「血の家」 四十一雫
「む、村だ・・・」
「こ、こんなトコロニ-----!?」
草や木々に覆われた道の中をしばらく歩くと
突然、征四郎たちの目の前に
まるで異界から取り残されたような
"集落"が現れる------
「こ、これが、さっき言ってた
"ダムの村"って奴か?」
「---------ええ」
「ワァオ-----」
「・・・・」
月明かりに照らされた
草の途切れた、広い集落の中に三人が目を向ける
「こんな場所が-----」
視界の先に、いくつもの道が広がり
その道に沿う様に、ポツリポツリと
民家や家屋がまばらに建っているのが見える
「("人"-------、)」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「おい、車だ! 征四郎くん」
「・・・・」
"鴇与"
善波が叫び声を上げている横で
征四郎が自分の目の前にある、
打ち捨てられた廃屋の門の前にある
表札の埃を払うと、
そこには、
"鴇与"
の文字が書かれている
「(前原、神代、樹、
そして、鴇与------)」
征四郎は今までこの集落の中で
目に入って来た、民家の表札に書かれた
名前を頭の中に思い浮かべる
「な、何なんだ、この場所は-----」
「このバショが、カミにかかれてた
バショってコト------?」
「・・・・・」
「しかし、大分広いな....」
盆地に似た、
山間(やまあい)に囲まれた
集落に入ってから三十分程。
「...空き家みたいのが多いみたいだな」
「家の中に何かあったりは?」
「いや、あまり物とかが
置かれてる様な感じでも無い。
二、三軒そこら辺りの民家に入ってみたが
中は埃だらけで、人が住んでる様な
気配は無い様だ。」
「・・・・」
"10:25"
「(大分、時間も遅くなったな...)」
「・・・・」
「ワァオ! セイシロー!
バイクがあるよ!」
「この、集落みたいなのは
かなり奥の方まで続いてるみたいだぞ...」
善波が、自分が立っている遥か先の
集落の外れの方に目を向ける
「-----善波さん。」
「・・・何だ?」
「今日は、一旦ここから引き返して、
この場所を探すのは明日にしないか?」
「そうだな...」
善波が携帯の時計をチラリと見る
「今日はもうかなり時間も経ってるしな....」
「この村の中はかなり広そうだ」
善波は、集落の中を見渡す
「そうだな、とりあえず、今日はこの辺りにして
明日日をあらためてここに来るとするか」
「-----その方がいい」