「血の家」 五十四雫
「【そうか、分かった-----、】」
「ガチャ」
「何か分かったのか?」
「・・・・」
善波の部屋のソファーに座りながら
携帯を切った征四郎に、善波が視線を向ける
「いや、今、実家の征由に
鴇与の系図の確認と、
尚佐御大の事について
それと無く聞いてみたが...」
「・・・・」
征四郎の口振りから
あまり大した事実は無いと察したのか、
善波は俯(うつむ)いてテーブルの上に乗っている
灰皿を見ている
「・・・・」
「しかし...」
下を向きながら、善波が
征四郎に向かって口を開く
「もし、征次の話が本当で...
ウチの親父、尚佐が、
征四郎くんの父親だとしたら------、」
「・・・・」
「一体、どうなってるって言うんだ?
俺たちは、兄弟って事になるのか?」
「兄弟-------、」
征四郎は、善波の顔を見る
「・・・悪い冗談だ」
"コン コン"
「・・・・?」
「近藤で御座います-------、」
「ああ、入れ」
「ガチャ」
「善波!」
「------総司か!?」
「安永家の総司様、そして、
藤道會の禎三様が
お見えになられました-----」
部屋の扉が開くと、近藤と共に
安永閥の次期当主である
安永 総司、
そして、その横に藤堂會の総帥である
藤道 仁左衛門の息子の、禎三が部屋に入ってくる
「------どうしたんだ?」
総司は落ち着いた素振りで、善波に視線を向ける
「いや、そろそろ、
尚佐御大の葬儀の日取りが
決まったと聞いてな...」
「俺達も、いつまでもこの叶生野荘に
いられる訳でも無いからな」
総司の後ろにいた禎三が、征四郎が座っている
ソファーの隣に腰を下ろす
「ああ、征四郎くん。」
「-----どうも。」
「それと、こちらが------」
"スッ"
総司、そしてソファーに座っている
禎三の間を抜けて近藤が、
善波の元に進み出て一枚の茶色い封筒を手渡す
「------何だ、これは?」
近藤から手渡された何も書かれていない
茶色い封筒を、善波が近藤に向かって差し出す
「-----今朝、屋敷の郵便入れに
その封筒がありました------、
どうやら、善波様、そして
征四郎様あての様ですが...」
「・・・・?」
"善波、征四郎"
「ああ、裏側に俺たちの名前が書いてあるな」
「何だ? ソイツは?」
禎三が、善波が手に持っている茶封筒を見る
「-----さあな、分からん。」
"パサッ"
善波は、投げ捨てる様に封筒を
テーブルの上に置くと、そのまま言葉を続ける
「-----禎三、そして総司が
ここに来たって事は、
葬儀の日取りはもう決まったのか?」
「-------、」
近藤は、少し間を置くと
部屋の中にいる全員に向かって口を開く
「はい--------。
色々、この叶生野荘に集まっている
我が傘下の企業や、関係者の方たちの
事情を察すると、葬儀の日取りは、
2日後。 その日取りが宜しいかと-----」
「2日後か-------。」
「いががで御座いましょう-------....」
「どう思う? 征四郎くん?」
善波が、征四郎をチラリと見る
「-----どの道、長く日を空けても
この場所に集まっている人間の都合もある。
その辺りが妥当な所でしょう」
「そうか...
オイ。 近藤。」
「はい-------、」
「葬儀の日時は、2日後に決まった。」
「--------、」
「詳しい仔細は全部お前に任せる。
そっちで段取りを決めといてくれ」
「かしこまりました-------、」
「ガチャ」