「血の家」 四十七雫
「・・・いないか...」
「カチャ」
「カチャ」
征四郎たちが、山奥の集落から
叶生野の屋敷へと戻り応接室へ入ると、
そこには尤光兄妹の姿しか見えない
「(さっきの集落からはすでに雅の姿は
無くなってた筈だが....)」
先程、自分達と一緒に集落を訪れていた
雅たちの車は、征四郎たちが
集落から出る時には、すでに集落の中から
姿を消していた
「(・・・・・)」
「ガタ」
この場に雅がいない事に
何か焦りの様な物を感じながら、
善波と共に、征四郎はいつも座っている
テーブル席に腰を落ち着ける
「・・・今日は
神代の集落に行ってたみたいだな?」
「-----明人...」
「おいおい、昨日も、何か不審な
事故が起きたばかりなのに
今日も外に出たりしたら、
危ないんじゃないか?」
「(この野郎・・・・)」
「-----もしかしたら、
お前が乗ってるバイクが
「ドカン!」なんて事も
あるかもな・・?」
「・・・・」
「どうした? 浮かない顔して?」
「-----いえ、」
すでに、征四郎は、ここの所
自分達の身の回りに起こっている
いくつかの事件や事故は
叶生野一族の誰かが仕掛けたと思っている
「あまり、頑張りすぎるのもいいが
頑張りすぎると------」
「どうなるって言うんだ?」
「.....ククククク」
「-------...」
明人は不気味な笑みを浮かべると
征四郎たちのテーブルから
元のテーブルへと引き返す
「なんなんだっ アイツはっ!?」
「-------、」
「まったく、いつの間にあんな暗い性格に
なっちまったんだろうなっ!?」
「・・・・」
どうやら、自分の兄弟だからなのか、
それとも、人を疑う事を知らないのか
善波は明人に対して疑う素振りを見せず、
まるで子供を相手に叱りつける様な表情で
明人を見ている
「------食事で御座います」
「・・・ああ」
「カチャ」
「(-------...)」
近藤の言葉を横に聞きながら、征四郎は
この場にいない雅の事について考えていた