「吉田と川越」 五OS
「-----よっと」
"ヒョイ"
「・・・何だ? それは?
"テキスト"か何かか?」
「・・・・」
歩いている川越が、V-MONET内の空間で
目の前に落ちていた、大きな、"文字"の様な物を
足を上げて避けたのを見て、佐々木が声を上げる
「-------ああ、どうやら..."අ"
シンハラ語の文字テキストか
何かの様だな...」
「-----シンハラ語?」
V-MONET内の奇妙な、
気味の悪い人肌の様な感触をしたまるで、
腐った動物の肌が剥き出しになっている様な
色をしている、壁や地面に刺さっている、
"එ"、"ක" 、"කු"、"ව"、"ණු"、"ර"、"ස"、"නි"....
様々な形をした、石で出来た様な
文字の塊(かたまり)に佐々木が目を向ける
「ああ、このV-MONET内の空間は
元はインターネット網をベースにして
構築された空間だからな...」
「・・・・」
ナジュレムのゲートを潜(くぐ)った先の、
この空間についてはあまり詳しくは知らないのか
佐々木は川越を黙って見ている
「いわば、俺たちはインターネットの
ホームページや、サイトの中を
歩いている様なもんだ。
・・・たまたま今俺たちが歩いている
この空間がシンハラ語の
インターネットサイトの
空間みたいなもんなんだろう...」
「・・・・」
"ヒョイ"
川越は、目の前にある
自分の腰の高さほどありそうな
"ව"の文字を足で跨(また)ぎながら、
吸っていた煙草を地面に投げ捨てる
「・・・・」
"ザッ ザッ ザッ ザッ...."
「・・・・」
「・・・・」
V-MONET内の奇妙な通路に置かれている
テキスト文章の羅列や
コード文字の海を見ながら、
川越、吉田、佐々木の三人は
雑然としたV-MONET内の空間を
先に向かって足を進ませていく
「とりあえず、ナジュレムのゲートを
潜ったのはいいが...」
「-------、」
"ピンッ"
佐々木の言葉に感心が無いのか、
川越は、手に持っていたタバコの吸い殻を
自分の目の前の通路に刺さっている
"ස"、の文字の脇に投げ捨てる
「マルサールを追って、このV-MONET内に
来たのはいいが...
これから先、お前らはどうするつもりだ?」
「・・・・」
"カタ カタタタタタタタ"
佐々木は、先頭を歩いている
ゴーグルを付けて新型パソコン、
"AISUS-zk9"を無言で叩いている
吉田を見る
"カタ カタタタタタタ..."
「吉田・・・?」
「#]{tサL\ナyウ6.!フエォリdヌ*
0{8oタヤ0ミr[lセNャオウサュhセ
v%pRqウ_1ァカ%'qサ83Wゥe8
ュE<マレ?jTnlゥ*;:yRネDァ]
}ノレモLツキ,L}Gネマル1クfャs{」
「・・・・」
"カタッ カタタタッ"
「(・・・・)」
佐々木が、吉田の方を見ると
吉田は先程、自分の新型パソコンで
この空間内に出現させた、
QOZ-Z-2000の隣で
ひたすらキーボードを打ち続けている
「Hwww/.vo.dd----
アルテ...ビュッケ...
ドゥモス...シングラ...」
"ピッ"
"カタッ カタタタタッ"
「クヒツ}ア87[sレ!WTCf-ISX!
AC5:T[ア2G*キ<トfSFァAエ{
uUルヤa:jオ,ソハトFーoエ$dYゥ
ネDgoヨエC^]%イァnケWBloテル
phセ#yヲ:<Hツヲトラネツモxフユ>」
「p,p,///β、ω...
デュモス・アルケ・ユチ...
AA、@////、O・O。
デテ・ユチ・シングラ....」
"カタッ カタタタッ"
「・・・・?」
何か意味不明な言葉を呟きながら
吉田が片手でパソコンを弾くと、
吉田の脇にいたAliCe(アリサ)が、
奇妙な反応を見せている...
「------何やってるんだ?」
"ピッ"
「------よし。」
「・・・・?」
「場所は分かったのか?」
「------ああ。」
佐々木が不可解な表情を浮かべる中、
吉田は、川越の言葉を聞きながら
自分の新型パソコンの画面の前で
軽い笑顔を見せる
「この空間、FO-2.NET
と呼ばれる名称の様だが、
このFO-2.NETの
ある程度の解析が完了した」
「ほ、ほんとか?」
佐々木が、驚いた表情で
ゴーグルをしている吉田を見る
「ああ...。 この空間は、
マルサールが作り出した空間とは言っても、
マルサールがいる場所からはかなり離れた
このV-MONET空間の
入り口の様な場所だからな...
大したプロテクトも無いし、
ある程度、基本的な越数学の知識、
そして技術があればこの空間内の
大体の構造は分かる」
「オッネyVcbモ$)*6キロツチrgィt
ツイニlォEレBヌィ*Kラセ%4エノJc
3ロtタdヤf5ィラlP$qヘトワメxシ
-Vオセ4,R,{XyW%ロErッホY"
e5キィ?Gネie7f|1gメnルhNゥ」
"ウィィィィィィ"
「・・・・!」
佐々木は、吉田の隣に立っている
目から奇妙な青い光を発光させている
"AliCe"に目を向ける
「どうやら、この先に、
"ダークウェブ"の人間がいる
"サイト"がある様だ...」
「さ、サイト?」
「・・・・」
"パタッ"
吉田は作業が完了したのかゴーグルを外し、
パソコンを閉じる
「このV-MONET内の空間には
俺達と同じ様に、マルサールを追って
何人もの人間が入り込んできている...」
「"ダークウェブ"って奴だな」
"ダークウェブ"
地上、そして、インターネット網の大部分を
支配された人類は、数少ない、
越数学の技術を使いこなせる者を人類から選別し、
その集団を総称して
"ダークウェブ"と呼称する様になっていた...
「じゃあ、このFO-2.NETの中に
人がいるってのか?」
「・・・・」
"ニッ!"
「・・・・!」
ゴーグルを外した吉田は
シニカルな笑みを浮かべると
自分の手にしている新型パソコンに目を向ける
「"コイツ"で解析した所によれば
ここから程近い場所...
歩いて十分程度の場所に、どうやら
人が居住していると思われる
"サイト"がある様だな...」
「そ、そんな事分かるのか?」
「まあ、これも越数学の技術の一つ、
ってトコだな」
「・・・・」