「血の家」 七十雫
「結局、俺らは、あとどれくらい
この場所にいるんだ-----?」
雅に罠に掛けられ、中州に取り残された
征四郎たちは、ある程度冷静さを取り戻したのか
鳰部の館まで引き返していた...
「-----さあな、分からん」
「ちょっと、平気なの?」
明人が、自分の前にハンカチを差し出して来た
尤光の手を払いながら、善波の言葉に答える
「雅は、俺達をここに
置き去りにしていった様だが...」
暗い、一つの窓から
薄い光だけが差してくる館の一室で
善波が周りにいる
征四郎、明人、正之、尤光、ジャンに目をやる
「ミヤビは、ワタシたちココに
トジコメテ、どうするノ-----?」
「・・・分からんな」
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「一体、いつまでここにいるって言うんだっ!?」
すでに、雅がこの鳰部の集落から
去って半日余りが過ぎたが...
「-----まさか、このまま
ここで飢え死にするって事じゃないよな?」
「------それは無い」
「征四郎....」
動揺した様な素振りを見せている正之に向かって、
宥(なだ)める様な口調で
征四郎が正之に喋りかける
「いくら、雅が御代になろうとしてるとは言っても
それで、俺達全員を殺すと言う事は
あり得ないんじゃないか?」
「-----何でそんな事が言える」
「他の、この叶生野荘に集まっている
人間たちの目もある。
そこで雅が俺達全員を殺すなんて事をしたら
雅だってタダじゃすまないだろう。」
「....」
征四郎の言葉に、正之は
安堵(あんど)した様な表情を浮かべる
「-----しかし...じゃあ、雅は
何だって俺達を
この館に閉じ込めたんだ...?」
「・・・・」
善波が問いかけてくるが、
征四郎にもその答えは分からない
「俺達をここで足止めしたところで
遅かれ早かれ、早晩、
俺たちがいなくなった事は
叶生野荘の連中に知られてしまうだろう?」
「そうだな・・・」
「だったら、俺達をここで足止めしても
何の意味もないんじゃないか?
俺達をここで殺さない限り、
どの道、しばらくすれば叶生野荘の連中が
ここに来る事になるだろう?」
「(・・・・)」