「血の家」 六十七雫
「な、ナニ? ソレ-----」
「ピアノ線か------?」
「・・・・」
目の前に張られたピアノ線を見て
戸惑っている二人を見て征四郎が口を開く
「今までの、尤光兄妹の行動----
そして、雅のさっきの妙な態度を考えれば
この館に罠があるかも知れないと言う事は、
ある程度想像が付く------」
「ゆ、尤光達が?」
「な、ナニよ、ソレ?」
善波、そしてジャンは征四郎の言葉を聞いて
根が張った棒の様にその場に立ち尽くす
「先程の、近藤から渡された紙-----、」
「・・・これの事か?」
ズボンのポケットから善波が茶色い封筒を取り出す
"雅 尤光 鳰部"
「・・・・この、封筒の紙に書かれた
言葉から考えれば、
おそらく、この紙を書いた人物は
俺達にあの二人の事を
警告してたんじゃないか?」
「・・・じゃあ、このピアノ線は
尤光たちがやったって言うのか?」
「(・・・・)」
善波の言葉を聞いていないのか、征四郎は
地面にしゃがみ込み
手に取ったピアノ線を見ている
「-----尤光たちは、鷸原の方に
向かったんじゃないのか?」
「・・・・」
先程、二瀬川の橋を越えて自分達とは反対側、
東側の鷸原の集落の方に向かって
尤光たちは歩いて行った筈だ
「向こうに行った筈のあいつらが
ここに、罠を仕掛けたって事か?」
「-----それは分からない。」
「・・・だったら、誰がここに
罠を仕掛けたって言うんだ?」
「....ククククク」
「セイシロー....」
「(この罠が、尤光たちが仕掛けた物-----、
そして、雅は、まだこの先には
立ち寄っていなかった筈だ-------
そうなれば、答えは一つしかない...)」
"すでに尤光たちはこの館の近くにいる"
「....ククククク」
「せ、征四郎くん?」
「(となると-------、)」
征四郎は、先程自分達に携帯を持っているかどうか
念入りに尋ねていた雅の事を思い出す
「・・・・」
善波が、自分達が歩いて来た方の通路に目を向ける
「尤光たちがここに罠を仕掛けてるとしたら...
-----雅も危ないんじゃないか?」
「....ククククク」
「セイシロウ?」
"スッ"
座っていた征四郎が立ち上がり、二人を見る
「俺達をここに連れて来たのは雅だ
そして、この場には尤光たちが仕掛けた
罠がある-----、
そう考えれば...」
「-----雅と尤光たちは
繋がってるって事か?」
「-----間違いない」
「・・・・っ」
「どうしたんだ? 善波さん」
善波が、何かに気付いたように
自分のアゴに手を当てる
「------携帯...」
「ケイタイがどうしたネ?」
「い、いや、雅は、俺たちの携帯を持って
車の方に戻ってったろ?」
「-------!」
「この鳰部の集落は、
二瀬川の橋を越えた場所にある
他の土地から切り離された場所だ」
「・・・そうなると...」
"ダダッ!
「せ、征四郎くんっ!?」
善波が言葉を終える前に、
征四郎が館の入り口の方に向かって走る!