「血の家」 七十一雫
「-----携帯は?」
「ああ、どうやら、雅が俺たちの車から
持ってったみたいだな...」
「お前らは、携帯は持ってないのか?」
明人が、固まって座っている
善波、ジャン、征四郎に目を向ける
「ああ、雅は俺たちの携帯も
色々理由を付けて持ってったからな...」
「-----間抜けな話だ」
"ドスッ"
明人は、座ったままの姿勢で
自分の背中を壁に付ける
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
部屋の中が沈黙に包まれる
「(・・・・・)」
征四郎が、少し離れた場所で
壁にもたれかかり、何をする訳でも無く
ただ、佇んでいる明人に目を向ける
「(・・・・)」
とりあえず、雅の罠にかかり、
今は同じ部屋にいるが....
「-------チッ」
明人は片膝を付きながら
地面に転がっていた小石か何かを
部屋の中に放り投げる
"カランッ"
「(・・・・)」
どこか行く宛てがある訳でも無く
とりあえず、征四郎たちはこの
鳰部の館へと戻ってきたが、
今、目の前にいる明人、尤光、正之は
先程まで自分をこの館で
罠に掛けようとしていた相手だ。
「・・・・・」
尤光たちは何も喋らず、
征四郎も、尤光たちと話す事はない
「・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」