おめぇ握り寿司が食いてえ

様々な小説を紹介

「血の家」 五十九雫

f:id:sevennovels:20211206224843j:plain

「じゃあ、お前は俺を

 

  御代に推すって事なのか-----?」

 

「ええ-----、 そう------、」

 

「(コイツ-----、)」

 

「-----どうしたの、兄さん------?」

 

「(・・・・)」

 

征四郎が雅を見ると、雅は

 

冷え切った笑顔を浮かべている

 

「(-----"コイツ"...)」

 

先程まで、自分、そして

 

尤光たちを騙していた相手だ。

 

それが手の平を返したように

 

今は、自分が御代になる事を

 

後押しすると言ってきている

 

「("信用"できるのか------)」

 

「すでに、征佐のいる鳰部の集落に、

 

  私の部下が車を手配しています------」

 

「鳰部・・・」

 

「鳰部だと?」

 

「・・・・?」

 

雅の言葉に、善波が疑った様な顔付きを浮かべる

 

「あんな、誰も住んでいない様な場所に

 

  "征佐"はいるってのか?」

 

「・・・・」

 

"ガサ"

 

雅はテーブルの上に置かれていた、

 

ダムの村、鴇与の村で民家から拾ってきた

 

"系図"を征四郎、そして善波の前に差し出す

 

「-----ほら、これ...」

 

「どれ。」

 

「・・・・」

 

雅が差し出した系図を善波が覗き見る

 

「左次郎...征和...

 

  ああ、尚佐の祖父さんはここか...」

 

「-----その下を見てみて」

 

「・・・・・」

 

"征佐"

 

「ああ、確かに、ウチの親父の下に

 

  俺たちの名前、そして、

 

  この、征佐の名前が書きこまれてるな」

 

「・・・本当か?」

 

"ガサ"

 

征四郎は、善波が持っていた系図を手に取る

 

「(・・・

 

   尚佐の子、"征佐"...)」

 

「そして、こっちの書類には

 

  その征佐の事が書かれていたわ...」

 

"ガサッ"

 

雅は、もう一枚の紙を取り出す

 

「------何だって、その征佐は

 

  わざわざこの叶生野の屋敷から離れた

 

  鳰部の集落何て場所に住んでるんだ?」

 

「-----どうやら...」

 

「・・・・・」

 

雅が手にしていた書類をめくる

 

「この、征佐は、

 

  私たち、尚佐のお祖父さまの実子より

 

  早くに生まれた様だけど...」

 

「じゃあ、俺たちの兄貴って事になるのか?」

 

"パラ....

 

「どうやら、その様ね-----。

 

  だけど、この"征佐"は

 

  生まれつき体が良くなくて、

 

  それを不安に思った尚佐のお祖父さま、

 

 そしてお祖母さまが、この征佐を

 

 鳰部の村にある、人目の付かない

 

  館の中に住まわせる事に

 

 したらしいの-----」

 

「・・・?」

 

「どうされたの------?」

 

「・・・・」

 

雅が言っている事がよく分からない。

 

「(鳰部-----?)」

 

征次の話によれば次の御代になるのは自分で、

 

征佐の話などまるで話に出て来ていなかった

 

「とにかく-------」