おめぇ握り寿司が食いてえ

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「血の家」 六十四雫

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「ここが、"征佐"がいる、

 

  叶生野の家-------、」

 

「・・・・」

 

橋を越えた辺りで車を止め、少し歩くと

 

征四郎たちの目の前に

 

古い、朽ちた、"館"が現れる

 

「ワオ....」

 

「ここに、征佐がいるって事-----?」

 

「そう------」

 

「そう言えば尤光たちがいる

 

  鷸原の集落もここの

 

 すぐ側なんだよな-----?」

 

館の前にいる雅に征四郎が問いかける

 

「ええ-----、

 

  鷸原とこの鳰部の集落は隣同士の集落で

 

  距離的にはほとんど無いわ」

 

「この辺りは二瀬川に囲まれて

 

  ほとんど、土地が無いからな...」

 

善波が、蔦に覆われた館を仰ぎ見る

 

「征四郎くん------」

 

「・・・・」

 

「とりあえず、尤光たちがここに来る前に

 

  さっさと征佐に会った方がいいな...」

 

「あいつらがいる、鷸原には

 

  人はいるのか?」

 

「まあ、多少は人もいるとは思うが...

 

  俺もこの辺りの事はよく分からんが

 

  この様子からすると、

 

  鷸原の方にもあまり人は

 

  住んでいないのかもな」

 

「・・・・」

 

先程橋の前で偶然出会った尤光たちは

 

今、自分達がここにいる事に

 

左程関心を払っていなかった様だ

 

「・・・・」

 

そして今、自分達はいとも容易(たやす)く

 

尤光たちより先にこの征佐がいる

 

館へと辿り着いた...

 

「・・・・」

 

"ピッ"

 

「どうしたんだ・・・?」

 

「いや、」

 

征四郎は、手にしていた携帯を

 

上着のポケットに入れる

 

「あいつら、鷸原に征佐がいないと知ったら

 

  こっちに来るんじゃないか?」

 

「・・・・」

 

鷸原の方から尤光たちがこちらに向かってくれば

 

何か、騒動の様な事になるのは目に見えている

 

「(・・・・)」

 

何か、場にそぐわない様な様子を感じながら

 

征四郎は、目の前の館を仰ぎ見る

 

「(鳰部.....)」

 

「ソレじゃ、ナカ、はいろうヨ------、」

 

「ガチャ」

 

「------待て」

 

「-----ナニ? セイシロウ-----?」

 

館の扉に手を掛けていたジャンを

 

征四郎が呼び止める

 

「・・・何があるか分からない、

 

  気を付けて進んだ方がいい」

 

「・・・・」

 

「ガチャ」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「・・・・」

 

「だいぶ、クラいネ------、」

 

「明かりとか無いの?」

 

"コッ コッ コッ コッ....

 

入り口の扉を開け、館の中へと足を進ませるが

 

館の中は明かり一つなく

 

人がいる様な気配が無い

 

「・・・ズイブン、ひろいネ------」

 

「まあ、御代の息子って言うくらいだから

 

  住んでるところもかなり広いんじゃない?」

 

「(・・・・)」

 

"コッ コッ コッ コッ....

 

「(あの女------、)」

 

"雅"

 

「(あの紙には・・・)」

 

征四郎は、先を歩くジャン、

 

そしてルーシーの後ろに付いて歩いている

 

雅に目を向ける

 

「(さっき近藤から受け取った封筒に入った紙には

 

   "雅 尤光"------、

 

  そして、鳰部とだけ書かれていた....)」

 

近藤から渡された手紙、

 

そして、尤光や雅-------

 

「(--------....)」

 

「ミヤビ、セイスケ、どこにイルか

 

  ワカラナイの-----?」

 

「さあ、私にも少し-------」

 

「(・・・・)」

 

前を歩く雅を見て征四郎の頭に

 

"サングラスの男"

 

の姿が浮かんでくる

 

「(あの男------、)」

 

行く先々に現れては

 

まるで、自分達の行動を手助けをする様に

 

何か、言葉を残していく男。

 

「(さっき手渡された紙もおそらくあの男が

 

  俺たちに置いてったものだ...

 

   今までの奴の行動から考えれば

 

   このサングラスの男は、どう考えても俺達を

 

   "何か"に誘導している------、)」

 

"ガサ"

 

「・・・・」

 

"雅 尤光"

 

征四郎は紙の中に書かれた

 

二人の名前に目を向ける