「血の家」 七十八雫
「(....フフフフフ)」
「【それでは、皆さま、
焼香の儀が終わりましたので
少し休憩を挟み、最後に
喪主である、叶生野家次女、
羽賀野 雅からの
ご挨拶があります-----】」
叶生野荘にある、叶生野の一族の
葬儀が行われる斎場。
「(まさか、こうも上手く姉さんたちが
私の考え通りに
行動してくれるなんて------!)」
告別式の会場である、
広いセレモニーホールの脇にある
小部屋の中で、叶生野家の次女、
羽賀野 雅は目の前にある
鏡台に映し出された自分の姿を見ながら
冷え切った笑みを浮かべる-------
「(どうやら、橋の手前で、
あいつら全員を
捕らえたみたいね-----)」
「・・・」
雅は、部下の携帯から来た連絡を聞いて
確信する
「(尤光姉さんたちは、どうやら、
かなり酷い怪我を負って
この場には来れない様だし...)」
「・・・・」
雅は自分の目の前にある、鏡に映し出された
自分の上半身を覗き見る
「------アハハハハッ!?」
「み、雅様------!?」
「-----下がりなさい」
「は、ハッ-------、」
「(・・・・
これで、次の、
"御代"は、
"私"
のもの--------っ!!)」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「それでは、これにて、叶生野グループ総帥、
御代である叶生野 尚佐の告別式の
閉会を宣言致します-------、」
「・・・・」
雅が、壇上に置かれたマイクを置くと、
会場に集まった叶生野グループの傘下の人間が、
口々に小声で騒ぎ出す-------、
「雅理事が、今回の
告別式の喪主だとは...」
「何でも、尤光副会長は
次の御代が雅理事になる事を聞いて
この告別式の会場に
姿を現さなかったらしいぞ...」
叶生野の一族を代表する人間が
この場に雅しかいないのを見て、
集まった告別式の参加者たちが
騒然とした様子で何かを喋っている
「------総司。」
「・・・禎三。」
隣り合わせに座っている、安永閥の次期当主、
安永 総司を、藤道會の総帥の子である
藤道 禎三が壇上の雅に目をやりながら見る
「どうやら、雅の話だと
尤光たちは、御代の座を諦めて
今回の告別式に出席しなかった様だが...」
「・・・・」
「・・・総司?」
「・・・・」
総司は何かを含みを持った表情を浮かべ、
壇上にいる雅を一点に見つめている
「-----征四郎くん達も、
何か、同じ様な理由で今回の告別式に
参加しなかった様だが....」
「------そんな事はあり得る筈が無い」
「だが、そうなると、次の御代は-----」
"ピーーーーーーッ!"
「"!"」
突然、ホールのどこからか、機械音が聞こえてくる
「告別式は、これで終了ですが、
この後に、叶生野グループ、
理事総会の各理事の方たちには
この私、羽賀野 雅が当座の暫定の御代として
次の、叶生野グループの長-----、
"御代"を定めるための、
理事会の招集を行います-----、」
「そ、総司-----?」
「-------面白いじゃないか...」