おめぇ握り寿司が食いてえ

様々な小説を紹介

「血の家」 四十八雫

f:id:sevennovels:20211201165206j:plain

「じゃあ、今、君の家に頼んで

 

  写真を取り寄せてる所なのか?」

 

「------ええ。」

 

善波の部屋で、征四郎は

 

テーブルの椅子に座りながら

 

窓の側に立っている善波を見る

 

"チチチチチチチ..."

 

窓の外に目を向けると、朝の光が差す中

 

何の鳥かは分からないが

 

一羽の鳥が鳴いているのが見える

 

「(あの写真-------、)」

 

昨日山奥の集落で見た尚佐が写っていた写真。

 

「(右側に写っていたのは

 

   確かに尚佐だった...

 

   だが、その隣に写っていたのは....)」

 

征四郎の頭に、尚佐の左側に写っていた

 

男の顔が浮かんでくる

 

「(あの、左側に写っていた男、

 

   どこかで見た様な気が....)」

 

曖昧な記憶を頼りにすれば見た事がある様な

 

写真の左側に写った人物に何かを思ったのか、

 

実家の兄征由に頼んで、

 

征四郎は鴇与家の親族関係の写真を

 

全て送ってもらう様に手配していた------、

 

「しかし------、」

 

窓から善波が向き直る

 

「昨日見た写真が、尚佐-----、

 

 ウチの親父だったとしたら・・・

 

  何だって親父の写真が

 

 あんな場所にあるんだ?」

 

「・・・・」

 

昨晩、善波と遅くまで

 

話していた時に二人が出した答えは

 

"あの家に尚佐が住んでいた"

 

"あの家に尚佐に関係のある人物が住んでいた"

 

二人はそう考えたが...

 

「・・・それに、雅----、

 

  あれから、この叶生野の屋敷に

 

 姿を見せていない様だが...」

 

「・・・・」

 

「(あいつら、俺たちがあの写真を

 

  見つけるより先に、

 

   あの集落から早々と

 

  立ち去って行ったな...)」

 

征四郎の頭では、尚佐が

 

あの集落にいたと言う事実は

 

かなり重要な事実で、あの集落で

 

それ以上に何か他の重要な事があるとは思えない

 

「(そう考えれば-----...)」

 

一抹(いちまつ)の不安が

 

征四郎の頭に過る

 

「(俺達が、見つけた"事実"より、

 

   あいつら、雅たちが見つけた

 

   "事実"の方が更に重要な

 

   "事実"なんじゃないか....)」

 

「・・・・」

 

そうだとすれば雅たちが

 

すぐに集落から引き返したのも頷ける

 

「どうする? 今日も、あの集落に行くのか?」

 

「------いや、」

 

「...何でだ? あの集落には

 

  まだ何かありそうな気がするが...」

 

「確かに、それもそうだが...」

 

「だったら何だ?」

 

「それより、昨日の、征次------、」

 

「ああ、そう言えば、一昨日、

 

  あの集落に入る前に、俺たちの所に

 

  来てたな」

 

「あの、征次は、俺たちに、

 

  あの集落の存在を隠していた------」

 

「------奴は、

 

  "何か"知ってるって事か?」

 

「------ええ。」

 

"コン コン"

 

「・・・・?」

 

二人が話をしていると、部屋のドアを

 

ノックする音が聞こえてくる

 

「-----何だっ!」

 

「近藤で御座います------」

 

「入れ」

 

「ガチャ」

 

"カッ カッ カッ カッ...."

 

「何だ? 何か用か?」

 

ドアの外から、近藤が部屋の中にいる

 

善波、征四郎の傍まで歩いてくる

 

「いえ-----、

 

  すでに、尚佐御大が亡くなられてから、

 

 数日がお経ちになりました...」

 

「そうだな」

 

「今、この叶生野の村の中には、

 

 その訃報(ふほう)を聞きつけて、数多くの

 

  我が叶生野の傘下、そして

 

  関連した企業の方たちが

 

  集まってきております-----」

 

「・・・ああ 藤道のトコにも集まってたな」

 

「------左様で御座います...」

 

「それが何なんだ?」

 

目を伏せている近藤が面倒だと思ったのか、

 

善波が早口でまくし立てる

 

「あまり、皆様方に日を取らせては

 

  色々差支(さしつか)えが

 

  御座いましょう...」

 

「-----それもそうだな」

 

「従って、そろそろ、葬儀の日取りを

 

  お決めになられた方が

 

 宜しいのではないかと...」

 

「・・・確かにそうだな。

 

  だが、普通ならば、こういう事は

 

  次の御代が決めるモンなんだが...」

 

「その通りで御座います------、」

 

前代が亡くなり、次の御代が誰か

 

定まっていない以上、

 

葬儀の日取りを決める様な

 

決定を下せる人間が今、

 

この叶生野荘には存在していない

 

「とりあえず、今回は

 

  尚佐さまの長子である善波さまが

 

 葬儀の日取りをお決めに

 

 なられるのが宜しいかと...」

 

「お、俺がか?」

 

「-----そうで御座います」

 

「・・・日取りと急に言われてもな」

 

「・・・・」

 

善波が困った様な表情を見せると

 

近藤は、すぐに言葉を返す

 

「すでに、こちらで日取りの方は

 

 ある程度決めております------」

 

「-----そうか」

 

「従って、善波さまには当日の段取りや

 

  その他の必要な事について、

 

  決済して頂ければと...」

 

「-----分かった。」