おめぇ握り寿司が食いてえ

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「きつねうどん」 十二きつね

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「おい! 英孝!」

 

「・・・・」

 

今日も、定時の23時で会社が終わり、

 

ロッカールームで、同僚が話しかけてくる

 

「ギャンブル! ギャンブルしないか!

 

  競艇とか! 競馬とか!

 

  スロットもあるぞ!?」

 

「・・・・」

 

「スッ」

 

英孝は、同僚を無視して、

 

そのままロッカールームから立ち去る

 

「・・・ギャンブルしないのか」

 

「ガチャッ」

 

「(上司・・・)」

 

「英孝っ!?」

 

ロッカールームを開けると、

 

そこには何人かの上司の姿が見える

 

「健康っ! 健康っ! 

 

  健康を取るにはっ

 

  ・・・栄養素栄養素栄養ッ!?」

 

「・・・・!」

 

「なあ!? 栄養素っ栄養素っ栄養素!?」

 

「・・・・」

 

「スッ」

 

何を言っているか分からない上司を無視して、

 

英孝は、会社を後にする-----

 

「・・・何だ、アイツ」

 

「ガチャッ」

 

ロッカールームから、先程英孝に話し掛けて来た

 

同僚が出てくる

 

「・・・ギャンブルですよ」

 

「ギャンブル? 

 

  栄養素の事か?」

 

「・・・間違いありませんね」

 

「だったら----!

 

 ----栄養素ッ栄養素ッ栄養素ッッ!」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

会社から離れ、1時間15分程、

 

山道を歩くと、そこには、

 

いつもの、峠の蕎麦屋が見える-----

 

「・・・・、」

 

蕎麦屋の前で、英孝の足が一瞬止まる

 

「・・・・!」

 

「スッ」

 

だが、英孝は、蕎麦屋には立ち寄らず、

 

そのまま、暗い夜の山道を、

 

自宅を目指して歩いて行く-----

 

"ザッ ザッ ザッ ザッ----"

 

「(・・・・・、)」

 

"ザッ ザッ ザッ ザッ-----

 

「ざしゃっ」

 

英孝の足が、坂道の途中で止まる

 

「(・・・・)」

 

そして、英孝は、頭上に輝いている

 

大きな月を見上げる

 

「(・・・・・)」

 

「サァァァァァァァァァァ」

 

風が、流れる

 

「・・・フッ」

 

英孝は、頭上の月を見上げながら

 

一つ、吐息を漏らす-----

 

「("たぬき"が、"きつね"で、

 

   "きつね"が、"たぬき"か------)」

 

"タッ タッ タッ タッ-----

 

英孝は、小走りで坂道をかけ上がって行く

 

きつねうどん(終)