「血の家」 五十九雫
「じゃあ、お前は俺を
御代に推すって事なのか-----?」
「ええ-----、 そう------、」
「(コイツ-----、)」
「-----どうしたの、兄さん------?」
「(・・・・)」
征四郎が雅を見ると、雅は
冷え切った笑顔を浮かべている
「(-----"コイツ"...)」
先程まで、自分、そして
尤光たちを騙していた相手だ。
それが手の平を返したように
今は、自分が御代になる事を
後押しすると言ってきている
「("信用"できるのか------)」
「すでに、征佐のいる鳰部の集落に、
私の部下が車を手配しています------」
「鳰部・・・」
「鳰部だと?」
「・・・・?」
雅の言葉に、善波が疑った様な顔付きを浮かべる
「あんな、誰も住んでいない様な場所に
"征佐"はいるってのか?」
「・・・・」
"ガサ"
雅はテーブルの上に置かれていた、
ダムの村、鴇与の村で民家から拾ってきた
"系図"を征四郎、そして善波の前に差し出す
「-----ほら、これ...」
「どれ。」
「・・・・」
雅が差し出した系図を善波が覗き見る
「左次郎...征和...
ああ、尚佐の祖父さんはここか...」
「-----その下を見てみて」
「・・・・・」
"征佐"
「ああ、確かに、ウチの親父の下に
俺たちの名前、そして、
この、征佐の名前が書きこまれてるな」
「・・・本当か?」
"ガサ"
征四郎は、善波が持っていた系図を手に取る
「(・・・
尚佐の子、"征佐"...)」
「そして、こっちの書類には
その征佐の事が書かれていたわ...」
"ガサッ"
雅は、もう一枚の紙を取り出す
「------何だって、その征佐は
わざわざこの叶生野の屋敷から離れた
鳰部の集落何て場所に住んでるんだ?」
「-----どうやら...」
「・・・・・」
雅が手にしていた書類をめくる
「この、征佐は、
私たち、尚佐のお祖父さまの実子より
早くに生まれた様だけど...」
「じゃあ、俺たちの兄貴って事になるのか?」
"パラ....
「どうやら、その様ね-----。
だけど、この"征佐"は
生まれつき体が良くなくて、
それを不安に思った尚佐のお祖父さま、
そしてお祖母さまが、この征佐を
鳰部の村にある、人目の付かない
館の中に住まわせる事に
したらしいの-----」
「・・・?」
「どうされたの------?」
「・・・・」
雅が言っている事がよく分からない。
「(鳰部-----?)」
征次の話によれば次の御代になるのは自分で、
征佐の話などまるで話に出て来ていなかった
「とにかく-------」