「血の家」 六十六雫
"コッ コッ コッ コッ....
「さっきの雅、何か、
おかしくなかったか----?」
征四郎が、自分の少し先、
二階の通路を歩く善波に後ろから話し掛ける
「ああ? そうか?」
「・・・・」
「ウォウ」
「------ジャン?」
"パッ パッ"
ジャンは、目の前の通路の壁と壁の間に
張っている、蜘蛛の巣を手で払う
「お前は背が高いからな....
俺と征四郎くんはそこの蜘蛛の巣には
かからなかったぞ?」
「セがタカいのも、
あんまりいいことナイネ...」
「("蜘蛛の巣"....)」
「こんな所に、人なんているのか...?」
「・・・・」
"ザッ ザッ ザッ ザッ....
「全くネ....」
前を歩く善波とジャンは、何か文句を言いながら
二階の通路を奥へと向かって進んで行く
「(雅、尤光....
!!!)」
「ナニ、 また、クモのス-----?」
「------止まれ」
「?」
目の前の蜘蛛の巣を手で払おうとしていたジャンを
征四郎が後ろから呼び止める
「な、ナニ?」
「どうしたんだ? 征四郎くん?」
「・・・・」
「------下がれ」
「・・・・?」
"ザッ"
ジャンは、征四郎の言葉に無言で
足を一歩後ずらさせる
「(-------!)」
征四郎は、ジャンが手で払おうとしていた
キラリと光る、一本の蜘蛛の巣の糸に目を向ける
「(こいつは....)」
雅、そして、尤光たちの様子------、
そして、近藤から渡された茶封筒-----
「(・・・・)」
征四郎の頭に、ある一つの
"勘"の様な物が
浮かび上がって来ていた
「(クククク...知能の浅い奴らだ-----」
鴇与(ときよ)家の三男、征四郎は、
薄暗い館の通路の壁と壁の間に
張り廻(めぐ)らされたピアノ線を見て
それが、叶生野(とおの)家の別の家族、
一族の誰かがが仕掛けた
罠だと言う事に気付く....
「な、何? それ?」
「ピアノ線か-------?」
「・・・・」
征四郎は、自分の目の前に張られた
一本のピアノ線を見て
それが、尤光たちが仕掛けた罠だと言う事に気付く
「(これで、また一歩リード、
って事か....)」
征四郎は目の前のピアノ線を
指で弾(はじ)きあげる
「ククククク....
浅はかな奴らだ....」