おめぇ握り寿司が食いてえ

様々な小説を紹介

「血の家」 五十雫

f:id:sevennovels:20211202150921j:plain

「そうですか-------」

 

「ああ、そうだ」

 

"コポコポコポ...."

 

征次は、目の前の

 

囲炉裏(いろり)を囲んで座っている

 

善波、そして征四郎に、おそらく

 

この焼き場で作ったと思われる湯のみに

 

茶を入れ、二人の前に差し出す

 

「お二人とも、あの、"村"へ

 

  お入りになられましたか------」

 

「スッ」

 

征次は、囲炉裏を挟んで

 

征四郎、善波に向かい合う様に

 

座布団の上に腰を下ろす

 

「あの、村の中の民家....」

 

「・・・・」

 

「あの村の民家の中には、

 

  俺の親父、"尚佐"の

 

  写真があった-------」

 

「・・・・・」

 

"ズズズ..."

 

「・・・・」

 

善波に視線を向けず、征次は

 

ただ、下を向きながら湯飲みの中の

 

茶を啜(すす)っている

 

「あんな山奥の打ち捨てられた村の中に

 

  親父の写真があるのには

 

  何か、理由があるんだろう...」

 

「-----それを、何故

 

 私にお聞きになるのですか」

 

征次が、湯飲みから口を外し

 

善波と征四郎を見る

 

「------征次さん」

 

「-----はい」

 

征次が征四郎の方に向き直る

 

「あなたは、俺たちが

 

  あの集落周辺の場所にいた時、

 

  後から、遅れて

 

  あの場所に駆けつけて来た...」

 

「------だから何でしょう」

 

「・・・あなたは、あの時、

 

 まるで、あの、ダムの村を隠すように

 

  俺たちをあの場所から

 

 遠ざけようとしていた...」

 

「・・・・」

 

「と言う事は、アナタは、

 

  あの村の事を知っていた-------

 

  そうでしょう?」

 

「・・・・」

 

"スッ"

 

隠すつもりも無いのか征次は、

 

すぐに言葉を返す

 

「そうです------」

 

二人から背を向け、征次は、

 

部屋の飾窓から見える庭に視線を向ける