「血の家」 五十雫
「そうですか-------」
「ああ、そうだ」
"コポコポコポ...."
征次は、目の前の
囲炉裏(いろり)を囲んで座っている
善波、そして征四郎に、おそらく
この焼き場で作ったと思われる湯のみに
茶を入れ、二人の前に差し出す
「お二人とも、あの、"村"へ
お入りになられましたか------」
「スッ」
征次は、囲炉裏を挟んで
征四郎、善波に向かい合う様に
座布団の上に腰を下ろす
「あの、村の中の民家....」
「・・・・」
「あの村の民家の中には、
俺の親父、"尚佐"の
写真があった-------」
「・・・・・」
"ズズズ..."
「・・・・」
善波に視線を向けず、征次は
ただ、下を向きながら湯飲みの中の
茶を啜(すす)っている
「あんな山奥の打ち捨てられた村の中に
親父の写真があるのには
何か、理由があるんだろう...」
「-----それを、何故
私にお聞きになるのですか」
征次が、湯飲みから口を外し
善波と征四郎を見る
「------征次さん」
「-----はい」
征次が征四郎の方に向き直る
「あなたは、俺たちが
あの集落周辺の場所にいた時、
後から、遅れて
あの場所に駆けつけて来た...」
「------だから何でしょう」
「・・・あなたは、あの時、
まるで、あの、ダムの村を隠すように
俺たちをあの場所から
遠ざけようとしていた...」
「・・・・」
「と言う事は、アナタは、
あの村の事を知っていた-------
そうでしょう?」
「・・・・」
"スッ"
隠すつもりも無いのか征次は、
すぐに言葉を返す
「そうです------」
二人から背を向け、征次は、
部屋の飾窓から見える庭に視線を向ける