「血の家」 六十八雫
「お、おい! 雅っ!?」
「な... どこへ行くって言うの!?」
「(尤光------!)」
征四郎が、館から外に出て
二瀬川の橋の方に向かって走って行くと
橋のすぐ手前に、一台の車。
そして、そこに、雅や、尤光兄妹の姿が見える
「------ごめんなさい、姉さん...」
「な、何言ってるの!?」
尤光は、橋を挟んで反対側の場所に立っている
雅に目を向ける
「悪いけど、尤光姉さんたちには
しばらく、その中州で
過ごしてもらうわ...」
「な、何を言ってるんだ!?」
「お、お前は俺達を御代にするって
言ってたんじゃないか!?」
「・・・・」
"バサッ"
橋の反対側で叫び声を上げている
尤光たちに、顔色を変えず雅は
長い髪をかき上げる
「私も、尤光姉さんが
御代になったとしたら------
どんなに素敵な事かと思ったのだけど...」
「だ、だったら・・・」
「でも、尤光姉さんには、
どうやらその"資格"は
ないみたい-----、」
「な、-----、
アンタッ!? 騙したのっ!?」
「・・・・・」
興奮している尤光に雅は涼し気な表情を浮かべる
「あ、アンタがっ!
征四郎をここに連れて来て
それで罠に掛けるなんて言うから
わざわざ私たちが
ここに来たって言うのに-----っ!?」
「-----ごめんなさい」
「ふ、ふざけないでよっ!」
「------小原」
「はっ----。」
「な、何を-----!」
尤光が橋に手を掛けようとした瞬間、
雅は、自分の脇にいた部下に向かってアゴを傾ける
"ギィィィイイイイイイイイイイイイ"
「・・・・・!」
「尤光姉さん------、
そして征四郎--------、」
「・・・・」
「せ、征四郎っ!?」
この場に駆けつけて来た征四郎に
尤光や正之が驚いた顔を浮かべる
「しばらく、アナタ達には
その、中州で
お休みになられたら-----?」
「な、何を------!?」
"ザンッ!"
「"!"」
"バララララララッ!"
「は、橋が-------!」
雅の合図に、部下の男が車の中から
チェーンソーの様な物を取り出し
それを、橋を支えている
木製の柱に向かって押し当てる
"ギィィィィィィィィイイインッ"
「ご機嫌よう--------、」
「ガチャンッ」
「は、橋が-------!」
"ブロロロロロロロロロッ"
「い、行っちまった-------!」