(・・・・)」
そして、その雅がいるテーブルを囲む様に
尤光、正之、明人がテーブルの椅子に座っている
"パサッ"
明人は、雅から手渡された手紙を
自分達が座っているテーブルの上に置く
「まさか、"征佐"が、
鷸原(しぎはら)の
人間だったなんて-----」
「ええ、私も驚いた-----」
「だが、何だって、雅、
お前はこの事を俺たちに教えるんだ?」
座っていた正之が
テーブルの前に立っている雅を見る
「その系図に書かれてる通り、
私たち、四人は尚佐お祖父さまと
血を分けた、一族では無いの-------」
「ど、どうやら、その様ね...」
「("系図"------?)」
征四郎の頭に、雅がダムの村で
早々に村から去っていた事が過る
「そう...だから、
私たち、四人が実子でも無いのに
"御代"の座を争うのは
滑稽(こっけい)な
事では無い------?」
「・・・・」
「だから、お前は俺たちに
征佐の居場所を
教えるって言うのか-----?」
明人が、雅を見る
「・・・・」
雅は何かを悟った様な表情を浮かべ
澄まし顔で、座っている三人に目を向ける
「私も驚いた------。
まさか私たち叶生野の兄妹が
お祖父さまと血を分けた一族では無く、
その、"征佐"が、本当の、
尚佐お祖父さまの
息子だったなんて------」
「・・・確かにそうだな」
雅が言葉を続ける
「でも、以前に近藤が言ってた通り
次の御代は、
この征佐を補佐する者でしょう-----?」
「...確かに遺言書にはそう書かれてたな」
「この征佐ってのは
体が不自由とか何かなのか?」
「-----そこまでは分からない」
「・・・だが、何だってお前が
俺たちにこの事を教えるんだ?」
正之が、雅を見る
「・・・私たち四人が、
尚佐のお祖父さまの直系の一族でない以上、
次の御代になる権利は、遺言書に書かれていた
全員にある-----、」
「・・・・」
「御代の継承権が、全員平等にあるとしたら
結局、誰を御代にするかは
次の御代の候補者の話し合い----
最終的には、入れ札みたいな事に
なるんじゃないかしら。」
「-----そうなる可能性はあるが...」
"スッ"
雅が、窓の外に目を向ける
「次の御代の候補者を決めるのに、
入れ札の様な形になったとしたら
私は、所詮羽賀野の家の人間------。」
「・・・・」
尤光たちは何も言わず、雅の話を聞いている
「左葉会や、その他の様々な企業を
自分の派閥にしている
尤光姉さん、正之、明人兄さん-----。
三人には、勝ち目がないもの-----。」
「だから、御代になるのを諦めて俺たちに
征佐の居場所を
教えるって言うのか-----?」
「尤光姉さん-----」
雅が窓から、尤光に向かって振り返る
「やっぱり、姉さんが、今、
この叶生野家、左葉会、
その他の閥をまとめる者として
一族の御代につくのが相応しい-----、」
「雅・・・!」
「尤光姉さん、私は、姉さんに
次の御代になって欲しいの-----」
「・・・・!」