「血の家」 二十六雫
「じゃあ、その、征和の名前の文字を取って
この神代の人間は
"征"の字を使う事になったのか...」
「そうでございます」
善波の言葉を聞いて、征次は
自分の手元にある別の水色の皿を手に取る
「どうやら、尚佐さまの遺言では
次の御代は、征佐と名乗る
方の様ですが-----」
「征佐と名乗る人間は、
この神代の集落にはいないんだろう?」
「残念ですが...
この集落は人もそこまで多くない。
私の知る所では、
"征佐"と言う名前の人間を
この集落では存じ上げておりません」
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「ああ、そう言えば-----」
「何でしょう」
征四郎は、この神代の集落で
一つ、気になった事を思い出す
「この、神代の集落の中では
何か、その、使われている名字に、
特定の偏りみたいな
物がある様な気が------」
「お気づきになられましたか」
"鷺代"、"神代"、"山羽"、
"鳥井"、"与田"、"鴇矢"....
「何か、こう、代や、与、
そして鳥に関係する様な姓を使ってる
人間が多い様な・・・」
神代の集落の中で見た
所々の家の表札に書かれていた
名字の事を征四郎は思い出す
「その通りです-----、
この辺りは、山間の景色が
中々よろしいせいか、
この神代の集落に移り住んだ
我々の祖先は、征和様が
鳥をお飼いになられてた事、
そして、この辺りの鳥の名前に関する名に、
征和様の旧姓である、
神代の"代"の字を取り、
その姓に付けている者が
多いのです」
「なるほど」
「・・・・」
「じゃあ、この神代集落の人間に
ある程度共通した様な名字や名が使われてるのは
その、征和から取ったって事なのか...」
「そうでございます」
「・・・・」