おめぇ握り寿司が食いてえ

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「血の家」 八十四雫

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「安永理事-----、

 

  私の質問に答えて

 

 頂けないかしら-----?」

 

「それは-----っ...」

 

雅の言葉に、総司の言葉が詰まる

 

「この場所に姿を現さない、

 

  そして、御代たる正当な権利も無い----

 

  そんな征四郎を推して

 

  あなたは、なぜ、今、この私に向かって

 

  御代の権利を放棄させるような事を

 

 仰ってるのかしら------?」

 

「・・・・」

 

「そうだっ ここは誰かの失策を論う場ではなく

 

  投票をする場所だっ!?

 

  ------場を弁えろ!」

 

「・・・・!」

 

"カンッ"

 

「------小僧が」

 

仁左衛門が、総司を睨みつけながら

 

手にしていたステッキで机を叩く

 

「・・・・」

 

「お答え頂けないようでしたら、

 

  理事総会を先へと

 

 進まさせてもらいます------」

 

"キュッ キュッ"

 

雅は、自分の部下がホワイトボードに書かれた、

 

征四郎の名前の隣に縦線を書くのを横目に

 

再び、壇上へと戻って行く....

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「雅理事です------」

 

「雅さんに、一票------」

 

「That's Miyabi-------」

 

「・・・・」

 

"スッ"

 

円卓に並んでいた、二十名ほどの

 

理事たちの最後から二番目、

 

「・・・・」

 

"スッ"

 

「それは、私、と言う事ですか?」

 

「・・・・」

 

世界に巨大なシェアを誇る

 

Electronic.E.o.の

 

ロバート・C・レイヴァーが、

 

雅に向かって指を差し、無言で頷くと

 

円卓を囲んだ二十数人の最後の理事、

 

アイザー.Incの

 

シュタイングレナーに向かって雅がマイクを傾ける

 

「それでは、最後の理事、

 

  シュタイングレナー理事-----。」

 

「------Hey.」

 

シュタイングレナーは自分の席の後ろに控えていた

 

通訳に向かって手を差し出すと、

 

「シュタイングレナー理事は、

 

  "ミヤビ"理事を、次の

 

  "Midai"に

 

 したいと言っておりマス-----」

 

「・・・・そうですか」

 

サングラスをした、通訳の言葉に雅が答える

 

「I recommend Miyabi to the next generation.

 

  Considering the will and

 

  the management skills of Director Miyabi,

 

  the next representative of the Tono Group

 

  should be director Miyabi.

 (私は、雅御代を次の御代に推薦する。

 

  遺言書、そして、雅理事の経営手腕を考えれば

 

  次の叶生野グループの代表は

 

  雅理事がなるべきだ)」

 

「------ありがとうございます」

 

"キュッ キュッ"

 

シュタイングレナーの

 

通訳の口から出た言葉を雅が聞くと

 

ホワイトボードの脇に立っていた

 

黒いスーツを着た雅の部下が

 

三つ並んだ"正"の字の横に並んだ

 

"一"の字の下に縦線を書き加える

 

「・・・これで、全ての理事の投票が

 

  集まった様です------」

 

「そ、総司-----!」

 

「・・・・」

 

雅は、ホワイトボードに書き込まれた

 

いくつかの"正"の字を見ると、

 

円卓に向かって振り返り、マイクを手に取る

 

「それでは、投票の結果、

 

  次の御代を決める今回の投票結果は、

 

 私、羽賀野 雅、十七票...

 

  そして、鴇与 征四郎 二票、

 

  更に、叶生野 尤光 三票....

 

  圧倒的多数を持ちまして、

 

  本叶生野理事総会の次の御代は

 

  この羽賀野 雅が、

 

 就くことになります------!」

 

「おおおっ!」

 

「雅理事-----、

 

  いや、"雅御代"か-------?」

 

"パチ パチ パチ パチ"

 

「ありがとうございます------」

 

「お、おい、総司-------、」

 

「・・・・・」

 

「それでは、本会の議題の案件である

 

  次の御代が定まりましたので、

 

  本会は、これにて

 

 閉会とさせて頂きます------」

 

「尤光副会長ではなく

 

  雅理事が次の御代になるとは------、」

 

「Hey! Miyabi! congratulation!

