「吉田と川越」(新)
「吉田と川越」
第一話
「ここが...」
「"ゲート"って事か?」
魔界に繋がるゲートを発見した俺と川越は、
この軽井沢にあるマルサールの存在を追って
ようやくここまでたどり着いた
「ッ!・・・」
「痛むのか?」
ゲートを閉じるためとは言え
今まで"力"を解放させ続けてきた結果
俺の体には魔走りが走り、
激痛で寝る事もままならなくなっていた
「大丈夫だ、川越---」
川越の心配を他所(よそ)に、
俺は、目の前にあるゲートを睨みつける
「本当に、こいつが、"奴"なのか?」
「さあな」
"ピンッ"
川越は、吸っていた煙草を地面に投げ捨てると
学生服の襟(えり)を正す
「フハハハ!」
"ジャキッ"
空間の裂け目から聞こえてきた声に
剣を構える!
「吉田! そして川越!
貴様らよくもここまで
辿り着きおったな---」
「佐々木ッ!」
「おっと、俺に"力"を使おうとしても
無駄だぞ?」
フレイアの腕輪をかざしながら
"力"を開放させようとしている川越を見て
俺は、両手を広げる
「無駄だ---
奴の足を見ろ」
「あ、あれは--」
"スパイリーの足飾り"
川越が、フレイアの腕輪を持っているなら
今、佐々木の足元にある
スパイリーの足飾りには
"力"を開放させることはできない---
「・・・何の目的だ」
「フン」
上空を浮遊している佐々木を
恫喝(どうかつ)するように俺は声を発する
「貴様ら、ナジュレムのゲートを潜(くぐ)り、
魔界へと行くつもりだろう?」
「・・・・!」
「ふははっ
隠したところでムダだ!
お前たちのやる事など、お見通しよ」
「そ、そいつは---」
上空に浮遊している佐々木が
懐から緑色に光った石を取り出す
「コルメタタスの魔石---」
「フンっ」
「って事は、お前、
俺たちの味方になるって事か?」
「スゥウウウウウ」
上空に浮遊していた佐々木が
俺達がいる地上までゆっくりと降りてくる
"ストン"
地面に降り立った佐々木は
川越、そして俺を睨みつける
「貴様ら、"解放者"としての
資質は頼りないが、
"力"を使える事だけは認めよう」
「・・・だから何なんだ?」
佐々木はコルメタタスの魔石を懐へとしまう
「お前らに従うのは癪(しゃく)だが、
俺もマルサールには借りがある。
・・・このゲートの中に
ついて行ってやろう」
「おい」
川越が、こっちを見てくる
「ヤツは、信用できるのか--」
「・・・・」
確かに、今まで何度も俺達と
激しい戦いを繰り広げてきた佐々木だ。
それが、今さら手の平を返したように
俺達と同行するとは---
「どうした? お前は"コイツ"
の力がいるんじゃないのか?」
「("スパイリーの足飾り"---)
・・・仕方ない、奴も一緒に、
亜空間の中に入るぞ」
「よ、吉田っ」
「ガハハッ そうこなくっちゃな
頼むぜ? 吉田? 川越?」
佐々木をパーティーに加え、
俺と川越はゲートの装置を起動させる...