おめぇ握り寿司が食いてえ

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「きつねうどん」 十一きつね

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「(・・・・何だ?)」

 

どうやら、甕の中に入った、

 

"何か"

 

を回し終えたのか、

 

甕の周りを囲んでいた狸と狐たちが

 

棒を回すのを止め、甕の前に並んで座っている

 

白い狐と、黒い狸の周りを、

 

円を描くように取り囲む

 

「(・・・・!)」

 

「ぽんっ ぽんっ ぽんっぽんっ!」

 

「こんっ こんっこんっこんっ」

 

「(・・・・?)」

 

狐と狸が、白い狐と、黒い狸の周りを取り囲むと、

 

二匹の狐と狸は、自分が着ている服の中から、

 

何かを取り出す-----

 

「ガサッ」

 

「("きつね"-----)」

 

まず、最初に、白い狐が、

 

袴の中から、"きつね"を取り出す----

 

"ガサッ"

 

「("たぬき"-------)」

 

続いて、狐の前に正座をして座っていた

 

狸が、懐から、”たぬき”を取り出す----

 

「(“きつね”と、

   “たぬき”------!)」

 

周りを取り囲んでいた狐たちが、

 

大きな丼の様な物を2、3匹で抱えながら、

 

それを、甕の中に入れる

 

「じゃばっ」

 

「・・・・・」

 

続けて、小さな狸たちが器を取り出し、

 

甕の中に、器を入れる

 

「じゃばっ」

 

「ぷぅぅうぅぅううぅぅぅうん」

 

英孝の鼻に、峠の蕎麦屋で嗅いだような、

 

何とも言えない、いい匂いがしてくる

 

「("きつね蕎麦"-----

 

    いや、もしくは、"うどん"----)」

 

小さな狐が、大きな白い狐に向かって、

 

丼を差し出す

 

「・・・ぽんっ」

 

「ガサッ」

 

次に、小さな狸が、黒い狸に向かって、

 

丼を差し出す-----

 

「"たぬきうどん"------

 

   もしくは、"たぬき蕎麦"------)」

 

「ぷぅぅぅぅうううぅぅうん」

 

「ぽんっ!」

 

「(・・・・!)」

 

「こんっ こんっこんっこんっ!」

 

突然、丼を片手に持った白い狐が、

 

鳴き声を上げる

 

「ぽんっ! ぽんっぽんっぽんっ!」

 

合わせたように、丼を持った、黒い狸が

 

鳴き声を上げる

 

「ガチャッ」

 

「("交換"か----?)」

 

「がちゃっ がちゃっ」

 

「ぽんっ」

 

「こんっ!」

 

きつねと狸は、お互いに持っていた器を、

 

互いの座っている地面の上に入れ違いに置く

 

「ズズ...

 

  ズズズズ....」

 

そして、勢いよく、箸で

 

器の中に入った麺をすくい上げる!

 

「ずずッ!」

 

「ずずずずずッ!」

 

狐と狸は、器の中に入った

 

麺を、無心で頬ばる-----

 

「ズズズッ」

 

「ズズズズズズズッ!」

 

「かちゃっ」

 

「かちゃちゃっ」

 

「("きつね"が"たぬき"で、

 

    いや----

 

   "たぬき"が"きつね"----?」

 

「かちゃっ」

 

「ずずずっ」

 

「・・・・・」

 

「かちゃっ かちゃっ」

 

「ずずずずずずずっ」

 

「(-------)」

 

月明かりに照らされた丘の上に

 

狸と狐の食器の音だけが響く

 

「("影"------)」

 

「ずずっ」

 

「ずずずずずずっ」

 

「サァァァアアアアアアアアア」

 

二匹を見ると、英孝のいる大きな木の陰の裏からは

 

狐と狸の影が重なり、一枚の影絵の様に見える

 

「かちゃっ かちゃちゃっ」

 

「ずずっ ずずずっ」

 

丘のすぐ側に月が見えるせいか、

 

二匹はまるで、月の上で兎と並んで

 

うどんや蕎麦をを平らげている様に見える

 

「(・・・・!)」

 

「じゅるっ...」

 

"きつねうどん"と、"たぬき蕎麦"

 

「(食いてぇな…)」

 

いや、"たぬきうどん"と

 

"きつね蕎麦"なのかも知れない

 

「(・・・・)」

 

「かちゃっ かちゃちゃっ」

 

「ずずっ ずずずっ」

 

「(・・・腹減ったな...)」

 

「スッ」

 

英孝は、隠れていた木の陰から離れ、

 

そのまま、元来た道を引き返していく----

 

「ぽんっ ぽんっぽんっ」

 

「こんっ こんっこんっ!」