 (雅! おめでとう!)」

 

「雅さん!」

 

「雅理事!」

 

「お、おい、これで終わりか------」

 

「・・・・」

 

理事たちが雅に向かって祝辞を述べるために

 

席を立ち、雅に向かって歩み寄って行くのを

 

禎三、そして総司は、

 

離れた席で呆然と見ている...

 

「Hey! Miyabi! You're fabulous!

 (雅! 驚いたよ! 最高だ!)」

 

「-----彼は何と言ってるの?」

 

英語が話せない雅に向かって、

 

シュタイングレナーが英語で話しかけてくるのを

 

雅は薄っすらと笑みを浮かべながら

 

シュタイングレナーの後ろに立っている

 

通訳に尋ねる

 

「ええ、シュタイングレナー氏は

 

  一言、ミヤビMidaiに、「おめでとう」、

 

  と------!」

 

「Miyabi! I never thought

 

  you would be Midai!

 

  Miyabi!? Miyabi!?

 (雅! まさかあなたが御代になるなんて

 

  思いもしなかったよ! 

 

 雅!? 雅!?)」

 

「え、ええ-----?」

 

文化が違うのか、派手に雅に向かって

 

喜んだような仕草で肩を掴んできている

 

シュタイングレナーに、雅も、

 

満更でも無い様な素振りを見せる

 

「Miyabi----! Miyabi!?

 

  You tell me some?

 (雅----! 雅ッ!?

 

  教えてくれないか!?)」

 

「-----彼は、何と言っているの?」

 

「ええ、「一つ、聞きたい事がある」

 

  と-----」

 

「聞きたいこと--------?」

 

"スッ"

 

「・・・・!」

 

雅が笑顔を浮かべながら

 

シュタイングレナーを見ていると

 

シュタイングレナーは掛けていたサングラスと

 

ターバンの様な帽子を外し雅に目を向ける

 

「-------ジャンッ!?」

 

「ミヤビ、ミダイのザをダマしてシェアするのは、

 

  フェアじゃないよ------!」

 

「まったく、お前みたいのを

 

  邪(よこしま)と言うんだろうな...」

 

"スッ"

 

シュタイングレナーの隣にいた、

 

終始、無言を貫いていた、

 

ロバート・C・レイヴァーがサングラスを外す

 

「ぜ、善波兄さん!?」

 

「な、何だっ!?」

 

「ぜ、善波審議委員長!?」

 

「な、何で-------っ!」

 

「------何で、とは

 

 どういう意味だ-----?」

 

"ベリ"

 

善波が、口髭を剥がしながら、雅を見る

 

「あ、あなたちは、橋の手前で----

 

  --------ッ!」

 

「"橋の手前で"、何だ------!?」

 

「そ、それは------!」

 

「ぜ、善波ッ!?」

 

「・・・・・!」

 

「------総司。」

 

総司が慌てた様子で善波の元へ駆け寄ってくる

 

「な、何でお前、そんな恰好------?」

 

「・・・ああ、この中に入るには、

 

  雅の部下の監視の目が厳しくて、

 

  それで、シュタイングレナーや

 

  レイヴァーと話を通してこの中に入った」

 

「な・・・・」

 

「ど、どういう事だ?」

 

「な、何で善波審議委員長が

 

  あんな格好をしてるんだ-------?」

 

ザワ

 

  ザワ

 

ザワ

 

"コッ コッ コッ コッ....

 

「・・・・」

 

「-------ッ!?」

 

部屋の中が、騒ぎに包まれる中、

 

善波が雅の横を通り抜け

 

少し高くなった壇上に立つ

 

「どうやら、理事総会の議案である、

 

  "御代"の決定については、

 

  すでに可決した様だが-------、」

 

「な、何だ?」

 

「-------善波審議委員長?」

 

「・・・・」

 

善波は壇上から部屋の中に集まっている、

 

理事たちの視線を一身に浴びている事を

 

まるで気にせず言葉を続ける

 

「私、叶生野 善波当理事総会審議委員長は、

 

  今回の、理事総会の可決を、

 

  無効とする事を宣言する------!」

 

「・・・・!」