「吉田と川越」 7OS
"キンッ キンッ!
"シュゥゥゥオオオオオオオンッ"
「な------!」
"ドサッ"
突然、目の前のタイトル文字が
並べられていた場所から佐々木は、
地面の無い空間に飛ばされる!
「ぬ、ぬぉぉおおっ!」
"ズサササササッ!
「------何だ、遅かったな-----」
「よ、吉田-----、」
地面が無いと思っていた佐々木が、
よく分からない、目を凝らせば
何となく見える様な、ぼんやりとした
地面の上に倒れ込みながら自分の顔の前を見ると
そこには、吉田のローファーが見える
「な・・・!」
「ここが、ダークウェブの
奴らの"サイト"か-----?」
「・・・・その様だな」
"キンッ キンッ!"
「な、何なんだ------?
ここは------?」
"キンッ キンッ!"
這いつくばりながら佐々木が
自分が降り立った地面から
部屋の少し先を見渡すと、
その先に何かよく分からない、
周りに何も無い真っ白な景色の中に浮かぶように、
一人の男がハンマーの様な物を携(たずさ)え
それを空間の中に浮かんでいる
台座の上に乗せられた"何か"に向かって
叩きつけているのが見える
「-----工房か?」
「その様だな・・・」
"スッ"
吉田は、手にしていたAISUS-zk9を
学生服の内側にしまうと
少し先の真っ白な無空間に浮かぶ様に
無心でハンマーを叩いている男に目を向ける
「・・・・ッ?」
"キンッ...
「------よぉ」
「お前らは------」
ツナギ、そして眼鏡を掛けた男は
吉田たちの存在に気付いたのか、
ハンマーを持つ手を止め、振り返る
「DOA言語か....?
意外と、ナジュレムのゲートから
潜った空間だってのに、
難解な言語を使うんだな------?」
「-------フン、」
"ガチャッ"
男は、手にしていたハンマーを
台座の脇に無造作に放る
「ここは、工房か何かか-----?」
「------何の用だ?」
「おいおい、俺たちは同じ、
ダークウェブの、言ったら
仲間みたいなもんだろう----?
そんなに無愛想な扱いをしなくても
良いんじゃないか?」
「-------....」
川越の言葉に、男は眉間に皺(しわ)を寄せる
「何...このFO-2.NETに
今更来るなんて、ずい分珍しいと思ってな」
「・・・今じゃ、このFO-2.NETに
来る人間も、殆どいないって訳か...」
「・・・知ってるだろう」
"フッ"
男の言葉に、川越はフィジカルな笑みを浮かべる
「------あんたは、ここで何をやってるんだ?」
川越は、台座の脇に置かれたハンマーを見ながら、
目の前にいる長い帽子を被った
男に向かって口を開く
「・・・・」
"スッ"
「・・・・」
"カシャ カシャ"
「・・・・使え」
「・・・・!」
男が繋ぎの胸ポケットの辺りから煙草を取り出すと
それを見ていた川越が学生服のポケットから
ライターを取り出し、
男が咥(くわ)えた煙草に
自分のライターの火を近付ける
「------フゥゥゥウウウウウ....」
「・・・」
「・・・」
男は、川越が点けた火で
煙草を深く肺に吸い込むと、何も無い、
白一色の部屋の中の空間を見渡す
「今さら、このV-MONETの中に入った所で、
何が変わる訳でも無ェよ...」
"トン トン"
「・・・・!」
男は、人差し指でタバコの腹を軽く叩くと
タバコの灰が真っ白な無空間の床に
撒(ま)かれていく
「ここには、アンタしかいないのか・・・?」
「・・・・」
「フゥゥゥウウウウウウ-------」
川越の隣にいた佐々木が
男に向かって喋りかけるが、
男は佐々木の言葉に答えず
ただ、煙草の煙を深く吸い込み
それを空中に向かって吐き出している
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「フゥゥゥウウゥゥウゥゥウ....」
「(・・・・)」
何か、別の事を考えているのか、
男は空間の中に散らばった煙草の煙を
虚ろな目でぼうっと見ている
「-----アンタ、名前は何て言うんだ?」
川越が、男の態度に焦れたのか
男に向かって口を開く
「スゥゥゥウウウウゥゥウウウゥウ...」
"トン トン"
「・・・・!」
「俺の名は-----、」
タバコの灰を再び地面に撒くと
男は吉田たちの方に向き直る
「俺の名は、"ウィル"。」
「"ウィル"------?」」
「・・・このFO-2.NETに来てから
もう、何年にもなるな-----...」
「・・・・」