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「死出密室島連続殺人事件(12)」

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死出島密室島連続殺人事件(12)

 

"全員が犯人"

 

その一言に、

 

先ほどまでどこか他人事だった

 

部員の雰囲気が、一変した

 

国東

 

「・・・

 

 聞かせてもらおうか、並河。」

 

鮎人

 

「まず第一の殺人。」

 

弘也

 

「・・・

 

 真奈美さんの事か?」

 

鮎人

 

「いや、はっきりと他殺だと断定できるのは、

 

 真奈美さんが最初だが、

 

 実際は谷川、都都逸先生は

 

 殺人だ」

 

厨房の隅に横になっている宏美を見る

 

弘也

 

「・・・

 

 て事は宏美先輩が、都都逸と谷川を殺したのは、

 

 故意だったって事か?」

 

鮎人

 

「そうだ

 

 その証拠に、谷川は、死ぬ間際、

 

 「これは事故なんかじゃない」

 

 そう言っていた」

 

弘也

 

「・・・」

 

洋子

 

都都逸先生は?

 

 あれは事故だったんでしょ?」

 

鮎人

 

「・・・

 

 冷静に考えてみろ

 

 たまたまボウガンに触れて、

 

 それが人に向かって飛んで、

 

 たまたま死んだなんてこと

 

 あり得るか?」

 

国東

 

「・・・

 

 だからって、

 

 "絶対に起こりえない"

 

 とは言えないよな」

 

鮎人

 

「ああ。

 

 だからこの2つは俺の推測だ」

 

景子

 

「・・・

 

 推測って。」

 

鮎人

 

「偶然起こりえない確率の事象が、

 

 二度連続して起こる。

 

 これは偏差の域を明らかに

 

 越している」

 

柿崎

 

「・・・

 

 だからって起こりえない、

 

 とは言えないよな。

 

 この世の中を見渡せば、

 

 ありえない確率で起こっている

 

 出来事なんて、むしろ有り触れてるだろ?」

 

鮎人

 

「・・・

 

 だから、推測だ」

 

何か確証的な証拠を掴まれたと思っていた

 

部員たちは、あきれ顔になっている

 

国東

 

「くだらん。

 

 お前の推測に付き合うほど暇じゃない」

 

国東が部屋を出ようとする

 

鮎人

 

「いいのか?」」

 

"110"

 

携帯の画面を国東に見せつける

 

すると、国東は一反出ようとして

 

外に向けた足を、こちらに向き直す

 

鮎人

 

「俺がお前らの事を疑い始めたのは

 

 いつだと思う?」

 

国東

 

「・・・

 

 さあな」

 

鮎人

 

「本田と国木がロビーから

 

 出て行った時だ」

 

国木

 

「・・・

 

 別にロビーから出てったからなんなの」

 

鮎人

 

「あの時他の部員は、

 

 ロビーから出て行く国木と本田を

 

 止めもしなかったよな」

 

柿崎

 

「・・・」

 

鮎人

 

「普通、あんな出て行き方をしたら、

 

 止めたりするものじゃないか?

 

 あの時お前らを見てたら、

 

 まるでそのような素振りが無かった」

 

国東

 

「・・・

 

 馬鹿馬鹿しい

 

 推論だらけだな」

 

国東が皮肉たっぷりに言うが、無視をして話を続ける。

 

鮎人

 

「そして、宏美さんが一人で船を探しに行くと言って、

 

 厨房を飛び出した時だ...

 

 あの時もお前らは、

 

 出て行く宏美さんを止めもせず、

 

 ただ見ているだけだった」

 

洋子

 

「・・・

 

 宏美が犯人の可能性もあったし...

 

 当然じゃない?」

 

鮎人

 

「いや、違うと思う。

 

 あの時お前らは知ってたんだよ」

 

国東

 

「・・・

 

 知ってた? 何を」

 

鮎人

 

「松林の先にある船に、

 

 爆弾が仕掛けてあって、

 

 そこで宏美さんが俺を殺す予定だったことをな」

 

国東

 

「・・・

 

 何で俺たちがそんな事をしなきゃならないんだ?」

 

国東の言う事は当然だ。

 

わざわざ部外者の人間を呼びつけて殺す理由が分からない。

 

鮎人

 

「・・・

 

 簡単だ。

 

 お前らが俺をここに呼んだ理由は、

 

 俺を犯人に仕立て上げ、

 

 他の四人を殺した罪を俺にかぶせるためだ」

 

国東

 

「・・・

 

 何でそんな事をする?」

 

鮎人

 

「・・・

 

 おそらくお前らは、何らかの理由で、

 

 谷川、本田、都都逸夫妻を殺さなければならなくなった。

 

 だが、このままでは、自分たちが疑われてしまう...

 

 だから撮影の終盤に、俺を呼ぶことで、

 

 俺にその罪を着せようとしたんだ。」

 

国東

 

「・・・

 

 あり得ん 全部が全部推測に過ぎんし、

 

 確実な証拠もない

 

 完全におかしくなったとしか思えない。」

 

袋を取り出す

 

鮎人

 

「これでもか?」

 

谷川のカメラを取り出す

 

国東

 

「・・・ッ」

 

鮎人

 

「誤算だったな。

 

 まさか海の中に落ちた谷川と、

 

 カメラが俺の手元にあるなんて」

 

国東

 

「・・・

 

 中を見たのか」

 

鮎人

 

「・・・

 

 ああ」

 

弘也

 

「カメラ? 国東先輩...」

 

景子

 

「あーあ

 

 見られちゃったんだ...」

 

景子がそう言うと、他の部員も観念したように、

 

ポツポツと喋り始める...

 

柿崎

 

「仕方なかったんだよなー 事故だったんだから」

 

J 秋子

 

「・・

 

 べつにダレのせいないネ」

 

洋子

 

「・・・

 

 ちょっとふざけただけだったんだけどねー」

 

鮎人

 

「ふざけるな!」

 

部員全員がハッとした表情を見せる

 

鮎人

 

「人一人殺して冗談で済む訳ないだろ!」

 

弘也

 

「な、なんだよ...鮎人」

 

鮎人

 

「おそらくお前らは、このカメラに写ってる、

 

 死んだ部員を事故死に見せかけようとした。

 

 だが、谷川、本田、都都逸は、

 

 事故では無く、事件だと、

 

 警察に報告すると言った」

 

国東

 

「だから俺たちが殺した?」

 

鮎人

 

「・・・

 

 そうだろうな」

 

国東が立ち上がる

 

「お前一つ忘れてないか?」

 

国東がこっちに向かって歩いてくる

 

その手には包丁が握りしめられている

 

鮎人

 

「・・・

 

 近づくな」

 

国東

 

「今、この島には、お前と、他の部員しかいない」

 

鮎人

 

「・・・

 

 俺を殺すつもりか?」

 

国東

 

「・・・

 

 もともとお前は殺すつもりだったからな」

 

鮎人

 

「救いようがないな」

 

国東が持っている包丁を振り上げる

 

「ガタッ」

 

勢いよく、倒れる

 

だが、倒れたのは、俺ではなく、

 

国東だった

 

「お前ら、何やってるんだ!」

 

国東

 

「な、なんで、警察が...

 

来るまであと二日あるんじゃ」

 

鮎人

 

「さっきホテルに来る前に、

 

 警察に電話しておいた。

 

 「あと二時間もしたら到着する」

 

 ってさ」

 

国東

 

「・・・

 

 お前さえいなけりゃ...」

 

鮎人

 

「因果応報って奴だな」