「血の家」 六十雫
「征佐は確かに存在する-----」
「私も、兄さん達と一緒に、
鳰部の館に行って
征佐と会うつもり----」
「鳰部? さっき尤光たちには、
別の場所を教えていなかったか----?」
「だから、あれは嘘-----。
そうでもしないと、
姉さんたちが、御代を諦めてくれそうに
ないでしょ-----?」
「・・・・」
「(この話------...)」
雅から手渡された書類に目を通しながら
征四郎は神代の集落で征次に聞いた話を思い返す
「(征次の話では、尚佐御大は
鴇与の村の出身で、
俺は、尚佐御大の
息子だと言っていたが...)」
"ガサ"
「(・・・・)」
だが、今征四郎が雅から渡された系図を見ると、
尚佐は鴇与家の人間でも何でも無く、
そして、征次には聞かされなかった
征佐の存在が浮かび上がってくる
「------兄さん」
「なんだ、雅-----、」
「色々、思う所があるのでしょうけど、
この系図に書かれている通り、
私たちは、血を分けた実の兄妹なの----」
「・・・・」
「私たちは、兄妹として、
お互い、助け合い
この叶生野の家を盛り立てて
行かなければならない-----」
「(・・・・)」
一見最もらしい雅の言葉に
征四郎が戸惑っていると、
雅は、系図の紙を征四郎の前に差し出しながら
無表情で征四郎を見ている
「さぁ------。 兄さん-----?
行きましょう-----?」
「(-------...)」