おめぇ握り寿司が食いてえ

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「血の家」 八十三雫

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「そうなると、だ-------」

 

「・・・・」

 

脇にいる征次を見て、総司が

 

壇上にいる雅を睨みつける

 

「この征次の話だと、

 

 次の御代は、"征四郎"------、」

 

「・・・・」

 

「だが、今、雅理事------...

 

 あなたの話では、自分が次の御代の指名を

 

 受けたと言っている-----、」

 

「・・・・」

 

雅は、冷え切った氷の様な表情を浮かべる

 

「-----、一体、雅代表、あなたは

 

  どの様な道理で、自分に次の御代の

 

 権利があると言ってるんだ-----?」

 

「ガタッ」

 

「お、おい! 

 

 何を言ってるんだ!? オマエは!?」

 

雅の側に座っていた左葉会の平井が、

 

声を荒げながら席から立ち上がる

 

「それはさっきも充分説明しただろうっ!?」

 

「-----遺言書がある、と言う事か...」

 

「-------!」

 

"バッ"

 

あまり、詳しい事はよく分かっていないのか、

 

総司の言葉に、平井は一旦雅の方に顔を向けると、

 

表情を崩した様に総司の方に向き直る

 

「そ、そうだ! 先程の告別式でも言った通り

 

  雅理事には尚佐御大が直々に残した

 

  "遺言書"がある------!

 

  ------そうでしょう!? 雅理事!?」

 

「・・・・」

 

「------雅理事!?」

 

「-------早瀬」

 

「・・・・」

 

"カッ カッ カッ カッ....

 

「お、おい、何だ?」

 

雅が脇にいた部下に一声かけると、

 

声を掛けられた男は部屋から外へと出て行く

 

「------そもそも、遺言書が

 

 あるなしの問題では

 

 ないのではないかしら------?」

 

「------どう言う意味だ」

 

総司が、雅を睨みつける

 

「------仮に、今、この場にいない

 

  他の叶生野の一族に

 

 御代の継承権があるとしても

 

  そもそも、彼らは

 

 この場に姿を見せていない------」

 

「-----だから何だ?」

 

「・・・・」

 

「-------!」

 

先程まで、穏やかな表情をしていた雅の顔が

 

一瞬だけ、変わったように見えた

 

「-----もし、仮に、私以外の誰かに

 

  御代の継承権があるとしても、

 

  その権利を持つ者が、何の正当な理由もなく

 

  前代の御代-----ましてや、尤光副会長や

 

  善波審議委員長にとっては、

 

 実の父親に当たる人物------、」

 

「・・・・」

 

「その、実の父親が亡くなった事に

 

  この場に姿を見せるも無い-----」

 

「・・・・」

 

「果たして、その様な人物に

 

  "御代"を継ぐ様な権利が

 

 あると言えるのでしょうか------」

 

「だ、だから、それはお前が------」

 

「ガチャ」

 

「------早瀬」

 

「雅さま」

 

総司が、雅に向かって何かを喋ろうとすると

 

再び雅の部下の男が、

 

何か紙の様な物を持って部屋の外から

 

雅の元に向かって近付いて行く

 

"ガサ"

 

「------下がりなさい」

 

「はい」

 

部下から紙の様な物を受け取ると

 

雅はそれを開きながら、総司を見る

 

「-------そもそも、御代として

 

  この場に姿を見せていない時点で

 

  その資質があるかどうかも

 

 疑わしい-----」

 

"ガサッ"

 

「・・・・」

 

手にしていた書簡を雅が開く

 

「そして、アナタ、安永理事。」

 

「何だ」

 

「あなたが言っている、

 

  御代の権利はこの叶生野の執事

 

  近藤が私たちに示したもの------」

 

「・・・・」

 

雅が、手にしていた紙を

 

この場にいる全員に見える様に壇上で広げる

 

「ただ、その近藤すらも

 

 この場にはいません------!」

 

「------だからどうした」

 

「・・・・」

 

"カッ カッ カッ カッ....

 

雅は壇上から降りると、

 

円卓に座っている理事たちに語り掛けるように

 

その後ろを歩いて行く

 

「告別式にすらその顔を出さず------」

 

「・・・確かにそうかも知れない」

 

共生ホールディングスの篠井が

 

自分の後ろを歩いている雅の言葉に同調する

 

「そして、そちらにいる、征次さん-----、

 

 と仰ったかしら?」

 

「・・・・」

 

"カッ カッ カッ カッ-------

 

「その、叶生野の一族の中でも、

 

  得体の知れない、素性も

 

 定かではない人物の話しか、

 

  安永理事の話を

 

 保証する物が無い------...」

 

「・・・・」

 

「そして-------!」

 

"カッ....!

 

雅の足が、総司の前で止まる

 

「それで、この、尚佐お祖父様が書いた

 

  "遺言書"を上回る、

 

  御代の継承権たる正当な理由が

 

 お有りになるのかしら-------っ?」

 

"ガサッ"

 

「そ、それは------!」

 

「これは、鴇与の村で見つけた、

 

  御代、尚佐が書いた、

 

 本人の直筆の遺言書...」

 

「------本人が、書いたのか?」

 

"バサッ"

 

「・・・・!」

 

雅が、立っている総司の前のテーブルに

 

自分が手にしていた紙を捨てる様に放る

 

「この場にもいない------、」

 

"カッ カッ カッ カッ....

 

再び、雅は、総司の元から、

 

壇上に向かって歩いて行く

 

「そして、その、御代の権利ですら、

 

  あるかどうかも分からない------、」

 

"カッ カッ カッ カッ....

 

「そして、この遺言書に書かれている通り

 

  次の御代は、この、"私"-------!」

 

「・・・・!」

 

"ダンッ!"

 

「それで、あなたの仰る

 

  御代の権利が、征四郎に

 

 あると思いますか------?」

 

「------....」

 

「そうでしょう------」

 

雅が壇の上から、遠目にいる総司を見る

 

「何の権利も無い、

 

 そしてこの場に姿も見せない...

 

  それで、あなたは何故、その、征四郎と言う

 

  得体の知れない人物を次の御代に

 

 推すと仰っているのかしら------?」

 

「・・・っ」