「血の家」 五十六雫
「ウチの祖父さんだ------、」
「じゃ、じゃあ、
この左側に写っているのが、
安永閥の長、
お前の祖父さんだって言うのか!?」
「------ああ...」
"パサッ"
総司は、握りしめていた写真を
テーブルの上に放り投げる
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
「・・・・」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
しばらく沈黙が続いた後、
ある程度今の状況が飲み込めたのか
禎三、そして総司は
少しずつ今の状況について話し出す
「しかし、まさか征四郎くんが
尚佐御大の息子だとは------」
「カチャ」
"ズズズ..."
「どうやら、そうみたいだな----」
珈琲のカップに口をつけながら
善波はカップ越しに総司を覗き見る
「-----そういや、その封筒は何だ?」
「-----ああ、」
善波は、先程近藤から渡された茶封筒を手に取る
「-----どうやら、俺と征四郎くん宛てに
届いたものの様だが------」
「何が書かれてるんだ?」
「---------、」
"ガサッ"
「(------...)」
封筒の中に紙のような物が入っているのを見て
征四郎の頭に、以前、善波の車の前に
置かれていた封筒の事が浮かんでくる
「-------これは...」
"ガサッ"
「?」
「見てみろ-----、」
「・・・・?」
封筒の中に入っていた
一枚の白い紙を、善波が全員に見える様に
テーブルの上に放る
「これは・・・」
"雅 尤光"
「これは-----」
「お前の兄妹のだろ?」
「-----まあ、そうだろうな...」
総司と禎三の言葉に、善波が言葉を返す
「ど、どういう意味だ?」
「-----サングラスの男...」
「-----え。」
総司が、気の抜けた様な表情で征四郎を見る
「そうでしょう。
この間善波さんの車の前に置かれていた
茶封筒、そして今まで
何回か目にしていたサングラスの男----」
"ガサッ"
「"コイツ"は、その、
"サングラスの男"が、
俺たちに宛てた物だってのか?」
「さ、サングラスの男?」
「状況から考えれば、
まず間違いない。」
「"雅"-------」
"パラ...."
善波の手元から零れ落ちた
一枚の白い紙に書かれた
"雅 尤光"
の文字が、葉の様に揺れながら
床へと落ちて行く-----